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■東京BOREDOM#9 〜THE ROLLING BOREDOM〜(2012年11月10日)@新宿LOFT

 バンドマン達の手によってDIYな形で不定期ながらも開催されてるイベントである東京Boredom。今回で実に9回目の開催となり、着実に歴史を刻んでいるイベントであるが、今回のBoredomは初期のオールナイト形式のイベントに回帰し、そして単なる回帰では無く、フードやショップの出展や、まさかのポールダンサーの参加という「エロスとアートの融合」という一つのテーマを掲げたイベントになっていた。かなりごちゃまぜ状態のイベントであるが、メインのライブの方も勿論ガチであるし、合計16バンドが約7時間でノンストップでライブをするという滅茶苦茶なタイムスケジュールも相変わらず。僕は前回に引き続き今回も足を運ばせてもらったが、イベント前に飲みに行って、思いのほかに体力を削られていたり、個人的に絶対に体力的に限界を迎えるオールでのイベントというのもあって、途中休憩を挟んだり、後ろの方で見たりしてても、眠気等で集中して見れなかったアクトもあり(演者の方には非常に申し訳なく思います)、今回はしっかり見れたバンドのレポを書かせて頂く形にさせて頂きます。またバンド数が非常に多いので、いつものレポに比べたら少し簡潔に書かせて頂く事も先に断っておきます。



・the mornings

 という訳で一発目はオルタナティブ・ポストパンクの遺伝子の突然変異であるthe morningsからスタート。ポストパンクをぐちゃぐちゃに分解しながらも非常にキャッチーでエネルギッシュなアクトは相変わらず、ワタナベ氏は早々にフロアに飛び込んだりというハチャメチャっぷりも相変わらずだが、テクニカルさを持ちながらも、それを難解に聴かせないのに、スッっと耳に入りこませ無い一筋縄のいかなさも流石。狂騒と笑顔のアバンギャルドパンクサウンドはライブではさらにハイボルテージだし、だからこそ、このようなイベントに凄い嵌るバンドでもあるのだ。のっけからモッシュを巻き起こし、そして会場の熱量を最高潮まで高めてくれてた。



・worst taste + specialmagic

 毎回毎回奇天烈ポストパンクサウンドで、Boredomを盛り上げてくれてる彼等だが、今回はspecialmagicというターンテーブル奏者をゲストに迎えてのアクト。躍動感溢れるテクニカルかつズ太いベースラインとダンサブルなドラムが楽曲を引率する彼等のサウンドだが、切れ味鋭いスクラッチと、ノイジーな効果音が加わり、更なる混沌のダンスサウンドへと変貌を遂げていたし、シンプルでありながらも、変則的でぐんにゃりとしたギターフレーズの奇怪さが更に加わってごった煮ポストパンクサウンドが更に制御不能の方向へと飛んでしまっていた。それをこちらもハイテンションで鳴らしてるから妙にガツンとくるし、見事なダンス天国を生み出す起爆剤として彼等は今回も大活躍だった。



・folk shock fuckers

 全く名前を知らない状態で今回ライブを見たが、ステージにいたのはU.G MANのメンバーでもありless than TVの社長の谷口氏とLimited Express(has gone?)のゆかり嬢と武田氏、そして谷口氏は超ざらついたセミアコのディストーションサウンドで弾き語り、歌い始める。このバンドは谷口氏とゆかり嬢の夫婦バンドでもあり、パンキッシュフォークバンドでもあるのだ。しかしフォークバンドにしては幾らなんで歪でパンキッシュであるのだ。ギターは歪みまくってるし、楽曲の核になるのはリズム隊の音で、それが前面に出てるし、しかし谷口氏はしっかりと歌っているしという何とも不思議であるが、妙にしっくりくるフォークバンド。場末の酒場のフォークサウンドとして非常に有効だったし、最後にBoredomに捧げる歌を歌い(何故か客に歌わせてた)、さっきまでの狂騒とは違う妙にほっこりとして空気を作り出してたし、気付いたらそれに飲まれてしまっていた。



・moools

 アクトが始まる前にテキーラサービスがあり、乾杯の音頭から始まったmoolsのアクト。かれこれ15年に渡って活動する超ベテランバンドだが、どこまでも胸を掻き毟る哀愁のギターロックバンドでもあり、普遍性に満ちたロックバンドでもありという、日本の隠れた猛者であるが、どこまでも丁寧でありつつも大胆なアンサンブルが輝き、ピュアなイノセンスを放つ。もう必殺の「分水嶺」のエモーショナルな歌と轟音はライブで聴くと圧巻の物があるし、そんな楽曲で始まりながらも、非常にフォーキーな曲も、ロック色の強い曲も全て自然な流れとして存在させてしまうのは長年戦い続けた猛者だからこそだと思う。しかし一番の盛り上がりはラストの「SMAPのカバーです」と言って演奏された「黒セロリ」だろう。ハードコアライクであり、ハイトーンシャウトで「育った環境が…うるせえ!!」と叫ぶし、曲は全くカバーじゃなかったりするが、何かもう色々と卑怯過ぎるし、これは否応無しにテンションが上がるしか無かった。初めてmooolsをライブで観たが、本当に良いバンドだと思う。



