■heaven in her arms x COHOL Split CD 「刻光」release tour(2014年2月23日)@渋谷eggman
・Boris
一番手はのっけからBorisという時点で今回のライブが先ず色々おかしいんだけど。Borisは最初からやらかしてくれた!!客電が落ちると同時にステージにはお約束の大量のスモーク、そして1曲目からBoris流のストーナー絵巻「あくまのうた」でキックオフ。爆音で引き摺るドゥーミーさが生み出すサイケデリックな音像に先ず意識を奪われるけど、そこから一気にBPMを上げてストーナーにブギーしていくサウンドは最高に格好良いし、荒々しく猛り狂うサウンドはヘビィロックの最果てへと観る物をいきなり引き摺り込む。かと思ったら続く新曲である「黒猫メロディ」は一転してここ最近のエクストリームさからポップネスを放つBorisならではな曲という落差。しかし「あくまのうた」の余韻は全く壊さずに、あくまでもヘビィロックとして歪みまくった爆音のサウンドでポップさをこれでもかと放つエクストリームさは今のBorisの本当に大きな武器だと思うし、初めてライブで聴いたけど、純粋に格好良い!!そしてそのポップネスを引き継ぎながらもサイケデリックさを強く感じる「vanilla」という流れで攻めに攻めまくる。ヘビィなだけじゃない、サイケデリックなだけじゃない、ポップなだけじゃない。その全てを独自に解釈して放つBorisのサウンドがこれでもかと炸裂し、空気を良い感じに温めて必殺のヘビィロック「Statement」の刻みのリフが鳴った瞬間は会場も一際大きなリアクション!!何度ライブで聴いても、この曲は本当に痺れるッ!!
Atsuo氏の「闇をお見せします。」というMCから「あの人たち」、「Quicksilver」とヘビィネスとポップネスの正面衝突が何度も発生し、しかもライブだからこそのサイケデリックな感触も充満。それだけで何度も昇天しそうになったけど、本当に本番は最後の最後に繰り出された初期の極悪激重ドローン絵巻「Vomitself」だった。一気にスモークの量が増幅し、しかもただでさえ爆音だったサウンドが更に音量が上がり、そしてTakeshi氏とwata嬢のギター2本のみで生れるドゥームリフの反復のみが生み出す地獄。とんでもなく爆音で終わり無く繰り返すリフがヘビィさもサイケデリックさも完全にボーダーを振り切って、比喩でもなんでもなく意識が完全にトランスし、五感が完全に麻痺する感覚を僕はずっと感じていた。この1曲だけでもう完全にBorisは全て持っていったし、ライブが終わるまで意識はまともに働かなかった。そしてライブが終了したらあまりのスモークの量に火災報知機が発動するというギャグみたいな事が発生(Coholの転換中ずっと鳴ってた)。これまで何度もBorisのライブを観たけど、その中でも一、二を争う位のベストアクトだったし、ヘビィロックの最果てをスモークの向こう側から確かに見せてくれたんだ。

・COHOL
そして本日の主役の一つ目であるCOHOL。ライブを観るのは随分と久しぶりになってしまったけど、HIROMASAさんがアーティスト写真でも被ってるボロボロの謎の布をライブでも被っていて、より異形さを感じさせるルックスになっていたのが先ず凄い印象的だった。そしてのっけから必殺の「底知れず吠える軟弱」からキックオフ。KYOSUKEさんのドラムが先ずこれまで見たライブよりも更に研ぎ澄まされていたのが凄く印象的。ブラックメタル成分をより前面に押し出しながらも、ハードコアバンドとしての血肉も強く感じるドラムを叩き出していたし、これまで以上に音に熾烈さが加わって加速していたと思う。HIROMASAさんの高速フィンガーピッキングのベースが不穏なうねりを生み出し、地獄みてえなボーカルで吐き出す痛みと闇、何よりもギターのITARUさんが完全にブチ切れてた。そのパフォーマンスで客のボルテージを上げながら、その存在を認識した瞬間には切り刻まれそうなギターフレーズの数々、空間的不穏さも見事に打ち出しながらも、より鋭利さを増幅させたフレーズの数々の応酬は凄まじさしか無かった。スプリットの曲である「疎外」はより怨念が加速し、メタルな格好良さを非常に強く感じさせながらも、そこだけで留まらないし、邪念の音が増幅して渦巻く瞬間の連続と、奈落へと突き落としていく音の濁流に完全に殺されたし、一転して「変わらぬ誤解変わる嘘」のカオティックに圧倒的情報量の音が光速で落下していく様はカタルシスに満ちていた。
そんな音を繰り出しながらもITARUさんは本当に熱いMCをしていて、今回のライブに対する確かな覚悟を強く感じた。そして「諦めに届かぬ反復行動」で激情成分が一気に増幅し、空間的アプローチの中でいり際立つ痛みと熾烈さ、それが痛々しくて闇に満ちていたのに、どこか美しくて感動的だったし、そこから破滅のクライマックスに向かって繰り出された「不毛の地」は目の前に煉獄が広がっているとすら思えるレベルの負の感情を掻き集めたみてえな混沌が広がり、激情だとかブラックメタルを超えた、とにかく熾烈極まりない音塊が全てを犯していく憎悪の塊、それはCOHOLが最果てのバンドになった事の証明だったし、ラストに披露した新曲ではそれが更に際立ち、とにかくその光速の悪夢の様なライブは観る物の心を黒く染め上げたに違いない。闇と痛みの向こう側へ急降下するCOHOLのライブはBorisに負けずに圧巻だったし、このバンドは暫くライブを観ない間にとんでもない進化を遂げていた!!本当に底知れなさに恐怖を覚えてしまったよ。

