■Abalam/Hexis

この日本でも(ごく一部で)人気を集め始めているデンマークの暗黒ブラッケンドハードコアバンドであるHexisの2014年リリースの満を持しての1stアルバム。リリースはHalo Of FliesとMusic Fear Satanでの共同リリース。しかしこれがとんでもない作品だった。凄くベタな言い方をすると本当に漆黒の濁流が容赦無く襲い掛かり、鼓膜を破壊する激烈音。これはまた新たなエクストリームミュージックの悪魔が生まれてしまったようだ。
バンド自身がCelesteから影響を受けている事も公言しているし、ブラッケンドハードコアでありながらブラックメタルやスラッジとも見事にクロスオーバーし、各音楽の特に危険な部分を抽出して掛け合わせた結果生まれたのが今作であり、本当に箸休めの時間なんて全く無い地獄音のみで構成された楽曲は確実に聴き手を選んではしまうだろうけど、その手の音が好きな暗黒エクストリームフリークスからしたら悶絶必至だろう。Celesteが持っているスラッジな漆黒の濁流をブラックメタルなトレモロリフを取り入れ、更に速くしてみましたみたいな音だし、Celeste同様にそれぞれの楽曲でやっている事は正直あんま変わらなかったりするけど、トレモロと叫びのSEである第1曲「Faciem」から既に何かとんでもない事が起きそうな予感しかしないし、第2曲「Tenebris」で本編が始まるともうただの地獄だ。激重激烈のトレモロの濁流と高速でありながらとんでもない重みを持つビートが耳をレイプし、あらゆる負の感情を吐き出す様なボーカルが更に熾烈さを加速させる。絶妙にブラッケンドハードコアなパートとスラッジなダウンテンポのパートを交互に繰り出し、速さと重さという極端さを行き来しながらも、その音の色彩は常にドス黒く、メロディアスなんか完全に放棄した陰湿で残忍な音を無慈悲に繰り出している。バンドの音自体の馬力もかなり凄いけど、肉体的に訴えるというより、強靭さと陰鬱さは精神攻撃だし、ほぼノンストップで繰り出される楽曲は完全に拷問すら放棄して殺しにしか来ていない。こんな激烈音、鼓膜に入って来た瞬間に即死確定なのに、それをやり過ぎなまでに徹底して放ってくるのが今作の凄い所だと思う。そしてそんな楽曲が12曲も繰り出され(インストの曲も中盤にあるけど、それでも破壊力が全く衰えないし極悪)、最後の最後に待ち構える最終曲「Inferis」にて、これまでの楽曲でも取り入れてたスラッジ要素に特化した9分にも及ぶ暗黒スラッジで聴き手は粉微塵になって死ぬ。這いずるドス黒いリフの残響音と、とにかく重い推進力を放棄したビートが生み出す奈落の奥底を体現したみたいなスラッジは今作の地獄巡りのエンディングに相応しいし、本当に重くて深い。
ブラッケンドハードコアとブラックメタルとスラッジの闇鍋的な作品でありながら、その研ぎ澄まされた激烈音は完成度も高いし、徹底して漆黒の美学が貫かれた音は他のバンドとは明らかに違う物になっている。ハードコアとして聴くには快楽的な音では決して無いかもしれないけど、負の方面に振り切ったクロスオーバーサウンドは聴く価値があるし、暗黒音楽の虜になってしまった人々は絶対に外してはいけない一枚だろう。また今作を含めたHexisの作品はbandcampページにてname your priceで購入可能となっているし、盤で欲しい人は3LA(僕は3LAでLPで購入)辺りで購入可能だ。