■Honor Found In Decay/NEUROSIS


Honor Found in DecayHonor Found in Decay
(2012/10/30)
Neurosis

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 このバンドは深淵の奥底から一体何を掴もうとしているのだろうか。最早シーンのオリジネイターであるのは言うまでも無いし、本当に多くのバンドが彼等に影響を受けているし、あのISISですら最初はNEUROSISフォロワーだった。そんな孤高のカリスマにして己の覇道を突き進む彼等の2012年リリースの実に5年振りの10枚目のアルバムが今作だ。「A SUN THAT NEVER SETS」以降のNEUROSISを総括するだけでなく、遂にNEUROSISは「SUN THAT~」に迫るだけの傑作を5年の月日を費やし作り上げた。



 確かに現在の彼等には90年代の頃の様な分かりやすい重さや殺気を極限で鳴らすバンドでは無くなってしまっている。でも「SUN THAT~」以降のエクスペリメンタルさと神秘的な美しさを追及したサウンドはやはり孤高の物であったし、最早完全に蜜月の関係になっているアルビニの録音は安定感があり、00年代以降のNEUROSISのカラーを本当に決定付ける大きな要因にもなった。今作でもそれは揺るがないし、今作で大きく音楽性が変わったかと言えば、それはNOだ。しかし確実に変化はあるし、00年代に追求し続けた自らの音を深化させ続けたからこそ行き着いた先でもある。分かりやすいスラッジ要素こそ今作は多くは無いけど、ポストメタルとかスラッジだとかそう言った枠組を超えたエクスペリメンタルな世界が広がっているし、作品一つで、壮大なストーリーを描く辺りはヘビィロックの芸術性を極めた彼等だからこそだと思う。
 今作の大きな特徴としては、先ずは今までの作品以上に民族楽器やキーボードといった音の比重が大きくなっている。勿論、徹底して重苦しく生々しいダウンテンポの引き摺るビートだって、重さと美しさを極めたギターフレーズだって健在だし、磨きがかかっている。何より第1曲「We All Rage In Gold」にて驚いたのはこれまで以上に歌っているのだ。管楽器の雄弁な調べも加わり、どこまでも大きなうねりを生み出している。殺気とかそういった要素は薄いし、そこに物足りなさを感じる人は多いとも思う。でも重苦しいサウンドから少しずつ精神は開放され、広大な大地にて地平線の最果てに浮かぶ夕日を観ている気分にすらなってしまうし、誤解を恐れずに言えばネガティブな感情も持ちながらも一種のポジティブな精神の開放だ。第2曲「At The Well」ではトライヴァルなドラムとスラッジでありながらも、緩やかに波打つギターリフが非常に印象に残るし、それらの音を機軸に幾重の音が重なり合い、最後には高揚感と共に激情を放つ。より雄大になり、地球という大地の終わりの無い躍動を厳かに描く様な第3曲「My Heart For Deliverance」もそうだが、長尺の大作志向の楽曲の中で明確なストーリーが存在し、それを聴き手にそれぞれ想起させて、世界と一つになったあらゆる感情の受け入れるサウンドだと思うし、それは自らの芸術性を徹底的に突き詰めた結果だと思う。
 パーカッシブかつトライヴァルなビートと極限のエクスペリメンタルさを見せるギターが破滅的な空気を生み出し、ある種のトランス感覚すら覚える第4曲「Bleeding The Pigs」、今作で最もダークな深淵を感じさせる最終曲「Raise The Dawn」は彼等の持っているダークさが輝く楽曲ではあるけど、それでも熾烈というより、その深淵の先に何があるのかを手探りで漂いながら捜し求めている様でもあり、救いがある。そして今作を聴き終えた時に、一つの壮大な物語は終わり、自らの五感が静かに覚醒させられていたのに気付くと思う。



 かつての破滅的熾烈さは無いかもしれないし、アルビニも彼等のそういった要素を生かす録音よりも、神秘性や芸術性を生かす録音を施している。はっきり言ってしまえば派手な作品では無いし、こう一発でガツンと来るタイプの作品でもない(ライブでは全然違う感じになってそうだけど)。でもこれまでのNEUROSISの作品がそうであった様に、今作も何度も何度も聴き返してこそ意味がある作品だと思うし、じっと彼等の音と対峙してこそ意味がある作品だし、だからこそ僕は今作を何度も聴き返す。そして聴く程にその凄みを知る事になるのだ。



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