■HEARTBEAT/TG.Atlas
![]() | HeartBeat (2013/06/15) TG.Atlas 商品詳細を見る |
旭川を拠点に活動する禍々しい異形で唯一無二のオルタナティブロックを鳴らす4人組であるTG.Atlasの2013年リリースの2ndアルバム、リリースは愛媛の国宝レーベルIMPULSE RECORDSから。これがもう狂騒と狂気をそのまま音にしてしまったかの様な作品なのだ。メンバーチェンジもあり、今作ではシンセを取り入れただでさえ異形の音を更に不穏に妖しくしてしまっている改心の一枚!!
TG.AtlasはDISCHORDやTOUCH&GO周辺の音を本当に真っ当な形で受け継いでおきながら、それを自らの手で破棄して再構築する事で完全に独自の混沌と狂騒を生み出しているバンドなのだが、今作ではそのサウンドが完全にオリジナリティしかもう存在していないって領域まで到達している。一体何をどうしたらそうなってしまったのかという感じだし、この胸のざわつく感じ、不安と興奮が一気に押し寄せる感じは本当に何なのだろうか。プログレッシブでハードコアでジャンクでオルタナティブだし、心拍数が一気に加速する感覚を覚える音しかない。ざらつきにざらつきまくった音質もそうだし、荒々しいビートもそうだし、極限まで金属質でジャンクで鋭利なギターサウンドもそうだし、今作には一切の甘ったるさは無い。本当に無慈悲に人を殺しに来る音しか無いのだ。
シンセ音の不穏なループから始まり反復するギターフレーズと変則的ビートから一気にジャンクさを加速させて、2本のギターが鉄槌の乱打を繰り出し、キリキリとしたまま始まる第2曲「dischromatic」から先ず飲み込まれる。変則的でインプロ的であり、直感でフレーズを弾き倒している様で計算され尽くしたフレーズの数々もそうだし、崩壊寸前のバランスで崩壊しないで、しかも妙にノリやすかったりするし、第3曲「RING(共鳴の連鎖)」からは音の破壊と再構築の結果によるカオティックさも感じる。それに続く第4曲「konnkatizm」はノーウェイブ感も高まり、不意に入り込むベースラインだったり、前のめりなビートが加速する心拍数の様だし、ノイジーなギターフレーズが入り込む瞬間の無慈悲な殺戮具合。中盤ではアンビエントな要素も盛り込み、静謐さで落としながらも、更に暴発する様は本当に堪らない。
音数自体は決して多いって訳では無いんだけれど、必要最低限の音でのみ構築しているって音でもないし、一音一音の情報量が圧倒的だし、濃密だし、エロいし、残酷。何よりもメロディアスさなんて要らないとばかりに徹底してディスコードの嵐なのに、フレーズフレーズが凄い印象に残り易いというか、トラウマ的に残るのは、原始的なリフやビートのフレーズが凄い魅力的なんだけど、それを分解して構築していくからこそ生まれるアヴァンギャルドさがあるからなんだと思う。第9曲「HEARTBEAT」は今作で一番キャッチーな楽曲なんだけど、そのキャッチーさで逆に持ち前のジャンクさとかノーウェイブ感とかアヴァンギャルドさ浮き彫りにしていく手法は流石だし。8分30秒にも及ぶ第10曲「地獄の黙示録」うねりながらもくぐもり、低体温さが際立ち、最後は極限まで音数を減らし、ただ心拍数を停止させていく終わり方だし、本当に最初から最後まで良い意味で安心して聴けない。目の前の狂騒と破壊的な音に興奮を覚えるしかない。
基本はポストハードコアだったりするけど、ジャンクやプログレッシブやカオティックだし、何よりもディスコダンス的である。ここまでオリジナリティがあり、しかも聴き手を徹底的に痛めつける音は熾烈過ぎると思う。本当に心臓に悪いけど、本当に興奮できるサウンドは正にオルタナティブであると思う。DISCHORD、TOUCH&GO、北海道ハードコア好き、This Heat辺りの音が好きな人は間違いなくマストな一枚だし、2013年の国内オルタナティブロックの最重要作品候補だ。衝撃的で攻撃的過ぎる危険信号の数々に是非殺されてくれ!!