■Silver Tongue/Light Bearer
![]() | Silver Tongue (2013/06/29) Light Bearer 商品詳細を見る |
元Fall Of EfrafaのAlex率いる芸術的ポストメタル集団であるLight Bearer。その脅威の1stアルバムの衝撃から2年の歳月を経て届けられた2013年リリースの2ndアルバム。その1stアルバムにてISIS以降のポストメタルを担う屈指の大傑作を生み出し、昨年リリースされたNorthlessとのスプリットでもその圧巻のスケールで描く世界で聴き手を圧倒したが、今作は更に神々しさを増した作品であり、勿論前作に匹敵する傑作だ。またゲストボーカルでイタリアのポストブラックバンドであるGottesmorderのMicheleが参加している。
今作も前作に引き続いて堕天使ルシファーの物語らしいのだけど、その物語の壮大さを物語るように今作はインタールード的な1曲を除き、全曲10分越えで、作品の収録時間は80分近くと、前作以上のスケールだと言える。そして前作ではNeurosisからの流れを感じさせる音に、より神々しいスケールを加え、ヘビィネスと幽玄なる音色が織り成す神々の世界を描く作品であったが、今作では前作に比べるとスラッジな熾烈さという部分は少し弱まっているが、それでもスラッジな重心のあるアンサンブルは健在だし、より芸術的美意識の方にベクトルが向いたからこそ、重苦しさの先から光を描き、また前作から確かな線で繋がるストーリーを生み出したのだ。
実に5分にも及ぶストリングスとホーンの調べが壮大なる物語のオープニングアクトを務め、バンドサウンドが入った瞬間にLight Bearerの芸術的ポストメタルが咲き誇る第1曲「Beautiful Is This Burden」。スラッジなリフで攻めながらも、そのリフからは確かに美しさを感じるし、複雑に展開する楽曲の中でストリングスやホーンがバンドサウンドに新たな色彩を加え、バンドサウンドもミドルテンポの重いビートで進行しながらも、スラッジなリフと見事に対比を描くアルペジオやトレモロのフレーズは極限まで研ぎ澄ました美しさの結晶であるし、ポストメタルをオーケストラの領域まで持って行きながら、その繊細で壮大なアンサンブルの核になっているのは少しずつ昇っていく神々しさと、本当に屈強で力強いアンサンブル、そんな音に乗せられるAlexの力強い叫び、もうこの1曲だけで今作が前作同様に全てを圧倒する芸術性と美意識によって生み出された傑作だと確信できるし、終盤の轟音とスラッジさがぶつかり合うサウンドスケープとか1曲目からもうクライマックス過ぎる。
続く第2曲「Amalgam」ではスラッジな熾烈さが際立つ1曲になっているけど、ダークなリフとサウンドが無慈悲な更新を繰り出しながらも、それでもブレない気高さが凄いし、先程の第1曲と見事な対比を作品の中で描く、ツインギターの刻みのリフの応酬の奥底にあるストリングスの仕事っぷりも見逃せないし、天から突き落とされる様を描いてる様だと僕は感じた。その奈落へ突き落とされた先に待ち構える第3曲「Matriarch」では荒涼とした情景から始まり、ダウナーなサウンドから徐々にストリングスの光が微かに差し込み、荒涼とした世界に差し込むノスタルジックな感覚、その痛みを壮大なるドラマに変えて、ストリングスと共に高まる熱量と差し込む光、ダークなビートが気づいたら力強いマーチへと変わり、闇からの確かな救いを描く。本当に作品の中で明確なストーリーが存在しているけど、本当に闇から光への情景を見事の高次元で生み出し、熾烈さを光を掴む力強い手として表現しているのだ。
後半の2曲も屈指の出来でアンビエントな音と読経的ボーカルによる小品である第4曲「Clarus」を挟み、繰り出される第5曲「Aggressor & Usurper」なんてのっけから咆哮とスラッジリフで始まっているにも関わらず、そのヘビィネスからは確かなポジティブさすら見えてくるし、合間合間の静謐なパートと対比を描きながらも、力強さから生まれる美しさと粗暴さの対比が本当に凄いし、その熾烈さからも感じさせる美意識が圧倒的。そして約20分近くにも及ぶ最終曲「Silver Tongue」では先程の熾烈なスラッジ煉獄からの救いの様なポップさすら感じさせるのノスタルジックで優しいフレーズが柔らかく聴き手を包むオープニング、それがその温もりをそのままに重厚なリフとアンサンブルの応酬となり、20分近くにも及ぶ重厚なアンサンブルと静謐な情景とサウンドが展開され、そして全ての意識を天へと運ばれるエンディングを迎えるのだ。また最後の最後の悪魔の断末魔を彷彿とさせるストリングスとボーカルが30秒程入り、四部作となるLight Bearerによる堕天使ルシファーの物語である第三部を予告している様でもある。
今作は前作に比べたら確かに熾烈さという点では少し劣るかもしれないけど、それでも芸術性と壮大さとスケールは前作以上に仕上がっているし、80分近くにも及ぶ壮大な物語は正座して向き合うと確かに体力は使うけど、その音に向き合った後には確かに意識がネクストレベルへと到達しているし、その音によって描かれる物語はアートであり、神話であり、壮絶なる世界だ。前作同様に屈指の傑作だし、Light Bearerというバンドは本当にとんでもない領域に存在している。