■孔鴉 -koua-(2013年11月30日)@心斎橋火影 -HOKAGE-


実に一年二ヶ月振りに大阪へと遠征。今回はSeekとSTUBBORN FATHERの共同企画である「孔鴉 -koua-」の為に大阪まで足を運びました。僕自身がSeekというバンドが本当に好きであり、Seekが中々東京でのライブが無いのもあって、大阪まで足を運んでしまったのだけど、それだけじゃなく出演バンドがTRIKORONA、ZAGIO EVHA DILEGJ、weepray、SWARRRM、屍という東京でも先ず無いであろう全7バンドの熾烈なる宴。本当に東京から大阪まで足を運ぶ価値があるのは確信していたし、実際に足を運んでしまった。今回開催されたハコである心斎橋の火影は初めて足を運ぶハコだったけど、本当に良い雰囲気だったし、何よりも最初から最後まで全バンドが主役みてえな本当に激音の宴となった。以下その一部始終を記す。
・Seek
まさかの一番手は主催バンドの一つであるSeek。メンバーの出戻りがあり、正式な5人編成となったSeek。7月のwombscape企画以来に彼等のライブを観るが、本当にバンドとしてとんでもなく強くなっていた。単純にサウンドの音圧がかなりビルドアップしていたし、今年リリースされた屈指の熾烈さを生み出した「崇高な手」で聴かせたサウンドが更に倍プッシュで攻めってくるライブになっていた。そもそも5弦ベースと6弦ベースのツインベースのサウンドは本当に凄まじい重低音を放出し、タイトかつダイナミックなドラムと共に圧巻のグルーブの暴力として放たれる。更にたった1本で熾烈なるリフを繰り出すギターは破壊的でありながら、バンドのアンサンブルを絶妙に調和させる指揮者の様でもあったし、本当にこのバンドのサウンドは破壊的でありながら、本当に見事な調和と秩序を感じさせる。そんな凄まじい音圧の重音を爆音で繰り出す楽器隊に負けずに凄まじい声量とドスの効いた低域ボーカルで激情を叫ぶSUGURU氏のボーカルがまた凄いし、音と共に感情にダイレクトアタックしてくるボーカルが魂を揺さぶり、猛威の中で一つの感動的な激情を生み出すのだ。今回のセットは「崇高な手」に収録されている3曲と、今後音源としてリリースされるであろう新曲の全4曲だったが、その新曲が「崇高な手」の楽曲より更に凄まじさとドラマティックさを激音として放つ名曲であり、バンドの更なる進化を感じた。7月に初めて彼等のライブを観て以来、Seekに心を奪われてしまって、今回こうして大阪まで足を運んでしまったけど、本当に重音の熾烈さから感動を生み出す様は圧倒的過ぎるし、もうのっけからクライマックスであった。やっぱりSeekって凄いわ。

・TRIKORONA
6月のおまわりさん企画でも熾烈なるライブを繰り広げていたTRIKORONA。今回観るのは二回目だったけど、このバンドがノンストップで繰り出すショートカットでファストでカオティックなサウンドは本当に衝撃的であり、既存のパワーヴァイオレンスの範疇を越えていながら、どのバンドよりもヴァイオレンスだ。ボーカルの人はその目つきや挙動からして完全にラリっているし、エクストリームな音圧と音色で破壊的なサウンドを繰り出し、それをリミッターが完全に解除された状態で放っているから、観ているこっちも頭が完全にラリってしまう。ショートカットなパワーヴァイオレンスを30分間ノンストップで繰り出していく様子は、本当に潔いし、その暴力性はライブの後半は本当に数値化なんて不可能なレベルで上昇!!目の前になったのは最早巨大な音塊と化したサウンドの中で狂った様に撒き散らされる叫びだった。最後にはボーカルの人が最前で観ていたロン毛の人(もしかしたらどっかのバンドの人?)にマイクを渡して退場、最後はその人がボーカルになって、狂騒の中で叫び暴れ、カオティックかつヴァイオレンスな交通事故みてえなライブは幕を閉じた。本当に衝撃的だよ。

