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■バラバラ/屍

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 とんでもない傑作である2nd「しかばね」から実に7年の歳月を経てリリースされた境界性人格障害ハードコアこと屍の09年リリースの3rdアルバム。全14曲というボリュームたっぷりな収録内容もそうだけど、2ndであれだけ殺意と憎悪をブチ撒ける音を繰り出していた屍は今作でも見事に健在。よりおぞましく、より多様になり、より具現化された世界観が広がる今作を聴けば屍というバンドが唯一無二の存在である事を実感する事になるだろう。



 密教的SEであり、ライブでは転換中に必ず流れるSEである「たまゆら」のおぞましさから、板倉氏の「アッー!!」という叫びから第2曲「窒息」に雪崩れ込んだ瞬間に屍の負の世界が展開される。今作での大きな特徴でもあるのだけど、これまでの負の方向に振り切った激情のハードコアを機軸に、ゴスの方向の耽美さも手に入れ、更に板倉氏もただ負の感情をブチ撒けるだけでなく、そのボーカルの説得力と表現力もかなり際立っている。楽曲の展開もヘビィに熾烈なるサウンドが洪水の様に繰り出されるだけではなく、静謐で不穏なパートもかなり多くなり、そんなパートでの板倉氏の何かに取り憑かれたみたいな呻き声が余計に不気味に響き渡る、動と静のそれぞれのベクトルで見事なまでに屍の世界観は体現されているし、静から破滅的な動のパートに移行する瞬間が本当に堪らない。ライブでも御馴染みの第3曲「メッセージ」も暴走するブラストビートのパートと、少し歪んだ静謐なパートの対比が見事だし、今作全体にも言えるけど、山口氏のドラムの表現力が凄まじく、多種多様の負の感情をドラムで表現していると断言したいし、その音の重みが半端じゃない。更に2ndでの作風を生かしたドラマティックに奈落へと落下していく楽曲展開も鳥肌物の素晴らしさなのだ。悲哀どころか悲痛さが際立つ旋律が生み出す痛々しさが全開になった第4曲「バラバラ」も今作での屍の魅力が大きく表れた名曲になっているし、凄いベタな言い方ではあるけど、怨念を見事に音にしているし、しかも耽美な美しさを強く感じるのがまた良いのだ。
 一方で屍流のカオティックハードコアとも言える第5曲「自縛 虐待 醜態」のファストに暴走するサウンドと捲くし立てる板倉氏のボーカルと掛け合いのコーラスワークがプリミティブなハードコアの格好良さを強く感じさせながらも、それでも屍の世界観は全くブレ無い。特に必殺なのは今作で一番ハードコア色の強い第6曲「鍵」だろう。イントロのメタリックなギターリフのフレーズから完全に殺しに来ているし、暴走するビートと、無残に炸裂する血みどろの鋼鉄のリフの応酬の凄まじさと、板倉氏のボーカルとコーラスワークの掛け合いもそうだし、屍としてのハードコアを分かりやすい形で体現し、負を破壊の方向で振り切って表現したこの曲はライブでも屈指の破壊力を誇り、屍がダークサイドに振り切ったバンド云々以前にハードコアバンドとしてとんでもなく屈強である事の証明であるとも思う。一転して第7曲「五月ノ花」の今作屈指の悲哀の旋律が無慈悲に響き渡り、ダウンテンポで展開される序盤の痛々しさからファストに身を引き裂く音と叫びが繰り出される後半へのドラマティックに展開していく様はもう言葉も出ない位に完璧だ。第8曲「退廃的心理」のオカルティックさとカオティックの見事な融合、第9曲「オン バサラ ダルマ キリソワカ」の「鍵」に負けず劣らずファストに暴走するサウンド、まだファストコアバンドだった頃の感覚を感じさせながら、それを現在の屍へと変貌させた第10曲「絶交」と第11曲「開かない扉」の流れも秀逸だし、ダウンテンポで展開され、ゴシックな要素が全開になっている第12曲「首切り」、そして今作を見事に総括する第13曲「心残り」と、作品全体での多様さを持ちながら、世界観は徹底しているし、ダウンテンポの断罪も、静謐さが生み出す怨念も、ファストに暴走する殺意も、全てが屍を構成するにあたって必要不可欠な音であり、それらが生み出す暗黒の世界が凄まじいことになっているのだ。



 現在も屍は現役で活動を続けているが、未だにここまで負の方向に振り切ったハードコアバンドは存在しないし、ライブでも音源以上に徹底した世界を見せつけ、負の感情を呼び集めるライブを超えた儀式めいたステージを展開している。だからこそ屍は多くの狂信的なファンを獲得していると思うし、それは屍というバンドが代えの無い存在だからこそなのだ。僕自身もそんな屍の虜になってしまった人間だし、今作で展開される憎悪の連続は一つのドキュメントでもあり、そして生々しい人間の性を描いた一大絵巻なのだ。2ndに負けず劣らず今作も屈指の名盤。



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