■いいにおいのするAlcest JAPAN TOUR 2014 with Vampillia東京編(2014年4月13日)@渋谷duo MUSIC EXCHANGE
・Vampillia
予定より20分程押して先ずはVampilliaのライブからスタート。ライブを観るのは一昨年のAlcestの来日公演以来で本当に久しぶりだったのだけど、ライブ前にベースのミッチ氏の前説からスタート。反町隆史の「Poison」を歌ってのっけから会場を爆笑に包み込んでライブはスタート。今回は吉田達也氏はお休みで、ドラムは竜巻太郎氏のみの編成であったけど、本当に久々にライブを観たけど、前から凄いライブをするバンドだったけど、それが更に凄まじい事になっていた。序盤のストリングスと静謐なギターを基調にした壮大なアンサンブルの幕開けから緊張感が凄まじい事になっていたけど、ボーカルの人が登場して(何故かやたらと厚手なコートみたいな服を着ていた)からが本番!一気にブルータルオーケストラのエクスペリメンタル世界の扉が開き、デスボイスとギターの男の娘の人のオペラボーカルが交錯し、ストリングスとピアノが異様な空気を生み出し、ギターの轟音が貫き、竜巻氏のドラムが混沌を生み出していく、異常過ぎるのに、全てが必然として存在するVampillia特有の世界へと連れて行かれた。今回久々にライブを観て思ったのは、本当にこのバンドは一つの括りで語る事が不可能なバンドになったという事だ、そのオーケストラもブラックもエクスペリメンタルも飲み込み、一つのポップネスも手にし、多種多様なコラボをしても決してブレ無い唯一無二の音楽性は勿論だけど、メンバーの異質なルックスや出で立ち、パフォーマンスも含めて、得体の知れなさしかないバンドになったと僕は思う。今回のライブじゃまさかの脚立が準備されてて、それを客の手によってフロアに運ばれ、ボーカルの人がその上に跨り、叫び、そっから大爆発して見事にライブを締めくくったかと思ったら、ミッチ氏がアンコールを要求して、SIAM SHADEの「1/3の純情な感情」を口パクでエアカラオケ。そして始まったアンコールで披露した新曲の凄さ。全てが必然的に存在していたし、爆笑と感動と驚きが渦巻くライブはVampilliaというバンドがより得体の知れないバンドへと進化した証明だったのだ。これまで数多くの音源をリリースしながら、今月末にやっと待望の1stアルバムがリリースされるし、このバンドは日本だけじゃなく、世界を震撼させるバンドにいよいよなろうとしていた。のっけからクライマックス過ぎたし、本当に大きなバンドになったし、それはduoの広いステージでも堂々とライブをするだけのバンドになったという事なんだよ。

・Envy
続いて国内激情の帝王の座を欲しいままにしているEnvyのアクト。今年の頭のカモメのツアーファイナル以来にそのライブを観た訳だけど、先ずは今回のセットリストはAlcestの来日ツアーでのライブという事も意識していたのか、激情系ハードコアの熾烈さとしてのEnvyというよりも、壮大なスケールで激情を放つバンドとしてのEnvyという点が大きく出ていたと思う。一曲目がまさかまさかの「深く彷徨う連鎖」!!静謐さと激情の爆発を見事に生かし、悲痛さを全開にしながらも、その痛みを乗り越えた先の光を描く様な轟音の洪水に既にクライマックスへと突入してしまっていたし、のっけから壮大すぎる激情の物語を奏でてしまった事によって今回のEnvyのライブも既にEnvyの圧勝が確定。それに続いたのが、まさかライヴでまた聴ける日が来るとは思ってなかった「静寂の解放と嘘」!!