・SLIGHT SLAPPERS

 繰り出されるショートカットチューン、ほぼノンストップでハイテンションで暴れ狂い、ファストかつヴァイオレンスなハードコアで今回初参戦を果たしたスラスラだが、もう彼等に関しては野暮な感想なんて全然いらないとすら僕は思う。とにかくライブ中は常にモッシュ!モッシュ!!モッシュ!!!の嵐だったし、暴れ回る狂騒のハードコアは音源なんか比にならないレベルでヴァイオレンスさを極めていた。何かもう単純に格好良い!!とか凄い!!とかそんな感想で良いとすら思うスラスラに関して言えば。とにかく彼等のライブの凄さは言葉では本当に表せないし、是非とも一度ライブに足を運んでみて欲しい。狂騒と破壊と混沌。それに彼等のライブは全て集約されているから。



・s-explode

 熊谷が生んだ狂気のダンサブルパンクバンドs-explode。ジャンクでありながらダンサブル、とにかく徹底して冷徹なサウンドとアンサンブルはもう見る度に極まって来ているんじゃないかと毎回思う。予測不能のカタルシスの中で冷や汗を流しながら踊る感覚は人間の奥底にあるプリミティブで粗暴な感覚を思い起こさせるし、多くの人を踊り狂わせるだけの力を彼等は持っている。そして緊張感がバーストした瞬間のカタルシスはいつ観ても凄いと思うのだ。



・Z

 激情から誰も追いつけないカタルシスを生み出しているZ。「二回目で最後のロフト、始めます。」といMCもあったが、いよいよ解散へのカウントダウンが始まったZだが、とにかく今のZのライブは凄い。魚頭氏のギターの音の破壊力は存分にパワーアップし、グルーブと分解と混沌が同時に押し寄せてくるサウンドは正に全てを置き去りにするハードコアその物。セットリストは最終作「絶塔」の曲を中心にプレイしていたが、音源よりも更にダイナミックに迫ってくる音の死刑宣告、終盤に演奏された「新今日」収録の「USO村」もスラッシュメタルを独自解釈したリフが更に暴れ回り、抜け出せない奈落へと確実に誘っていた。そしてラストの「蛇鉄」で完全に昇天!!個人的には今回の一番のベストアクトだったと思うし、そして最後の日までZは追いかけて行くつもりだ。



・Limited Express(has gone?)

 ポップでチャーミングでパンクバンドであるリミエキだが、実はライブを観るのは本当に久しぶりだったりもした。しかし久々に観たライブでも彼女達のスタイルは何も変わっていない。男女ツインボーカルで叫びまくり、3ピースのシンプルなサウンドでありながらも、骨太のグルーブでグイグイ引っ張り、それでいた切れまくっているのにポップさとキャッチーさを忘れない音は正に一撃必殺だし、オルタナティブが何なのかというのを誰よりも分かっているからこそ生み出せる音なんだと思う。久々にライブでしたが、本当に無心で楽しめた!!



・BOSSSTON CRUIZING MANIA

 反復と構築を際限無く繰り返し、それをドープなダンスミュージックとして吐き出すボストンのアクトだが、相変わらずというかもう安定してアンサンブルが鉄壁過ぎる。ダブやニューミュージックを分解と構築を繰り返し、変則的過ぎるビートを繰り出しながらも、踊り狂えるダンスミュージック。破壊の先にあるのは酩酊の世界であるというのはボストンのダンスミュージックの核になっているし、だからこそ踊れないのに踊れると言う矛盾を生み出せるのだと思う。



・GROUNDCOVER.

 そしてトリはGROUNDCOVER.のアクト。今回も6人編成でのライブであったが、とにかく巨大なミキサーを操作し、オルタナティブ・パンク・ハードコアをダブの遺伝子で分解し、それを再構築すると思いきや、そんな事はしないで、そのまま放出する混沌のサウンドは前回見た時以上に極まっていたとも思うし、なによりも、その行き先は原始的なトランス的開放と解脱だと僕は思ったし、トリと言う事もあって、今回のイベントで一番の盛り上がりを見せていたが、音楽性で言ったら決して盛り上がりやすい物でも無いとも思う。しかし狂騒のエクスペリメンタルが人間の奥底にある狂気を加速させているからこそ生み出せている物だし、そんな音で狂騒を生み出しているから本当に凄いバンドだと改めて思った。



 と言った感じでイベントの終了は朝の7時前だったし、今回もかなり体力勝負なイベントだったとは思うが、ノンストップで繰り出される各バンドのアクトは本当に濃密であったと思うし、だからこそ一筋縄じゃいかないイベントとして東京Boredomは存在していると僕は思う。かなり駆け足のライブレポになってしまったが、このイベントのごちゃ混ぜの狂騒は足を運んでみたら嫌でも分かると思うし、是非とも次回の開催の際は更に多くの人に足を運んで欲しい限りだ。
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