■NoLA presents "抄"(2013年1月26日)@東高円寺二万電圧

若手にして現在、各地でその邪悪かつ異世界の激重エクストリームサウンドを放出している若武者であるNoLAの自主企画。2012年は初音源のリリースと精力的なライブ活動でその名を広めたが、そんなNoLAは2013年も止まる事無くその悪意を拡散する。そんな新年早々の自主企画はFIREBIRDGASS、bilo'u、ZENANDS GOTS、そして大阪からKnelltという凄まじい面子が勢揃い。残念ながらIMMORTAL SENSEはキャンセルになってしまったけど、それでも十分過ぎる位に悪夢の夜が訪れるのは確定的だし、そしていざ足を運んだら想像以上の悪夢の宴となったのだ。
・ZENANDS GOTS
一発目はNoLAと共に殺り合っている2ピースエクストリームバンドであるZENANDS GOTS。ドラムとギターボーカルという本当に最小限の編成でありながらも、あらゆるエクストリームミュージックを喰らい、それをショートカットカオティックチューンとして放出する彼等だが、今回のアクトも凄かった。凄まじい音圧で静謐さも暴虐さも光速で放出し、ブラストビートを怒涛の勢いで叩き出すドラムと、ドゥームもハードコアもポストロックももうなんでもかんでも喰い尽くして放出するギター、そして悪意に満ちた叫びをブルータルに放出するボーカルが魅せるのは音の臨死体験とも言うべきエクストリームさ。ほぼノンストップで繰り出される音の事故現場が目の前に広がり、気を抜いたら轢き殺される恐怖をこの2人は音で魅せるのだ。相変わらずの凄まじい殺気と音圧に一発目から殺されそうになってしまった!!
・bilo'u
お次はプログレッシブハードコア5人衆であるbilo'uのアクト。彼等の音に触れるのは初めてだったが、Meshuggah直系のプログレッシブなポリリズム、7弦ギター2本と5弦ベースのヘビィなサウンド。ブルータルさとカオティックさが正面衝突した変態性と極悪さが充満し、それを正確無比な演奏技術で弾き倒す、徹底してブルータルさを押し出し、嵐の様な複雑なリフと展開の変化が休む間を与えずに殴りにかかってくる。とにかく安定感が凄まじいし、徹底的にドスの効いた音塊を放り投げ続けてきた。音楽性は正統派のテクニカルデスではあるけれども、しっかりブルータルさと重みを感じさせ、バンドとしてのポテンシャルの高さをそのライブでもしっかりと発揮してくれた。初見だったがこれは良いバンドだ!!
・Knellt
そして大阪からの刺客Knelltのアクトへ。昨年のCyberneとDEADとのスプリットでその存在を知り打ちのめされていたが、メンバーの脱退によりギターボーカルとドラムの2ピースに。そして今回のアクトはほぼ新曲でのセットだったが、それがもう凄かった!!これまでの作り込まれた楽曲と打って変わって、極限まで削ぎ落とされながらも、その重さと破壊力で押しつぶすスラッジの煉獄。よりリフの重みと破壊力に重点をおいたからこそ、その一発一発の音で本当に人を殺せるだけの猛威を見せ、それでいて、その重さの中で旋律も感じさせる芸術性も発揮。引き摺る残響やドラムの音と音の合間の空白すら不穏さを感じさせ、それすらも自らの表現にしてしまっている!!メンバー脱退というピンチすら乗り越え、それを新たな進化へと繋げ、より殺気と音圧で悪夢としてのドゥーム・スラッジを発揮していたKnellt。より原始的な殺気が確実に二万を覆い尽くしていたし、何よりも殺意も悲しみも見事に表現するボーカルと、悪意のスラッジリフから感じる破滅の美しさが、Knelltの音を異次元の物にしていた。圧倒的音圧で放出される悲しき悪夢、それがKnelltだ!!
