■割礼ワンマンライブ(2012年12月22日)@吉祥寺MANDA-LA2

 来年で遂に結成30年を迎え、そして現在こそがバンドの絶頂期である日本のサイケデリックロックの重鎮である割礼。非常にマイペースな活動を長年に渡って続けている彼等の今年を総括するワンマンライブに足を運んだ。会場の着くと既に多くのお客で賑わっており(やっぱり年齢層は高めだったなあ)、これから目の前で繰り広げられる甘く重い陶酔のロックに対する期待で胸が膨らんでしまう。座って観るタイプのライブは実に4年振り位だが(その時も同じ場所で割礼のワンマンだった)、普段と違う期待が込み上げたのは、いつもと違う空気のハコだからかもしれないけど、やはり僕の中で特別なバンドである割礼のライブだからだ。



 約15分程押して、客電が落ち、ステージでセッティングをしていたメンバーが楽器を構える。始まった。2012年の割礼を総括するライブの1曲目は彼等の代表曲であり、屈指の名曲である「リボンの騎士(B song judge)」から、鐘の音の様な印象的なギターのストロークが響く瞬間に完全に空気が変わり、徹底的にスロウなビートと音色、そしてメロディアスで甘く、精神的な閉塞感を感じさせ、緩やかに歪むギターの音色と宍戸氏のねっとりとした歌。そして日本のギターが徹底的に遅くするという形で分解されたフレーズが絡み合う。甘くロマンティックなロックを徹底的に遅くする事で独自の磁場を生み出す割礼のサイケデリックさはライブでは更に際立ち、本当に時間軸の感覚が歪み、地の底で震えがる感覚が想起させられる。そして終盤の超スロウで超ロングな宍戸氏と山際氏のギターそれで、その陶酔の世界は更に広がる。揺らぎと歪みを極めたギターの音色が、じわじわと侵食し、ただ淡々と同じラインを弾く鎌田氏のベースと、繊細さと同時にタイトさと屈強さと躍動を感情的に叩き付ける松橋氏のドラムがアンサンブルとして、この上無い以上に完璧であるし、この15分以上に及ぶ大作を1曲目に持って来て、完全に割礼にサイケデリックロックの真髄を見せ付けられてしまったし、曲が終わった瞬間に意識が完全に飲み込まれていた事をやっと実感した。
 そして宍戸氏の紹介のMCで今回のライブのゲストである工藤冬里氏が登場し、工藤氏を迎えての5人編成で迎える2曲目は「散歩」、工藤氏のインプロ的な感覚で弾かれるピアノが割礼の楽曲に更なる不穏さを加え、ある種の危うさを加えた「散歩」は全く別の楽曲になりながらも、変則的なピアノと、歪んだギターと、屈強なビートと、宍戸氏のロマンティックさが、残酷過ぎるレベルで静かに押し寄せる。静謐に重苦しい「INスト」で更に感覚の歪みと五感の歪みを更に加速させる、ドープな閉塞感にやられそうになり、「マリブ」で、割礼屈指に甘ったるさとメロウさが暴発し、過去の楽曲も全く別の物としてアップグレートし、現在の編成になったから生まれた楽曲も、割礼の真髄である甘さが更に極まっているし、本当に割礼は現在こそが最高の状態のバンドである事を改めて痛感させられる。そしてグルーブだ、メロディアスさと宍戸氏の歌だけでなく、スロウさの中で密かな狂気と鋭利さをむき出しにし、独自の磁場をあくまでもロックを徹底的にスロウにするという手法で生み出す、そして割礼にしか生み出せないグルーブを生み出す。その中で割礼に中でも比較的にBPMの速い「ラブ?」でもそのグルーブは健在だし、それに加えて松橋氏のドラムと、工藤氏のアップテンポなピアノのフレーズ性急さを生み出し、それまでプレイした楽曲と落差を生み出すだけでなく、純粋にロックバンドとして本当に極まっている割礼を目の当たりにした。「のれないR&R」で再び自らのスロウさを見せ、そこから繰り出されたのは割礼の屈指の名曲である「君の写真」。ラブソングとしての割礼の狂気が冒頭のギターぼフレーズから剥き出しになり、シンプルな言葉で歌っているのに、屈指の重苦しさと悲しみが咲き乱れ、コールタールの中にズブズブ沈んで堕ちていく感覚にただ身を任せてしまいたくなる。
 そしてドラムの松橋氏がドラムセットから立ち上がり割礼のライブでは恒例の松橋コーナーへ、マイクを全く使用せず、「今年も物販頑張って来ました!!」から始まり、そして物販の紹介だけで巻き起こる爆笑、工藤氏のピアノがやたら哀愁を誘い、さっきまでの重い酩酊の空気を良い感じで揺るませ、最後に曲紹介で締めて、「ゲーペーウー」へ。再びロックバンドとしての割礼を見せつけ、シンプルなビートと、オーソドックスなコード進行の横ノリのグルーズから生まれる揺らぎと歪みも改めて最初期の割礼の武器だったと実感。そしてそれを現在進行形でグルーブを進化させている事に驚く。そして本編ラストは「アラシ」と、「ルシアル」という2曲で、過去の楽曲と繋がる割礼にしかない揺らぎと甘さを見せ付ける。ラストの「ルシアル」は本当に最後の曲に相応しいロマンの暴発であり、最後の歪み揺らぐギターソロで完全に昇天させられてしまった。
 観客からのアンコールの拍手に応えてアンコールへ、宍戸氏が座ってギターを弾き、工藤氏の楽曲である「Manson Girls」をプレイ。アシッドな感覚と工藤氏の妙に引き摺った歌が印象的であると同時に、割礼のメンバーによる演奏がまた新たなざらつきを生み出す。そして最後の最後に演奏された「溺れっぱなし」は間違いなく今回のライブのハイライトだった。音源とは完全に違う楽曲になり、ロングバージョンとして約20分近くの壮大さを手に入れただけでなく、サイケデリックな陶酔を極め、ギターソロも長くなり、最後は全ての音が救いの無さと共にカタルシスを生み出し全てを漆黒のサイケデリックさで飲み込んだ。こうして約2時間全12曲に及ぶ割礼のワンマンライブは終了。ライブが終わって暫くは、その余韻が頭に残りっぱなしになっていた。



セットリスト

1.リボンの騎士(B song judge)
2.散歩
3.INスト
4.マリブ
5.ラブ?
6.のれないR&R
7.君の写真
8.ゲーペーウー
9.アラシ
10ルシアル

en1.Manson Girls(工藤冬里氏の楽曲)
en2.溺れっぱなし



 楽曲がプレイし終わる度に本当に惜しみない拍手が巻き起こっていたのも印象的だったし、重苦しい世界の中で、それこそ溺れっぱなしで良いやって感覚にすらしてしまう割礼の音楽は本当に唯一無二であり、人間の精神の内側へと向かうロックとして本当に最高峰に存在している。そしてそのグルーブや陶酔や揺らぎや歪みやロマンが全て深化するライブの凄みは本当に圧巻の一言だし、それは割礼だから生み出せたサイケデリックロックなのだと思う。バンドは来年で結成30年だが、恐らくは来年もマイペースに活動を続けていくと思うし、割礼は伝説のロックバンドでは無く、今が最も凄いバンドとしてその楽曲の様にスロウではありながらも、確かな歪みを残し続けるのだ。
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