■Mappō/Sed Non Satiata

ちゃんと去年聴いてたら間違いなく年間ベスト上位に入れていたのに!!数多くの素晴らしすぎるバンドを多く輩出しているフレンチ激情だけど、その中でもDaitroともスプリットをリリースしており、Daitro同様にフレンチ激情の最重要バンドの一つとされているSed Non Satiataの2013年リリースの最新アルバム。こちらも傑作だった前作のS/T作品の流れを受け継ぎながらも、よりアグレッシブに、しかしより洗練され深みを増した現在のフレンチ激情でも屈指の完成度を誇る作品となっている。
多くの繊細な旋律を生かした激情系バンドの様な疾走感は今作には無くて、楽曲はミドルテンポで進行する楽曲ばかりなのだが、その美麗の旋律を生かし、絶妙に歪みながらもドラマティックに徐々に突き抜けていく楽曲は確かなアグレッシブさを持ち、静謐なパートを生かしながら、その中で熱量を高めて時に爆発力の高さも見せる楽曲構成の完成度の高さが非常に際立つ作品。分かりやすい激情パートこそ少ないのかもしれないけど、そのメロディも構成も圧倒的な完成度を誇り、確かな説得力を持っている。
のっけから重心の効いたミドルテンポのビートと美旋律の轟音と叫びが炸裂する第1曲「Extrospection」から分かりやすい疾走パートこそ無くても、その破壊力は十分だし、美麗のアルペジオの旋律と轟音ギターが楽曲を構成し、緊迫感と共にアンサンブルを構築していく美しさは堪らない。決してポストロック方向に振り切るのではなくて、あくまでもハードコア的粗暴さを持ちながら、アグレッシブに展開しながらも、同時にクリーンな旋律も聴かせてくるあたりが、このバンドの手腕の凄みを感じる。複雑に楽曲は展開していくけど、同時にドラマティックなエモーショナルさを放出しているし、ひんやりした緊張感の中の確かな熱さは見逃せない。第2曲「Sehnsucht」はよりエモーショナルな旋律と歌を聴かせる渋さに満ちた逸曲で、暴発するサウンドと共に泣きの轟音が感情を殴りにかかってくる、楽曲の構築美や完成度の高さもあるけど、ポストロック方向に行かなかったからこその、美しい泣きが直情的に押し寄せてくるし、それはSed Non Satiataの大きな魅力だし、それが今作では更に研ぎ澄まされているのだ。一方でインディロック的な完全に歌物になった第3曲「San Andrea」のクリーントーンで進行しながらも美旋律のエモーションが炸裂する様はバンドが新たな扉を開いた瞬間でもあると思う。
作品も後半に入るとアグレッシブさ以上に、より聴かせる楽曲が目立つ。第5曲「Entropia」の静かに、でも確かに上っていくドラマティックさ、決してクリーンな方向に振り切らず、美しさの中から確かな歪みも見せていく様もナイスであるし、ミドルテンポのビートを生かし、断罪の様にアグレッシブなフレーズと叫びが生み出す悲哀が背筋をゾクゾクとさせ、中盤の美麗のアルペジオから爆発するドラマティックさを見せる第6曲「Nemesis」は今作の中でも特に気に入っている曲だし、8分にも及ぶクライマックスである最終曲「Soma」の幻想的な揺らぎから徐々にその旋律の熱量を高めて、最後はドラマティックに爆発していく様は見事すぎるラスト。
Daitoro亡き現在、フレンチ激情の最前線で戦い続けるこのバンドの説得力や存在意義は本当に大きいと思うし、だからこそ生み出すことが出来た傑作だと思う。シーンの最前線にいるバンドだからこそ切り開いたフレンチ激情の新たなる道が今作であり、その完成度の高さは多くの人々を説き伏せるだけの説得力を持つ。