・ZAGIO EVHA DILEGJ
昨年末にリリースされた1stアルバムも本当に素晴らしかった長野のグラインドコアであるZAGIO。でもライブを観るのは実に1年半振り位だったかな?でもそんな久々に彼等のライブを目撃したのだけど、本当に前以上に暴力的奈バンドになったと思う。ブルータルさとダーティさとヴァイオレンスさだけをひたすら鍛え放出するライブは、人間の危険な本能へと訴えるグラインドコアであり、それは正に暴力だ。ひたすらドス黒いリフを光速で繰り出し、獰猛なブラストビートが暴走、そして暴れ狂いヘイトと殺意を暴力的に具現化したみたいなボーカルだけでグラインドコアが持つ危険性を最大限に放つ。言ってしまえば視界に入った瞬間にケツにチンコ押し付けられてるどころか、ケツをレイプされてるみたいな音(何を言ってるか分からないけど、ZAGIOの音は本当にその位ヴァイオレンスなのだ。)を放出。ライブ自体も20分もやらないで終わってしまうショートカットさ、速さを徹底的に極めるだけで無く、ゲスい暴力性も極めているからこそのグラインドコアの暴力。本当にその瞬間にはレイプされていたし、グラインドコアは本当に危険なのを証明していた。

・weepray
たった二週間振りにライブを観たけど、本当に何がどうなってたのかすら分からなくなってしまったweepray。プレイしたのも二週間前に観た時と同じ「滅びの碧 終末の詞」、「この手とその手」、「彼岸花」の3曲だったけど、本当にこのバンドは何かおぞましい物に取り憑かれている。それしか言えない。ライブ前からベースのアタケさんが自分で自分をビンタしまくってる時点で先ずおかしいし、そしていざライブが始まると、ボーカルのケイゴさんが完全に非現実的な空気を放ちながら、パラノイアの狂気を魅せる。個人的な陰鬱な感情の暴発を激情として鳴らしているのがweeprayだと僕は思っているけど、それは音やボーカルだけじゃなくて、メンバー5人それぞれのステージングでもかなり発揮されていると思う。本当にエグくグロテスクで生々しくて、一つのドキュメントの様でもあるし、一つの儀式の様でもある。2曲目にプレイした「この手とその手」では更にギアが入り、メタリックの繰り出す断罪のサウンドと共に、全てをズタズタに切り刻んでいく様な感覚、何よりもライブをしているweepray側だけじゃなくて、観ている僕でさえも何か得体の知れない物に憑かれてしまった感覚を覚えて、気がついたらケイゴさんと共に叫んでたりしてたり(これ二週間前のweeprayのライブの時と同じじゃねえかよ)、その得体の知れない負のエネルギーに身を任せて、憑かれた様な動きをしてしまった。それも僕だけじゃ無くて、他の観ている人も何人も同じ状態に陥ってしまったし、そうじゃない人は目の前の異形な光景をただ立ち尽くして呆然と眺めていた。weeprayという悪魔に憑かれるか、その情景をただ力無く呆然と観るか、本当にweeprayのライブはそんな非現実な感覚を実際に生み出してしまっているし、ラストの「彼岸花」はそれが更に顕著になっていたと思う。初めての大阪でのライブだったらしいけど、大阪のフリークスにもその存在感は十分に魅せた筈だ。

・SWARRRM
本当にずっと好きなバンドだったんだけど、やっとそのライブを観る事が出来た。その喜びだけでも大きかったけど、SWARRRMという唯一無二のバンドの凄みが本当に強く感じさせるライブだったと思う。激情だとかカオティックだとかグラインドだとか、そういった分類すら不要であり、それらの全てを飲み込んでいるし、ハードコアバンドとしてのエクストリーム成分を極限まで増幅させた上で生まれる熾烈さ。それがSWARRRMの大きな魅力だと僕は思っているけど、現在の編成になってからのSWARRRMもそれを十分に感じさせるサウンドだし、音源よりもさらにハードコアな粗暴さが露になってしまうライブは本当に感情と肉体に大きく訴えてくる。その暴力性が凄まじくなっているにも関わらずSWARRRMのサウンドは本当に感動的だ。爆音でエクストリームなサウンドを放つギター、ゴリゴリのベース、グラインドをモロに感じさせるドラム、悲痛なる叫びを放つボーカル、それらの全てが本当に必然として存在するからこそSWARRRMは本当に強い。ライブ自体は20分弱で終わってしまったけど、本当にその瞬間に確かなカタルシスが押し寄せてきていたし、ハードコアバンドとして本当に異形だからこそ、圧倒的ライブを見せていたのだ。本当にやっとSWARRRMを観る事が出来て嬉かったし、そのライブは期待を遥かに超える物だった。

