■On The Eternal Boundary/Archaique Smile
![]() | On The Eternal Boundary (2013/12/04) Archaique Smile 商品詳細を見る |
昨年のMilankuの来日ツアーでも全公演に同行し、清流の様な轟音で観る者を感動の渦に巻き込んだ4人組インストポストロックバンドであるArchaique Smileの全5曲入の2013年リリースの1stアルバム。同じ日本のバンドだとmonoに代表される様な轟音系ポストロックのバンドであり、その音は本当に正統派な轟音系ポストロックバンドであるが、今作に収録された5曲は確かな感動を聴き手に残してくれる。
彼等の音自体は正直に言うと特別斬新と言う訳では無い。収録されている楽曲の殆どが長尺であり、楽曲構成も非常にストーリー性を強く感じさせ、静謐で清らかな音からドラマティックに熱量を高めて最後は轟音のバーストという構成も言ってしまえばかなり正統派だ。しかしそんな彼等が何故良いかと言うと、正統派の手法だからこそ際立つそのストーリーテラーとしての力量、純粋な楽曲の良さ、エヴァーグリーンな清らかなる旋律の美しさ、そして実はシンプルな手法でアプローチしているからこそ生み出せたダイナミックな躍動と熱量。それに尽きると思う。第1曲「Falling To The Sky」の冒頭の清らかなるトレモロとアルペジオの二本のギターが飾るオープニングからしてもう分かっている感があるし、再生した瞬間に彼等の生み出す物語に引き込まれていくだろう。前半はクリーンなギターと一歩一歩少しずつ歩を進める様なリズム隊の音、楽曲が進行するにつれて浴びていく熱は待ち受ける爆発の予感しかないし、轟音パートに入った瞬間はもう待ってました!とばかりに吹き荒れる美しい轟音。しかも最後の最後で更にうねる至上の轟音が音塊としてダイナミックに轟流するカタルシス。明確な起承転結を確かに感じさせてくれるし、それは繊細でありながらも、ここぞという所では力強く音を放ってくるから、確かな音を聴き手に残す。
第2曲「A Doom Massacres Our Hearts」からは更にその物語は純度と鮮明さを浮き彫りにしていく。ツインアルペジオの無垢な旋律から早々に轟音パートに入り込み、のっけからクライマックスとばかりに焦らし無しに放たれる轟音は堪らないし、その熱量をダイナミックに伝えるリズム隊の音は更に性急に加速していく。そして再び静謐なパートで落として終盤で再び轟音パート、楽曲構成の方法論こそ極めて普遍的でありつつも、その構成美と美轟音の酔いしれる。今作で唯一5分未満の第3曲「Grave Of Memories」では透明感溢れる残響音の余韻を聴かせるパートから、神秘性の高いトレモロの渦が静かなる爆発を見せる終盤でグロッケンと美しい調和を果たしているし、第4曲「Melting Mind」は冒頭のフレーズから一つの救いを感じるポジティブな旋律が耳に残り、作品がいよいよクライマックスへと雪崩れ込む予感を感じさせながらも、新たなる始まりを想起させ、そしてその始まりを祝福する神々しい轟音が吹き荒れ、聴き手の心の淀みや悲しみを完全に吹き飛ばし、代わりに確かな感動とポジティブなエネルギーを残してくれる今作でも屈指の名曲。そして最終曲「Faint Light」にて感動的な今作を締め括る見事なラストシーンを映し出し、悲しみを乗り越えた先の世界を描き今作は終わる。
非常に正統派な轟音系ポストロックバンドでありながら、1stにして非常に感動的な静謐さから轟音へと雪崩れ込む神秘的な物語を描き、そこには何の淀みも無い。彼等の音に触れると本当に心が豊かになっていくのを感じるし、どんなに熾烈な轟音を放っても、それは圧倒的な感動の情景から来る物であり、人々の負の感情を全て吹き飛ばす熱さとエネルギーが確かに存在しているのだ。これからの国内ポストロックを担うバンドになっていくだろうし、これからの進化も非常に楽しみになる充実の1stだ。