■鉄の歌を聴け vol.3(2013年4月6日)@新宿ninespices
・Redd Temple
まず一発目は福島のRedd Templeから。一週間前に同じくナインスパイスで彼等のライブを観たけど、今回も安心と安定のスカスカな音から生み出されるニューウェイブ&Dcサウンドによる全てを歪ませるダンサブルかつ緊迫感溢れるショートカットチューンの嵐。大体の楽曲が2分未満でありながら、反復するギターとベースのフレーズが生み出す奇妙な高揚感。本当に最小限の音のみで生み出す歪んだアンサンブルは彼等独自の物だと思うし、今回のライブもショートカットチューンをノンストップで連発。本当に最小限のミニマムさから、全てを削ぎ落とし、その先にある感覚の覚醒と冷徹さを今回のライブでも彼等は生み出していた。
・thread yarn
お次は爆裂爆音3ピースポストハードコアバンドthread yarnのアクト。Redd Templeとは打って変わって、とにかく超爆音で歪みに歪みまくったサウンドで全てを破壊する。まずギターの音が歪みに歪み音の輪郭や音階すら崩壊させながらも、リフ主体で攻めまくる彼等からしたら、それは自らの音の破壊力を更に増幅させる最高の手段であるし、音源以上に突っ走るドライヴィンかつジャンクかつディスコードな楽曲が倍プッシュで押し寄せる。そんな爆音の渦の向こう側から聞こえるのはツインボーカルの絶唱に告ぐ絶唱のエモーショナルさ。特に最後に「Play Dead Seasonに捧げます」とのMCからプレイされた「Wired」はもう絶頂物。threadn yarnの楽曲の中でも特に前のめりなエモーショナルさと哀愁が滲み出るこの楽曲がライブで更に凄まじい爆音で攻め立てる瞬間は本当にこのバンドの恐ろしさと凄さを感じた。観たのは久々だったけど、更に彼等はパワーアップしている!!
・the north end
続いてはthe north endのアクト。今回初めて観るバンドだったが、一気に魅入られるライブだった。音楽性は轟音系ポストロック×エモ的なアプローチをしているバンドで、まずギターの音が本当に良い。ドラマティックに盛り上がる轟音パートでは本当に壮大な轟音を繰り出し、エモ寄りなパートではソリッドなギタープレイを見せ付ける。静謐さとバーストを繰り出しつつも、時にはソリッドなエモーショナルさで、轟音に頼らなくてもドラマティックさを見せ付けていたし、リズム隊もゴリゴリに歪んだベースラインを弾き倒すベースと、躍動感と激情を体現するドラムが生み出すグルーブが圧倒的だったし、ボーカルはスポーキンに日常とか生活とか行った物を言葉にし、楽曲の持つ熱量を更に高めていた。壮大に繰り出される日常生活の中の激情を体現しているバンドであり、予備知識無しで今回観たが本当にぶっ飛ばされた。音源の方も是非聴きたいし、またライブを観たい!!
・TG.Atlas
トリ前は旭川からの刺客であるTG.Atlas。観るのは2008年のdo it以来なんだけれども、「旭川から婚活にやって来ましたTG.Atlas」なんて脱力Mcから始まったけど、このバンドは本当に本質的な意味でオルタナティブなバンドだと再認識させられた。決して難解では無いけど、絶妙に涅槃へと導くオルタナティブサウンド。反復する硬質なギターリフが徐々に意識を溶かし、手数の多いフリーキーなドラムと、ゴリゴリのベースが生み出すジャンクなグルーブと、ツインギターの無慈悲なフレーズの反復が生み出すジャンクかつ混沌のアンサンブルは本当に言葉では簡単に形容出来ない。ギターの人が途中でドラムスティックでギターを弾いたりしていたり、その音楽性もあってSonic Youthが頭によぎったりもしたけど、それを更にジャンクかつディスードにし、アバンギャルドでありつつ、不穏の硬質な音楽にしていた。近々新作アルバムもリリースさせるし、そちらが俄然楽しみになるライブだった!旭川の猛者の貫禄を見せつけてくれたよ。
・PLAY DEAD SEASON
そしてトリは本日の主役であるPDS!!一発目の間違いなく2013年のポストハードコアの金字塔とも言うべき大名盤「JUNKHEAD」のレコ発という事もあって気合も十分!彼等はライブバンドとしても名高いし、そのライブアクトで現場から名を広げた実力派の中の実力派であるけど、一発目の「瞬間と循環」から今日のライブは本当に凄い物になると確信したし、音源でも凄いけどPDSの魅力はライブでこそ発揮される。そのドライブするポストハードコアサウンドがよりダイレクトに伝わるし、やっている事こそ音源と変わりは無いのに、ただ単純にライブだからこその生々しさだったりと火、躍動だったりとか、気迫だったりとか、そういった物が他とは全然違うのだ。正に全身全霊の言葉しか出ないし、メンバーは全員汗だくになってライブをし、そのリフの破壊力も脳を突き刺し、もう自然と拳を突き上げてしまう正に真の漢にのみ許されたバンドにしか生み出せないドキュメントがそこにあった。プレイされた楽曲は「JUNKHEAD」の楽曲だが、どの楽曲も音源より更に凄まじい物だったし、それど怒涛の勢いで繰り出しまくり、一瞬たりとも目を離せない。そして本編ラストで繰り出された「鉄の歌を聴け」は本当にPDSの全てを体現した楽曲だと思うし、哀愁も漢らしさもポストハードコアも全てひっくるめて、このバンドが本当に全てを貫く「鉄の歌」を奏でるバンドである事を証明していた。そしてアンコールで繰り出された「COBRA」で再び着火。モッシュの嵐になり幾多の拳が突き上げられるフロア。こうしてPDSは完全燃焼のアクトを魅せてくれた。
ライブ中のMCでも言っていたが、PDSは今回のツアーが終わってから暫くは地下での製作活動に入り、ライブの本数は減ってしまうらしい。しかし次のアルバムは更に凄い物を作る事を約束してくれたし、今回のツアーはまだまだ始まったばかりだ。彼等は全国でその鉄の歌を響かせてくれるに違いない。今回のレコ発企画は対バンも含めて全てがハイライトと言えるライブだったが、印南氏の赤いSGには間違いなく多くの人々の笑顔と突き上げられる拳が写っていたし、本当に最高の夜だった。