■Godspeed You! Black Emperor(2013年4月10日)@恵比寿LIQUIDROOM

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 奇跡の再結成、2011年に奇跡の来日、そして昨年奇跡の新作のリリースと、カナダが生み出した伝説であるGodspeed You! Black Emperorのが再び日本の地を踏む。今回の来日公演は、2011年の来日の時に「もう日本には来ないだろうな。」と思っていた僕には本当に更なる奇跡であり、心の底から敬愛するGY!BEのライブがまた観れるという喜びに震えていた。今回の来日公演はリキッドルームでの2Daysであり、今回二日目の公演の方に足を運ばせて頂いた。19時頃にリキッドルームに到着し、最初はあまり多くなかった観客も開演直前には、多くの人々が集結し、奇跡が再び目の前で起きる瞬間を今か今かと待ち望んでいた。



 予定の開演時間である19時半の少し前には客電は点いたままだったが、不気味な重低音ドローンなBGMが鳴り始めて只ならぬ空気を生み出す。そんな時間が10分程続いて客電が落ち、奇跡の再来日公演が始まった。、静カニメンバーがステージに登場を始める中、ヴァイオリンの悲哀漂う音色と、アンビエントな残響音が響く。1曲目は「Hope Drone」からだ。今回の公演は前回の来日の時よりもメンバーは少なく、オレンジの薄暗い照明と、映写機の光が映し出すステージを見るに、恐らくは7人程の編成になっていた。だから音圧とかそういった点でのインパクトは前回の来日公演の方があったかもしれない。しかし、例えいつもよりメンバーが少なかったとしても、そこはGY!BEだ。持ち前のシリアスさを極めた壮大かつ複雑極まりない世界は何も揺らいでいないし、この「Hope Drone」で、スクリーンに映写機から映し出される「Hope」という文字の重み、幾重にも重なる楽器の音が不穏に、美しく、そして壮大にスケールを拡張させ、言葉や歌が存在しない、インストのサウンドを究極レベルまで極めた彼等の真骨頂が既に発揮。そしてドローンなサウンドから高まっていく熱量、それは新たな崩壊の瞬間を予言している様な感じであったし、目の前の「HOPE」という文字同様に、本当に重苦しく、観る物の精神にその音は圧し掛かっていた。しかしそんな「Hope Drone」に続く形で繰り出されたのは最新作からGY!BEの楽曲の中でも屈指の高揚感と崩壊のカタルシスを生み出す「Mladic」。ドローンな残響音が続く中で、パーカッシブな不協和音が響き、ツインドラムがGY!BEお得意の躍動感溢れるバーストするビートを叩き出した瞬間に、情景が一気に変わる。しかしまだ溜めに溜める。高揚感を持続させながら、映画的な音像を繰り出し、その暴発の瞬間を予感させつつも、ヴァイオリンはオリエンタルな音を奏で、そして破滅を予告する。そしてツインドラムのビートの手数が増え、本当に幾重にも重なる轟音が一気に明確な形を見せた瞬間に、本当に全神経が覚醒する瞬間と、それに伴う快楽が一気に押し寄せてきた。そこからは本当に圧巻で、全ての音が作り出すのは計算され尽くした混沌であり、スクリーン映像の効果もあって、シリアスさを極めながら、正に崩壊の瞬間を極限まで極めた美意識と精密さとシリアスさで描き出していた。そして「Mladic」が終わった瞬間に起きた盛大すぎる拍手。もうこの前半の2曲だけで意識は完全にGY!BEの生み出す音に蹂躙されてしまった。
 中盤に入り続いて繰り出されたのは「World Police And Friendly Fire」、再びヴァイオリンが幽玄の音色を奏で始め、不穏の旋律と共にドローンでありながらも、単なる音の持続音とはかけ離れた、感情や意思が閉じ込められているからこその音の重みに再び圧し掛かられる、その緊迫感は本当に尋常じゃなく、映写機が映し出す揺らめく炎と共に、目の前の音が静かに燃え上がり始める。ヴァイオリンが機軸となる音を奏でながら、他の楽器も複雑に絡み合っていく美しさも凄かったが、本番はその音が熱量を高めに高めて一気に燃え上がってからだ。