■現実と交差する何か/nonrem

吉祥寺を拠点に活動する4人組激情系ハードコアバンドであるnonremの2012年リリースの4曲30分の1st音源。昨年はベルギーのTHE BLACK HEART REBELIONとも殺り合ったりもしたが、彼等は現在新たな盛り上がりを見せる国内激情のシーンの新たなホープであり、直情的な激情とポストロック的美しい情景を描くバンドである、激しくも美しい世界が今作では描かれている。
彼等の魅力は複雑に絡み合う音が生み出す壮大なスケールと美しい旋律が生み出す情景であり、しかし単なるポストロック的激情では終わってないし、あくまでもハードコアである事が核にあるし、直情的な激情を奥行きのあるアンサンブルでスケールを強靭かつ強大にして描く。時に尖り、時に緩やかな流れを生み出し、静謐さと暴発を繰り返し、スケールを強大にしていくドラマティックさ。それがnonremが描く激情だ。第1曲「縋る」から複雑に絡むアルペジオから瞬く間に轟音となり、肉感的なアンサンブルを描きながら、振り落とされる断罪の様なハードコアバンドとしてのアンサンブルには魂が揺さぶられる。空間的な音作りもかなり巧みだし、何よりも本当に美しい旋律を持った名曲だし、轟音系ポストロックの領域に入り込みながらも、決してそっち側には行き過ぎずに、絶妙なバランスにあるのがまた良い。更に第2曲「無呼吸」は10分近くにも及ぶ楽曲で、更にスケールが拡大。ここ最近のEnvyに迫る勢いのポストロック的なアプローチから、暴発する音と叫びが木霊し、時にポストメタル的アプローチまで取り入れ、そこから疾走する感情がハードコアとして響いてくる。時に後半は轟音系ポストロックの領域に突入した轟音パートから、引いていく波の様に、クリアで静かに広がるギターの音色が印象的な柔らかな旋律で締めくくられる。第3曲「不浄の目」では序盤はフルスロットルで暴発し、静謐なパートでドラマティックさを高めて、そこから再びハードコアパートへと雪崩れ込む。そして最終曲「現実と交差する何か」では激情系ハードコアと轟音系ポストロックが正面衝突した序盤からいきなりクライマックスへと連れて行かれる。そしてディレイを駆使しまくったアンビエントな音が世界に断層を作り、そして熱量を高めてまた暴発。ただでさえ壮大でドラマティックな楽曲ばかりが並ぶ今作の中でも特にドラマティックな名曲になっており、ラストはリリカルな轟音がビッグバンを起こす。今作に収録されてる4曲はどれも素晴らしい完成度を誇っているが、特に「無呼吸」と「現実と交差する何か」はnonremの凄さが凝縮された必聴な楽曲になっている。
EnvyやRAEIN辺りに通じながらも、This Will Destroy You辺りにも迫る美轟音の美学も感じさせ、激情系ハードコアとして本当にハイブリットなバンドだと言える。ヨーロッパでもライブ経験があるバンドだし、先日観たライブでも、そのスケールに圧倒された!激情系ハードコア好きは勿論、轟音系ポストロック・ポストメタル辺りが好きなリスナーにも訴える力があるし、国内激情の期待のホープであるのは間違いない。