■kataka/swaraga
![]() | Kataka(カタカ) (2012/08/29) swaraga(スワラーガ) 商品詳細を見る |
ちゃんとリアルタイムで聴けていたら2012年の年間ベスト上位に間違いなく入れていたのに!!って言いたくなる名盤。長年に渡って日本の地下シーンで活動する川上啓之氏が在籍するswaraga(スワラーガ)の2012年リリースの1stアルバムだが、これが80年代の日本のニューウェイブだとかSSEとかトランスレコード辺りの時代の空気を完全に継承しながらも、それを懐古的な音ではなく、2010年代のハイブリットな日本人らしい感覚と雑多さで一つのロックとしてどこまでも素晴らしい作品を作り上げたのだ。
このバンドは80年代の古き良き混沌の時代の空気と共に生きた川上氏が在籍しているからこそ、あの時代の空気を非常に強く感じる音楽性だが、でもそうゆう説明をすると80年代懐古型のバンドだと思われてしまいそうだが、それは全く違う。あの時代から一つの道を確かに作り上げ、何処をどう聴いても現代的な音に仕上げているのだ。ポストロックやマスロックやギターポップやオルタナティブロックと今作に内包されてる音楽性は本当に雑多だが、それを単純に素晴らしいロックとして鳴らしている。松本玲子嬢のボーカルはゴスな感覚とか独自のノーウェイブ感を持ちながらもやたらポップな耳障りと妙な毒素を持っているし、川上氏の変幻自在のギターワークが本当に良い。コーラスやフランジャーといった類のエフェクターを多用している辺りは80年代ポジパンの流れなんだろうけど、そのギターワークは現在に至るまで様々なバンドで活動して磨き上げたセンスで現代性の中に独自の捩れをを持たせていると思う。第1曲「猩猩緋」はニューウェイブとポジパンを融和させ、多用されるキメが曲に不穏さを与え、インド音楽辺りを想起させる音階とボーカルもあったりと、一発目から本当に雑多で混沌とした要素を持っているが、それが妙にポップなメロディだったり松本嬢のボーカルだったりと、本当に中毒性に満ちた今作の必殺の1曲になっている。作品全体を通してそれぞれの楽曲の完成度は本当に高いし、それぞれの楽曲に本当に個性豊かな要素がある。第2曲「レクイエム」なんて完全にポジパンになっているし、第4曲「アウルクリーク」はプログレッシブなギターワークとパンキッシュさが絶妙に絡み合いつつも、変則的なキメに脱臼必至だし、第5曲「例えばダーガーのこと」はドリーミーさと切れ味の良いカッティングを繰り出すギターワークが光り、第6曲「D」はジャンクなニューウェイブパンク、そして最終曲「cluster」は今作で一番プログレッシブなギターワークが
炸裂しながらも、それを冗長にはしないで、あくまでもパンキッシュさとオルタナティブロックのざらつきを通して鳴らすからこそ、それを直接的な躍動と快楽をもたらしてくれる。
本当に雑多な要素を持ったアルバムだとは思うけど作品を通して聴いて思うのは本当に単純に素晴らしいオルタナティブロックの一つとしてswaragaは存在しているっていう事だと思う。80年代と2010年代の間に存在する空白を繋ぎ、独自のオルタナティブさで鳴らしているからこそ、本当にロックとして面白いバンドだと思う。個人的には相対性理論レベルの人気と評価を得てもおかしくないバンドだとすら思うし、是非チェックして欲しい。