轟音が本当に押し寄せるとかそういったレベルじゃ無く、本当に意識の奥の奥にまで入り込んでいくのだ。そして高揚感からバーストするクライマックスの瞬間にあるのは開放じゃなくて、終わりの無い悲劇を目の前にして、ただ打ちひしがれるしかない絶望であり、本当に成す術も無く立ち尽くしている様な感覚になってしまったし、そして加速するビートと音色が、その悲劇を美しく描き、最後は残響音と共に崩壊した。それに続いて未発表の新曲である「Behemoth」。この曲が実に40分以上に及ぶ、ただでさえ20分越えが当たり前なGY!BEの楽曲の中でも特に最長の楽曲であり、前半はこれまで以上の美意識で描かれる、幽玄なる桃源郷を感じさせる美しい旋律が見事なる調和を生み出し、その高揚に酔いしれていたら、長い長いドローンパートに入り、楽園の崩壊を描き、本当に長いドローンパートに意識が酩酊していく中で、再び音は輪郭を取り戻し、そして最後は鉄槌の様に音が降り注ぎ、全てを焼き尽くし、そして奈落へと落ちる瞬間を凄まじい音像で描いていた。40分以上に及びながらも、思っていたより長くは感じ無かったし、もうたった1曲でそこらの映画以上のスケールとメッセージをこのバンドはオーケストラレベルの壮大さで描いてしまっているし、ライブでも全くブレない美意識、感情も破滅も全てその音で描き出し、圧倒的な情報量でありながら、無駄は一切無く、不協和音やドローンパートですら魅せるバンドであり、それらが全てGY!BEを構築する上で必要不可欠な要素なのだ。
 そしてラストは「Slow Riot For New Zero Kanada」から大名曲「BBF3」。SEのオッサンの声が聞こえた瞬間に、今回のライブで一番の緊張感に襲われ、静謐なアンサンブルで描き出すモノクロの情景の美しさ、そしてドラマティックなストーリーが数多く脳内に浮かび上がり、中盤からは本当に数多くのクライマックスが押し寄せてくる。そして終盤では本当に全てを無に還す様な純白の楽器の轟音とヴァイオリンの音色、どこまでも力強く叩きつけられるドラム、そして原曲よりも性急かつシリアスに描かれる終盤のクライマックスのパートは本当にこの世の全ての喜びも憎しみも怒りも悲劇も集められるだけ集めて、そしてそれを燃やし尽くして音にしているかの様だったし、その圧巻のクライマックスが終わった瞬間に全てが天へと上り詰めるのを確かに感じた。そして最後は不穏のドローンサウンドが鳴り止まない拍手の中で響き渡り、メンバーがそれぞれ手を上げて観客に簡単に挨拶をしてステージを立ち去った。MC無しアンコール無し、ほとんど曲間無しの約2時間で全5曲の異次元の交響曲は幕を閉じた。

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セットリスト

1.Hope Drone
2.Mladic
3.World Police And Friendly Fire
4.Behemoth
5.BBF3



 初来日の公演を観た時に比べたら流石にインパクト点は少し弱かったかもしれない。でも目の前で繰り広げられていた音像は更に磨きがかかっていたし、圧倒的な情報量を、極限まで高次元で描き、そしてそれを極限までシリアスに描くバンドが魅せたのは、本当に別次元の世界だったし、二時間が本当にあっという間に終わってしまった。ここまで長々と書いたけど、それでもGY!BEのライブの凄さは言葉でなんか言い表せないし、本当に「凄い」って言葉ですら言い表せないとすら思う。彼等の音楽は本当に体験してそれを実感する物だし、音源とほぼ変わらない高次元の音像を極めながら、映写機の映像と共にライブでダイレクトに全てを放つ彼等の音は本当にエモーショナルであり、あらゆる感情がオーケストラと化した轟音に埋め尽くされてしまう。ただこの瞬間を再び目撃出来た事が本当に嬉しいし、僕にとってGodspeed You! Black Emperorというバンドは本当に代えの無い唯一無二の存在であるのだ。



 本当に目の前に奇跡が広がっていた。それに尽きる。
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