・heaven in her arms
そしてトリはもう一つの主役である国内激情最高峰のバンドであるHIHA。BorisにCoholと両者が最高のライブを見せてくれたが、この日は完全にHIHAが持って行ったし、これまでHIHAの行けるライブは全部行く様にしてて、何度もそのライブを体感していたけど、久々の東京でのライブは陳腐な物言いにはなってしまうけど、完全に神が降りていた。ケント氏が簡単にお客さんに感謝の言葉を述べてそして「縫合不全」のあの美しいイントロのアルペジオが響き渡った瞬間にeggmanは完全にHIHAの美しくドラマティックな激情の世界に染め上げられる。不穏のドラムのビートとベースラインが曲を引率しながら、ギターが美しくアルペジオを奏で、その静謐な美しさから一転してディストーションギターがスラッジに鳴った瞬間にドラマティックな激情が完全にその姿を見せ、シューゲイジングする3本のギターの轟音とケント氏の痛みに満ちた叫びが響き渡り、長尺だからこそ展開するドラマティックなストーリーはライブではよりダイナミックなドキュメントとして鳴らされ、その美しさはこの世の物とは思えないレベルだった。その余韻を残さず雪崩れ込む様に「声明」の断罪のギターリフが鳴らされ、新たな痛みのドキュメントの予告編へ、そして必殺の「痣で埋まる」へと雪崩れ込んだ瞬間に剥き出しの痛みが爆音で鳴らされる3本のギターの断罪のハードコアリフと黒々しく轟くトレモロリフの轟音の洪水が目の前に広がり、ケント氏の叫びと共に熾烈で感動的な激情絵巻へと発展。何度も「痣で埋まる」はライブで聴いているけど、何度聴いても屈指の名曲だし、最初からフルスロットルで放たれる圧倒的情報量の激情の轟音が奈落へと全てを突き落とし、怒涛のビートと轟音と共に終わりへと突き落としていく。「交差配列」を挟んで繰り出した「鉄線とカナリア」も最早言うまでも無くHIHAの必殺の名曲だし、3本のギターが美しいフレーズの反復を繰り返し、ポストロック然としてリズムセクションもかなり整合的なアンサンブルを繰り出し、その音の余韻すら聴かせる美しい旋律の連続は耽美であり、しかし悲壮感に溢れている。そして轟音になり、痛々しいリフの応酬になった瞬間のカタルシスと血生臭い感情をそのまま音にしたみたいなアンサンブルと叫び、しかし歪みまくっていながらも美しさもかなり際立っていたし、沸点を超えた激情から再び静謐な美しさを見せた瞬間に、何かもうよく分からないけど、本当に泣きそうになってしまったし、何でこんなに痛々しいのに優しくて美しい音をこのバンドは鳴らせるのだろうかと何度も思ってしまった。
ケント氏が「スプリットの曲全部やる。」とMCし、スプリットからHIHA流のポストロック「黒い閃光」へ。HIHAが持っているポストロック方面の美しさを前面に押し出したこのインスト曲は、これぞHIHAという美しい旋律がシリアスに響き渡り、完全に轟音系ポストロックと化した静謐さから轟音という王道な曲でありながら、HIHAにしか生み出せない美しさをライブでも放っていたし、SEである「繭」を挟み、一転して本編ラストはHIHAの数多く存在する名曲の中でも屈指の名曲である「終焉の眩しさ」へ!!のっかからトレモロリフが轟き、最初からクライマックスとも言える泣きに泣きまくったギターフレーズが黒い音塊となって放出され、ブラストビートの応酬が熾烈さを更に加速させると言うポストブラックな名曲だけど、僕はこの曲でHIHAは本当に前人未到のバンドになったと思っているし、クラシカルさすら手に入れて、その音は本当に神々しい闇を放ち、しかしその闇の先には光が確かにあったし、これでもかとドラマティックに展開される楽曲の凄まじさ、特に後半からはもうハイライトの連続!!もう言葉にすらできねえよ!!!!!そしてアンコールでは必殺のシューゲイジング激情「赤い夢」!!メンバーは何度も何度もステージ前に出てきて客を煽り、そして更なるドラマティックな美しく熾烈な激情を、いや終焉の眩しさの向こう側にある痛みの先の救いを鳴らしたんだ。こうして圧巻のライブは終了。客電が点いてもHIHAの激情の余韻から全く抜け出せずにいたし、このバンドは本当に凄いバンドだと改めて思った。もうずっと大好きなバンドなんだろうし、HIHAが好きで良かったと本当に心から思う。その痛みのドキュメントとして繰り出されたライブの終焉の眩しさの向こう側に、僕は確かに立っていた。

3バンドそれぞれが見せた向こう側の世界は本当に脳裏に焼きついているし、Borisの見せたスモークの向こう側、COHOLが見せた闇と痛みの向こう側、そしてHIHAが見せた終焉の眩しさの向こう側、それは正に別世界の情景だったんだ。三者三様の素晴らしいライブだったけど、本当にHIHAのライブが神が降りていたし、もうこのバンドからは得体の知れない何かしか感じない。今回集客もかなりあったと思うし、まだまだこうした音楽の力には可能性があると思う。BorisとHIHAは世界進出を果たしているし、COHOLも世界進出が決まっている。この日本の3バンドが日本だけじゃなくて世界にその向こう側の音をこれからどう見せていくのか本当に楽しみだ。そんな事を考えながらこの日のライブの情景が僕はまだ脳裏に焼きついている。本当に最高の夜だった。