「君の靴と未来」の楽曲だと「さよなら言葉」や「左手」は比較的ライブでやっていたりもするけど、この曲は熾烈さを極めていた時代のEnvyの熾烈さの先の感動的瞬間をドキュメントにしたみてえな名曲だし、それを現在のEnvyのアンサンブルで演奏なんかしたら言うまでもなく最高だし、ツインギターの熾烈なるギターリフの応酬も、ビートの暴発も、tetsu氏の全身全霊の叫びも含めて、Envyというバンドの全てを語り、ただ単に全身全霊でライブをするだけじゃなくて、それを唯一無二のスケールで鳴らすからこそEnvyというバンドは未だに国内激情の帝王の座を誰にも明け渡さないし、どんな大きなステージでも本当に様になるし、照明のナイスな演出も勿論あるけど、ステージ上の五人からは本当に後光が差してる様にも見えた。そして静謐さから感動を生み出すEnvyとしての真骨頂とも言える「風景」、そしてシリアスな緊張感を孕んだ音の波から、性急なる激情の洪水へと雪崩れ込む「幸福纏う呼吸」へと続き、何度も何度も感動的瞬間がやってくる。各所で話題を呼びまくっている新曲「devilman」もこれまでのEnvyを総括し、そして更なる高みへと上り詰めていくという覚悟すら勝手に感じてしまう位だったし、終盤の「狂い記せ」の時はもう僕の中の感情が訳が分からなくなってしまい、そしてラストの「暖かい部屋」で完全に感情が決壊してしまった。もうこのバンドは激情云々で語り尽くせないバンドになってしまったし、本問いにライブを観る度に進化しか感じなくなっている。何度も言うけどEnvyは国内は勿論、世界レベルで最高峰の激情系ハードコアを鳴らすバンドであるし、それは貫禄すら超えた、神々しいライブにも表れていた。何度観てもこのバンドのライブは感動しかない。本当に凄い。

・Alcest
そして本日の主役であるAlcestのライブへ。ブラックメタルを捨て去り、完全にシューゲイザー方面へと振り切った最新作にして新たなる傑作である「Shelter」をライブでどう表現するのか、前回の初来日の時よりも明らかに大きくなった会場と人気の中でAlcestはどんなライブをするのか、本当に楽しみで仕方なかったし、前回の来日の時にまた日本に来る事を約束ShelterしてくれたAlcestに対して、僕自身も再びAlcestと再会する喜び、色々な事を考えている内にライブは始まった。「Shelter」の導入である「Wings」がSEで流れ、そして「Opale」のイントロの甘美なる轟音が響き渡った瞬間に完全にAlcestの世界。天上の物語が始まった。郷愁と青を感じさせる旋律から生み出される柔らかな轟音。派手では無いけど確かにグルーブを支えるリズム隊の絶妙に柔らかさを感じさせながらも、しっかりと押さえるグルーブ。2本のギターが夢の世界へと導き、ツインボーカルの歌が更なる夢幻の世界を作り上げる。その瞬間に確実にAlcestが描く幻惑の世界が存在していた。続く3rdのラストを飾る「Summer's Glory」のイントロが響いた瞬間に僕の中でAlcestとこれまでと現在が確かに繋がった。まだブラック要素が存在していた3rdの中で、とんでもなく爽やかな開放感に満ちた「Summer's Glory」と最新作は間違いなく繋がっているし、最新作の様なドリームポップな音では無く、あくまでのこれまでのAlcestを感じる音の感触で楽曲が演奏される事によって、Alcestの持つ普遍性の不変さを僕は改めて実感させられた。
そこからは最新作の曲が続き、これまでのAlcestの持つメランコリックさが出た「L'eveil des muses」にてAlcestの世界が本当に一本の線で繋がっていた事を実感。音源とは違って、これまでのAlcestを感じさせるメタル要素をほんのり感じさせながらも、絶妙な重みを感じる音と、幻惑の感覚が見事なバランスで同居していたし、そのメランコリックな余韻を受け継いでの「La Nuit Marche Avec Moi」も感動的であった。何よりもどんなにこれまでのAlcestの感触で曲が演奏されても最新作の持つドリーミーさは薄れていないし、本当にその音に身を任せているだけで心は夢見心地で気持ちよくなっていったし、何よりも前回の来日の時に初めてライブを観て改めて実感した。心が豊かになって表れていく感覚は今回のライブでも健在どころか、より高次元で表現されていたとすら思う。「Voix Sereine」の静謐さから柔らかに放たれる美しさは本当に神秘的だったし、最新作のタイトル曲である「Shelter」の青い郷愁の音は、失ってしまった物に対するメランコリックさもありながら、その先の光を確かに感じた。
