■LIGHT/THE CREATOR OF


LIGHTLIGHT
(2013/11/27)
THE CREATOR OF

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 本当に想像を超える作品が生まれた。日本のヘビィロックを代表するバンドであり、孤高の存在であるTCO、07年に編集盤の「Dust To Dust」のリリースこそあったが、長らく活動を休止していた。しかし09年にライブ活動を再開、メンバーを一新して5人編成で再始動したが、そんなTCOの新たな始まりを象徴する、実に11年振りの3rdアルバムが遂に生まれた。闇から怒りと殺意を放っていたTCOの最新作はまさかの「LIGHT」だ。これまでのTCOの音を確実に覆しながら、2ndである「In Reservoir」の流れも確かに受け継ぎながらも、ヘビィネスからポストロック・ポストメタルを想起させる音になり、しかしそれらのバンド達とは確実に違う、ヘビィロックバンドとしての「ポスト」に対する確かな回答だ。この音は2013年の必然であり、そして進化の精神を核とするTCOの新たな進化であり、確かな始まりの幕開けだ。



 2ndでもその傾向は確かにあったが、今作は大半の楽曲がインストの楽曲になっている。そして5人編成となった事による音の色彩の増幅、その音の緊張感こそ不変でありながらも、光とかそういった言葉を想起させる音や旋律が格段に増えた。ヘビィロックバンドのセオリーを嘲笑いながらも、そのグルーブは正にヘビィロックであり、その中で「先を行く」という点に於いて本当に凄まじいレベルに達した作品である。例えるならmogwaiだとかJesuだとかISISだとか、そういったバンド達の流れにありながら、それの模倣ではない。世界レベルの猛者の音を受け継ぎながら、そのどのバンドとも違う音であるし、そしてそれを完全に自らの物として昇華した作品、それが今作「LIGHT」である。
 今作のタイトルトラックでもあり、今作を象徴する楽曲である第1曲「LIGHT」が先ず本当に素晴らしい出来だ。Kuroi Moriとしても活動し、新生TCOの新たな核でもある古谷氏の幽玄なるピアノの調べから、これまでのTCOのイメージは確実に覆されるだろう。そして静謐で繊細でありながら力強いドラムとベースが生み出すグルーブ、武田氏の柔らかでオーガニックなギターの調べ、ダウンテンポのグルーブと、美しくシリアスな調べが絡み合う様、徐々に熱を帯びていくドラマティックなアンサンブル、そしてディストーションのギターが入り込んだ瞬間の高揚のカタルシス、柔らかでありながらシリアスな緊張感を孕んで進行する音が爆発を起こし、そして新たな始まりの光を生み出す。この1曲だけで、今作があまりにも凄い名盤である事を語っているし、そのドラマティックさは凡百のバンドには逆立ちしても生み出せない物だ。
 「LIGHT」の感動的な始まりからそれに連なる形でインストの楽曲が続く。第2曲「Black Star」は多くの音が浮遊し交錯しながら、クリーンさと歪みの対比が見事で、重苦しいグルーブと、ある種の性急さも感じさせるギターフレーズが美しく花咲き、闇と光の交錯するプリズムの結晶の様だ。第3曲「Resonance」の2ndの「Acoustic」の更なる発展系とも言えるトライヴァルなビートとオーガニックさ、ヘビィロックの真髄を持ちながらも、そこに収まらないで音のみで全てを語り、柔らかでありながらも、貫くサウンドの高揚感は本当に鉄壁の一言。第4曲「Out For Three Days Straight」のデジタルな感触で録音されたドラムと、その無機質さに反してサイケデリックといった要素へと侵食し、揺らぎと揺らぎの断層を生み出す情景、第6曲「Pass Away」の今作で一番メロウでストレートなポストロックサウンドを放ちながら、幽玄の音のシャワーから全ての音が純白の洪水へと変貌していく様、第7曲「Settle」のポストロックの中からオーガニックさを極め、そして聴き手の意識をトランスさせ、電子音とヘビィネスと白銀の旋律が生み出す結晶は個人的にJesuのそれに迫るだけの完成度があると思う。
 それぞれの楽曲の存在感が凄まじいインストの楽曲郡を越えた先にある終盤の2曲は、アプローチを変え、歌物の楽曲になっているけど、その2曲では更にヘビィネスの先という物を生み出している。第8曲「Wind Up」では今作の大きな肝になっているダウンテンポの重苦しいグルーブをより前面に押し出し、のっけから雷鳴の如しディストーションサウンドが展開されているけど、そのサウンドの中にある厳かさ、そして闇が渦巻く序盤から、それを切り裂き新たな光が差し込む瞬間のエモーション、シリアスでありながらも絶望的ではなく、闇の底から微かに差し込む光をこの手で掴む様なポジティブな強さ、終盤では轟音が炸裂しながらも、それが軽やかに羽ばたく瞬間が確かに存在し、その音は非常に神々しい。
 個人的に今作のハイライトであるのは第9曲「You Are」だ。引き摺る歪みを生み出すギターのリフの重さ、それに反して浮遊感溢れるボーカルを聴かせる鈴木氏、武田氏の繊細なアルペジオが入り、リズム隊の音も入り込むと、そのアンサンブルは更に強固になり、そして静謐さから今作屈指の強さを誇るギターリフとビートの応酬はTCOというバンドが新たな扉を開く瞬間であり、グランジから始まり、ヘビィロック・ポストロックも飲み込み、そして進化を遂げたTCOの本質は11年前と何一つ変わっていない事に気付く。高揚感とキャッチーすら感じさせ、鈴木重幸というリフ作りの鬼才の才能が炸裂し、そしてもうこれはTCO自身が完全にポストメタルを独自に解釈し、そしてそれを確かな形にした証明であり、先を行く音でありながら、鈴木氏のルーツであるグランジに帰結する。そして最後は最終曲「Requiem」のアンビエントな音像だ。壮絶かつ美しい今作をミニマルな音の反復と共に、眠る様に終わる。



 今作は本質的な意味で「オルタナティブ」であるし、本質的な意味で「ポスト」な作品だと断言する。その方法論は確かにポストロックにかなり接近しているとは思うけど、それはあくまでもTCOが新たな進化を遂げるための手段であったに過ぎないと僕は勝手に思っているし、形骸だけ模倣したポストロックバンドなんかじゃ、この音は絶対に生み出せないのだ。これまで・現在・これから、その全てを繋ぐ音だし、TCOの核である進化の精神が見事に形になっているのだ。だからこそTCOは11年経っても本質は何も変わらないし、そして全てを置き去りにして先へと突き進んでいる。2013年に今作が生まれたのは必然であるし、そして今作は確実に現在のシーンを揺るがす「In Reservoir」に続く金字塔になる筈だ。進化の精神としてのヘビィロック・ハードコア、TCOの絶対正義が正に実を結び、強靭かつ美しい音の結晶となったのだ。先駆者はやはり自らの手で新たな道を切り開く。2013年の国内ロックの最重要作品の一つだ!!



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