・屍
唯一無二の境界性人格障害ハードコアこと屍、赤色のみの照明が照らすメンバー3人の姿は最早神々しくもあり、weeprayとはまた違うベクトルで内面を抉り出すサウンドを放つ彼等だけど、今回の屍は過去曲も新曲も含めて自らのキャリアの曲を満遍なくやってくれた。先ずは「五月ノ花」からライブはスタート、メタリックでスラッジな成分を感じるギターリフの始まりから空間を完全に重苦しく変貌させる。屍のライブを観る度に思うのだけど、本当にシンプルな3ピースの編成でありながら、その音はチューニング云々の概念を超えて本当に重い。メタリックなハードコアの成分を持っているからとかじゃなくて、ライブで生み出す空気が本当に重い。山口氏の暴力的で殴りつける様なドラムの力もあるし、板倉氏のヘイトへと振り切った怨念と憎悪のボーカルが持つ力も凄まじいからなんだけど、今回のライブはのっけからそれが完全に振り切っていたと断言したい。それに今回のライブでも披露していた新曲は、最後の最後まで板倉氏がクリーントーンで歌い上げ、ポジパンの耽美さを美しくエロく描いていたのはやはり衝撃的でもあったし、そんな流れから一気に流れを変えて初期のファストコアな楽曲を獰猛に繰り出していく様子は本当に異形でありながら、脳髄に肉体的快楽を叩き込まれた。しかし本当に凄かったのは終盤で、「メッセージ」の静と動の乱打から、漆黒のカタルシスへと雪崩れ込む瞬間、そして最後の最後に披露した「行きつくところ」だ。アウトロのクリーントーンのギターの調べからいきなり始まり、そしてディストーションが炸裂した瞬間に屍屈指の個人的憎悪と自傷的殺意の暴発が繰り出され、何度も何度もハイライトな瞬間があった今回のライブの中でも本当に赤黒いエネルギの爆発が目の前にあった。7月のENSLAVE企画以来に屍を観たけど、そのライブはますます制御不能になり、そしてより孤高の存在である事を、そのライブで証明している。

・STUBBORN FATHER
そしてトリのもう一つの主催バンドであるSTUBBORN FATHER。今回初めてそのライブを観る事になったのだけど、正に激音と言う言葉が最高に似合うバンドだったと思う。結構ストレートな激情系ハードコアなサウンドを鳴らしているバンドだし、カオティック成分もありながらも、今回出演したバンドの中では一番ストレートなバンドだったと思う。その中で絶妙に展開していく楽曲だったり、より暴力性が強く出るパートがあったりと楽曲自体も中々練り込まれている。でもいざそのライブは蛍光灯の照明が照らす中で、本当に暴力性と瞬発力に特化しまくったサウンドだったと思うし、ギリギリの綱渡りのラインで崩壊寸前のカタルシスを生み出していたし、それは観る者にとって強烈なトラウマになること間違い無しの音だった。ストレートなハードコア成分をしっかりと打ち出しているからこそ、プリミティブな暴力性があるし、それをとんでもない馬力で発揮するからこそ生まれる激音は今回の猛者ばかり揃うイベントの締めくくりに相応しかったし、そのヴァイオレンスな激情は確かな傷跡を残した。

今回はわざわざ東京から大阪まで遠征したのだけど、その価値は間違いなくあるイベントであったと思うし、大阪にもエクストリームミュージックのシーンが存在する事を改めて実感した事、関西バンドの凄み、今回は遠征組であった東京バンドの凄み、また長野からの殴り込みだったZAGIOも含めて、全7バンドが本当に全部メインディッシュであり、激音に次ぐ激音の嵐が吹き荒れる最高のイベントだった。既に来年の3月1日に第二回のアナウンスもされているし、その日も本当にとんでもない夜になると確信している。東京だけじゃなく関西も本当に面白く激烈な音が渦巻いてる。それを本当に五感で実感した最高の夜だった。

■コメント
■Re:孔鴉 -koua-(2013年11月30日)@心斎橋火影 -HOKAGE- [die-toe]
札幌でDOWNERというバンドやってます!
あの日は単身大阪に乗り込んで見に行きました。
すばらしい企画でしたね!!今度お会いできるのを楽しみにしてます。