■Trachimbrod + Sore Eyelids/Trachimbrod×Sore Eyelids

2013年のTokyo Jupiterのリリース第一弾は、昨年同じくTokyo Jupiterから2ndアルバムリリースしたTrachimbrodと、Suis La Luneのメンバー2人が在籍するエモーショナルシューゲイザーバンドであるSore Eyelidsのスプリット作品だ。同じスウェーデンの同郷バンド同士が2曲ずつ提供した計4曲のスプリット作品だが、どちらも美麗なる碧い旋律を見事に聴かせてくれる好盤。
先ずはTrachimbrodだが、昨年リリースの2ndにて繊細な旋律と哀愁のサウンドをハードコアに内包しながらも、スケールを感じさせる轟音として鳴らしていたが、その流れをより明確に推し進めてきた印象を受ける。元々は碧いエモーショナルさと繊細さが売りであり、その奥底にハードコア要素を手にして、持ち前のサウンドを力強く進化させた彼等だが、今作の頭を飾る「I Am Jack's Wasted Life」からマスロック的なギターフレーズが咲き乱れ、繊細さの中にある疾走するパートで見せる暴走する郷愁のサウンド、時にシンガロングするパートもあり思わず拳を握り締めたくなる。そんな繊細で柔らかさの中の強さを確かな進化として見せつつも、続く「Erect, Eyes Closed」ではよりタイトになったバンドアンサンブルが印象的であり、それでいながら朧げで、幻想的な音の浮遊感と輪郭、それにあざとい過ぎる位に郷愁の旋律が揺らめきと共に炸裂する様は、あざとくありつつも、聴き手のツボを確かに押さえているし、繊細に揺らめくサウンドの中に確かに感じる汗臭さはナイスだ。
後攻のSore Eyelidsは今作で初めて彼等の音に触れたのだが、単なるエモとシューゲイザーとの融合では終わらないバンドであり、たった2曲ではあるけど彼等が別格である事を証明している。まず本当に根本的なメロディセンスが素晴らしいのだ。徹底して碧くありながら、どこか後ろめたい絶望的悲哀とその先にある希望がごちゃ混ぜになってしまった様なメロディは本当に彼等だからこそ生み出せる物だし、ギターサウンドはシューゲイザーよりしく淡く繊細でありながらも、それに反してリズム隊のタイトで屈強なビートが良い具合に相乗効果を生み出しているのも大きなポイントだと思う。「Next To Nothing」からモロにシューゲイザーなギターサウンドが展開されているけど、彼等はシューゲイザーに寄り掛かっているバンドとは絶対的に違うし、機軸となる楽曲の完成度の高さ、轟音バーストしないパートでも、絶妙にメランコリックなフレーズが冴えに冴えまくっているし、何よりも、轟音の奥から伸びやかに響く繊細でありつつも、確かな強さを感じさせるボーカルがまた良い。「Dissolve」なんてメロディの奥底にあるサッドネスさが本当に涙を誘うし、単に碧いだけでなくて、奥底のダークさも彼等にはあるから、本当に信頼出来る音を鳴らしている。
スウェーデンからTokyo Jupiterを通して届けられた美麗なる碧いサウンドが咲き乱れる全4曲。両バンド共に日本での知名度は決して高くは無いかもしれないけど、聴き手を選ばない繊細でエモーショナルなサウンドは本当に多くの人に届いて欲しい。両バンドへの入門編としても是非チェックしておきたい好スプリット作品だ。