・FIREBIRDGASS
トリ前は高円寺を拠点に活動するパンクバンドFIREBIRDGASSのアクト。今回のライブはベースの方がインフルエンザで倒れてしまい、急遽代打でベースを迎えてのアクトだった為、5曲で20分未満という決して長いアクトでは無かったが、それでも、いやそれだからこそ全力で限界突破するパンクサウンドが暴発していた。Knelltが生み出した邪悪な空気を一変させるメッセージ性の強く、本当にシンプルで正統派なハードコアパンクは、シンプルだからこそ全力限界突破のテンションで暴走し、キャッチーでもあり、しっかりシンガロングするパートもありつつ、短距離全力暴走型サウンドの凄みを体感。ボーカルの人が「盛り上げってこうぜ!!土曜の夜だからよー!!」というMCで盛り上げ、二万は一気にパーティ会場へ。それでも真摯に自分自身へと問いかける様なメッセージを放ち、正に自分自身の限界を超えようとする全身全霊のアクトの凄みは圧巻だった。最後はボーカルの人とギターの人がフロアへと飛び出し、一気に混沌へと雪崩れ込み大盛り上がり!!NoLAの出番を前に貫禄のハードコアパンクを見せてくれたし、最高に格好良かった!!
・NoLA
そしてトリのNoLAへ。彼等のライブは若手らしさなんか微塵も無い貫禄と神々しさ、そして圧倒的な音圧と重みと速さと遅さというエクストリームな臨死体験だが、本当に少し観ない間に更にとんでもないバンドになってしまっていたのだ!!1曲目「橙」から一気に不穏な旋律と読経ボーカルで、不穏を生み出し、待ち構える惨劇の予告。そしてディストーションの激重ドゥームリフと静謐に刻まれていたドラムが重みと破壊力を加え、そしてタケル氏の狂気値が沸点を超えた極悪な叫びが響く瞬間に一気に悪夢と惨劇が生まれ、おぞましさに身を震え上がらせるしかなくなるのだ。そして続く「Confusion And Liquor」、「Slave」でドゥーミーな空気を一変させてトラッシュな速さで攻めに攻める。しかしそんな楽曲の中でも遅さを取り入れ、メタリックな7弦ギターのリフのブルータルさがとにかく死体殴りの領域に達してしまっている殺人鬼っぷりを発揮。更に新曲はそんなリフの凄みを生かし、シンプルさが際立ちながらも、だからこそプリミティブな破滅の殺人鬼としての狂気が咲き乱れる。タケル氏は今回もフロアへと飛び出し、暴れ回り叫ぶ叫ぶ!!徹底して重くダークな音を放出し続けているからこそ、その悪意と殺意で観る人を狂気で狂わせるNoLAのライブは本当に凄まじいの一言だし、本当にライブを一回でも観るべきバンドだと僕は思う。ラストは10分以上にも及ぶドゥーム絵巻「Mist」で締め。今回のアクトを締めくくるに相応しい奈落の底へと突き落とされる闇が目の前に確かに広がっていたし、本当に魂を砕かれてしまった。NoLAのライブが終わってから暫くの間、僕はステージ前の柵にへたり込んで、ただ笑うしか出来なくなってしまった。ライブを観て、そんな状態に陥るなんて先ず無いんだけど、そうなってしまったよ。それだけNoLAのライブに僕の魂は粉砕されてしまったんだ。



Photo by Kimihiro Kato
益々進化を続けるNoLAという化け物、そして今回出演した猛者達も含めて本当に壮絶な臨死体験を味わった夜になった。音楽の狂気と悪意が生み出す悪夢と非現実が確かにこの日の二万にはあったし、何よりもNoLAが本当におぞましい化け物になっているのを痛感させられてしまった。昨年リリースされた1st音源で彼等を知り、当ブログでインタビューもさせて頂いたが、引き続きNoLAの動向は追いかけ続けていくつもりだ。そして他の4バンドも圧倒的なアクトだったし、そちらも随時追いかけていく。
また今回のライブレポで一緒に足を運んだ友人のKimihiro Kato氏の撮影した写真を使わせて頂きました。本当にありがとうございます!!