ライブも終盤に入ると過去の楽曲を中心にプレイし、3rdの一曲目を飾る名曲「Autre Temps」のメランコリックさを極めた泣きに泣きまくっているイントロのアルペジオが目の前で奏でられた瞬間に、Alcestが描いて来た夢の世界に美しい雨が降り注ぐ情景が浮かんできてしまった。2ndのラストを飾る「Sur l'océan couleur de fer」もそうだけど、湿り気とメランコリックさに満ちたブラック色を少なからず感じさせる楽曲が見事なまでに最新作の楽曲と嵌り、一つの線が確かに存在しているのを実感したし、それが現在のAlcestが持つドリーミーな感触を感じさせる音で演奏されていたから、また新たな発見がありつつ、これまでのメランコリックさが生み出す重みと、現在のドリーミーさが融和した音は、音源には無い新たな感動を生み出した。今回のセットの中で一番ブラック色が強く、シャウトまで飛び出す2ndの必殺の名曲「Percées de lumière」も今回のセットの中で全く浮いていないどころか、必然として存在していたし、その熾烈なるシリアスさは今回のライブの中で一番のカタルシスを感じたし、夢幻の世界の緩やかな崩壊の様でもあり、しかし新たな始まりの為のポジティブな崩壊だと勝手に思い込んでしまいそうにすらなった。本編ラストは1stから「Souvenirs d'un Autre Monde」をプレイし、これこそ正に初めてAlcestに触れた時に感じたシューゲイジングブラックメタルだとか、ポストブラックだとかを超えた癒しと感動の至福の音であり、メランコリックでシリアスでありながらも感動的で、心を揺れ動かす福音だったのだ。だからこそアンコールで演奏された最新作のラストを飾るAlcestにしか生み出せなかった至福のドリーミーシューゲイジング轟音ポストロックな「Délivrance」は本当に感動的なエンディングだったし(個人的にはアンコールじゃなくて、本編のラストで演奏して欲しかったりもしたけど)、夢の世界の終わりと、そして新たなる夢の始まりだったし、何よりもAlcestは何も変わってなんかいなかった。この世の全ての穢れを浄化する本当に夢の時間を体感したし、ライブ演奏こそ音源とやってる事は大して変わらないし、音源に大分忠実な演奏だった筈なのに、音源以上の感動の世界だった。凄い身も蓋も無くざっくりし過ぎた事を言うよ?やっぱAlcestってすげえわ。

セットリスト
1.Wings~Opale
2.Summer's Glory
3.L'eveil des muses
4.La Nuit Marche Avec Moi
5.Voix Sereine
6.Shelter
7.Autre Temps
8.Sur l'océan couleur de fer
9.Percées de lumière
10.Souvenirs d'un Autre Monde
en.Délivrance
本当に全てが特別な夜になったと僕は思っているし、VampilliaとEnvyという国内勢は勿論だし、Alcestの夢の様なライブも本当に心が豊かになるライブだった。こんな夜は滅多に無いし、本当に3バンドが全く違うベクトルでありながら、「それぞれがそれぞれの感動を圧倒的重厚さで生み出していたのが本当に印象深い。何よりも再びAlcestに再会出来た喜びは大きかった。Alcestは現在もツアー中であり、4/20には初来日の東京公演の舞台であったnestにてワンマンライブでツアーファイナルを締めくくる。本当に気になる人は足を運ぶべきだし、それだけAlcestはライブで音源の更に上を行く感動を生み出すから。そして僕はまた再びAlcestと再会する日を夢見るんだよ。