■HMV GET BACK SESSION independent 割礼「ゆれつづける」LIVE(2013年10月29日)@下北沢SHELTER

 HMV GET BACK SESSIONとは、ありそうで無かった名盤再現のライブシリーズで、bloodthirsty butchersやGREAT 3等が出演したこのシリーズだけど、今回は最早御大の域にいる生ける伝説である割礼の名盤再現ライブ。今年の頭に割礼のメジャー時代の名盤「ネイルフラン」、「ゆれつづける」の二枚が再発された事を記念するライブであり、9月には「ネイルフラン」再現ライブもこのシリーズで行われた。まあそっちはそのライブがあるのをライブ当日に知り、行くのは涙ながらに断念するしか無かったのだけど、今回の「ゆれつづける」再現ライブは絶対に見逃す訳にはいかないと今回は下北はシェルターまで足を運んだ。本当に4年振り位にシェルターに足を運んだら、平日にも関わらず大分人は多く集まっていて、それも今回のライブがあらかじめ決められたセットとはいえ、本当に特別極まりないセットだからこそってのもあったと思う。



 開演予定の19:30ほぼピッタリにメンバー4人がステージに登場し、数分間のサウンドチェックから始まったのは、「ゆれつづける」の1曲目を飾る「緑色の炎」、のっけから静かに燃え上がるファズギターの音色からもう割礼にしか生み出せない世界が生まれていく。当時からスロウなグルーブと酩酊の甘さに満ち溢れた音を鳴らしていた割礼だけど、更にスロウになり、より重いグルーブを手に入れた今の割礼が、かつての名曲をプレイしたら本当にとんでもない事になるのは分かりきっていた話でもあるけど、この「緑色の炎」の極限まで音数を減らし、そしてスロウな酩酊を極めたからこそ生まれるロマンの世界に、もう飲み込まれてしまう。続く「散歩」は現在でもよくプレイされている楽曲ではあるけど、よりインプロ的なフレーズを盛り込み、楽曲の原型を生かしながら、より不穏に轟くグルーブの波もそうだし、アレンジを当時とは大きく変えながら、4人編成で生み出す最良の方法論で、精神的重みと、圧巻の貫禄と、より長尺になったアレンジによるサイケデリックさ、アンサンブルの強靭さ、方法論としては本当にスタンダードなロックでありながら、それを見事に分解して再構築した今の割礼の音は、本当に誰にも真似できない物だと思う。そして僕が個人的に割礼最強の1曲だと思っている「電話の悪魔」、これが本当に割礼の身を切り裂くロマンの塊を素直過ぎる位に繰り出しながら、本当にメンバー4人の音の輪郭がクリアであり、その絶対的アンサンブルが切り味鋭い音を繰り出し、立体的な音の形作りながら高まるロマン、10分以上のアレンジなっているからこそ繰り出す終盤のロングギターソロのサイケデリックな甘さの世界、本当にす全てを揺らすその音は非現実だった。
 序盤の3曲だけで実に30分近くの演奏になったが、だからこそ「海のあの娘」の一転しての原曲に忠実なアレンジでの演奏はまた以外であったし、打って変わってシンプルで素直なアレンジになっても、変わらないスロウさも流石だし、そんなアレンジでも甘さの中で揺らめくファズギターがじわじわと体に浸透する感覚、やっぱり現在の割礼の鎌田・松橋のリズム隊の凄さ、「怪人20面相」のBPMが少し速めになったからこそ生まれる躍動とグルーブへの落差、「歪み」のギターと歌のみでのダークさを極めたアレンジの奈落へと落とされる始まりから、リズム隊が入った瞬間に一気に生まれる強靭な音による死刑宣告。今回のライブは序盤の3曲以外は比較的音源に忠実なアレンジでプレイされていたにも関わらず、それでも長年の活動による物か、実際にその音に直面した瞬間に生まれる非現実的な音色は凄みしか無かった。