■Silver/Jesu
![]() | SILVER (2006/06/23) イェスー 商品詳細を見る |
Napalm Deathの初期メンバーであり、Godfleshで極悪インダストリアルを奏でていたJustin Broadrickが新たな音楽の可能性を模索する為に生まれたのがJesuだ。初期のJesuの音楽性はGodfleshにも通じるようなヘビィな音を美しく構築し、ヘビィでありながらも美しくあれというサウンドではあったが、それでも凶悪なヘビィさが勝ってた。しかし2006年に発表されたこのEPでは、極悪インダストリアルなヘビィさは無くなっており、ヘビィな音を、美しくポッポな音に重厚な音圧を与えるために使用し、その結果どこまでもヘビィでありながら、どこまでもポップで神秘的な音がこのEPに宿っているのだ。
Jesuの変化を大きく示したのがまず第1曲の「Silver」だ。冒頭の優しいアコギのフレーズから、永遠に響き渡ってしまいそうな重厚な轟音のアンサンブル、タイトなリズムに、何重にも合わさる音に、殺気立った要素は全く無く、どこまでもオーガニックな感覚で幻想的な色彩を映し出している。第2曲「Star」なんかは今までのJustinでは考えられない楽曲だ・何処か疾走感溢れる性急なビートとドゥーミーな轟音リフが奇跡の融合を果たしてしまっているのだ。様々な音楽的英知を待つJustinならではの楽曲と言っても過言ではない。どこまでも慈悲深い神秘性の強い音は曇り空を突き抜け、題名通り美しい星空の向こうへと連れてってくれる。第3曲「Wolves」は今作で一番重たい曲ではあるが、暗闇の中に少しずつ美しき光のパノラマが差し込んで来そうな感覚を覚えるし、何より第4曲「Dead Eyes」はJesu屈指の名曲である。どこか力強い打ち込みのビートと、反復される深遠であり、温もり深いハーモニー。ラップトップシューゲーザーな前半から一気に新たな生命の始まりを告げるような揺らぎを感じる轟音ギターの乗る後半部分への以降は本当に鳥肌が立つ。
様々な音を飲み込んだ末に生まれたのは、どこまでも命の躍動を感じる力強く美しい音。ヘビィなサウンドを経過したからこそ産み落とされた音だ。相反する要素をツギハギにコピーアンドペーストするのでは無く、確かな手法で一つの音にした結果、Justinは今作で唯一無二の音を産み出した。この音はどこまでも広範囲の人々に有効だ。至福のハーモニーに僕は酔いしれるだけ、白銀の幻想的世界へと今作は連れて行ってくれる。