終盤に入り「素敵な季節」、「ゆれつづける」と続いて繰り出されて、またインプロもサイケデリックもロックも全て喰ったからこその割礼にしか生み出せない最小の音で最大のうねりを生み出すあの瞬間の連続は、割礼の音を浴び続けて脳髄が完全に溶けてしまっても、とんでもない酩酊を聴き手に与えていたし、本編のラストはアルバムの最後を飾る「ごめんね女の子」の躍動と痛々しさでまた意識を別の方向に覚醒させられた瞬間もそうだったし、本編の「ゆれつづける」の全9曲は本当に全ての楽曲が絶頂の瞬間しか無くて、それは単純に全曲名曲である「ゆれつづける」という作品が素晴らし過ぎるだけで無く、そんな名盤中の名盤を、現在の最強の4人による割礼によって演奏されたからこその物だし、20年以上前の名盤が本当に最新で最強の音として甦ったのだ。
 そしてアンコールでは一転して現在の割礼の楽曲である「INスト」が披露される。不気味に反復するギターフレーズがまた新たな酩酊を生み出し、宍戸氏の掠れた甘いボーカルがシェルターを完全にベッドルームへと変える。割礼の生み出すロマンの一つには間違いなくエロスが存在するし、ジャジーなコードを使いながら、それを再構築する不穏さによるアレンジが生み出す断罪の瞬間でまたドープな方向へと意識は飛んでいくし、その後の「がけっぷちのモーテル」の素直過ぎる真直ぐな甘さと、悲しみとロマン溢れる音と歌でまたまた昇天。現在と過去を繋いだ瞬間であり、割礼の不変さを証明し、更には現在こそがこのバンドの凄みしかない時期である事の証明でもあった。
 松橋氏以外のメンバーが掃けて、松橋氏のみがステージに残ってこれまでの雰囲気を完全に壊す恒例の爆笑の松橋MCコーナーがあって、これで今回のライブは終わりかと思ったけど、まだ点かない客電と再びアンコールの手拍子、そしてそれに応えて再び登場するメンバー。そして最後の最後に繰り出されたのは割礼の最強中の最強の超絶サイケデリックオーケストラである「リボンの騎士(B song judge)」。最初のファズギターのストロークが鳴り響いた瞬間のあの感覚、そして炸裂するドープなロマン、15分以上にも及ぶ割礼でも屈指の長尺曲でありながら、甘く残酷な歌と音が生み出すドラマ、そしてラストの5分以上にも及ぶスロウ極まりないのに圧巻過ぎるロングギターソロ、これまでクライマックスしか無かった今回の割礼のスペシャル過ぎるライブの最後の最後で、現在の割礼を象徴する最強の曲で締めくくり、御大・割礼の圧倒的な二時間のステージは幕を閉じた。



セットリスト

1.緑色の炎
2.散歩
3.電話の悪魔
4.海のあの娘
5.怪人20面相
6.歪み
7.素敵な季節
8.ゆれつづける
9.ごめんね女の子

en1.INスト
en2.がけっぷちのモーテル

en3.リボンの騎士(B song judge)



 個人的に割礼は僕が好きなバンド達の中でも特に好きなバンドだし、「ゆれつづける」は本当に今でもずっと愛聴している墓場に持っていくつもりの名盤なんだけど、今回のライブは本当にそのスペシャル過ぎるセットというのもあったけど、これまで何回も観て来た割礼のライブの中でも一番のライブだったと思うし、そのサイケデリックさ、甘さ、ロマン、残酷さ、アンサンブル、全てが完璧過ぎる程に完璧だったと思う。割礼は11月に大阪と名古屋でのワンマン、そして12月に毎年恒例の都内での年末ワンマンが控えている。割礼は単なる伝説的バンドでは無くて、今こそ最強のバンドであり、今こそライブを観るべきバンドだと僕は思っている。まだ割礼のライブを観た事が無い人は一回で良いから彼等のライブを是非とも体感して欲しい、唯一無二のロックバンドが生み出すサイケデリックなロマンの宇宙がそこには存在するから。
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