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■今日も生きたね/THE NOVEMBERS


今日も生きたね今日も生きたね
(2014/05/14)
THE NOVEMBERS

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 日本のギターロック最高峰の一つであるノベンバの自主レーベルMERZ設立第2段となる今作は、特殊な形態でこれまで販売されていたMERZ設立第1段音源である4thアルバム「zeitgeist」の全国流通と共にリリースされる2曲入シングルであり、ノベンバ自身にとって渾身の2曲が収録された作品だ。また今作は一つのパッケージに同内容のディスクが2枚おさめられた「シェアCD」仕様となっており、シェア用ディスクにも歌詞カードと紙ジャケットが封入され、盤面には宛名と贈り主を記入する事が出来るという付加価値ありの作品であり、今作を購入した人はノベンバの音を友人などにアナログな形でプレゼント出来る。こうした付加価値はバンドの一つの拘りを感じるスペシャルさがあって非常に素敵だ。



 今作に収録されている2曲はバンド自身にとってかなり特別な2曲だ。表題曲である「今日も生きたね」は「zeitgeist」以降、フロントマンの小林氏曰く「自分なりのアンセム」というテーマに製作した楽曲となっている。そしてもう一曲の「ブルックリン最終出口」はノベンバ活動初期から存在する楽曲であり、ライブではずっと演奏されていた楽曲。ノベンバの最新の一曲と、これまで未音源化だった、最初期の楽曲の2曲を収録したというのはバンドにとっては一つの覚悟だっただろうし、小林氏の今作のリリースに寄せたコメントによると、「ブルックリン最終出口」は“架空の執着”と“現実への依存”の歌であり、「今日も生きたね」は「ブルックリン最終出口」で描かれている残酷性への執着や悲惨な世界への諦観を別の視点で歌った楽曲であるらしく、ノベンバが昔から持っていた、現実への絶望と終着、悲惨な世界への嘆き、依存や愛、そういったテーマを繋ぐ2曲なのだろう。だからこそ今回シングルという形でのリリースとなったと僕は思っている。
 「今日も生きたね」はノベンバにとって現在最新の1曲となっているのだけど、ノベンバ史上最も音楽的多様性と豊かさを持つ最高傑作「zeitgeist」以降の楽曲とは思えない程に「今日も生きたね」は削ぎ落としに削ぎ落とされたシンプル極まりない楽曲であるし、アンセムを意識して作られた楽曲にしてはまるで、花どころか葉すらも枯れ落ちてしまっている、だけどそこにずっと存在する大木の様な楽曲だと僕は思った。7分半にも及ぶ楽曲でありながら、楽曲の構成も進行もかなり淡々としているし、リズムも緩やかなまま進行し、ギターフレーズも最小限のシンプルな音のみ、コード進行もシンプルで空白まみれ、展開も最小限。極限の極限まで音を削ぎ落とし、しかしほんのシンプルなメロディのみで進行しながらも、そのメロディは柔らかで優しくあるし、ここ最近の楽曲と違って完全に歌物を意識している事もあってか、小林氏の歌が非常に前面に出ている。言ってしまえばバラッドなんだけど、それにしてはここまでドラマティックさを放棄したバラッドなんて中々無いし、この曲を聴いて感じるのは本当に体温の温度なのだ。何かに怒る訳でも、嘆く訳でもない、残酷な世界に対する一つの諦念を歌っているんだけど、でも小林氏は最後にそんな穢れた世界を祝福する様なフレーズを歌うし、日々を生きる人々に対する賛美歌という意味ではこの曲は間違いなくアンセムだし、絶望の先の生をただ受け入れているからこその歌だし、終盤の賛美歌みたいなコーラスだったりとかも含めて、ノベンバが最小限の音で描きたかった世界だと思う。方法論こそ違うけど、ノベンバ自身が大きく影響を受けたSyrup16gのバラッドもそうだけど、派手な装飾を拒み、シンプルで優しく美しいメロディと歌のみで紡がれる楽曲は正に渾身の一曲だろう。
 一方で最初期の楽曲である「ブルックリン最終出口」も歌物ギターロックな曲になっているが、「今日も生きたね」とは違ってシンプルながらももっとバンドサウンドが出た曲となっている。こちらもクリーントーンで淡々と進行する楽曲であり、「今日も生きたね」よりは展開等は少し明確になっているけど、それでも余計な装飾を拒み、シンプルな展開の曲。初期ノベンバにあった、カッティングを生かしたギターワークだったり、空間系エフェクターにより、美しく歪んだ音色や、メロディを奏でるベースラインといった要素もある。しかしこの曲で歌われているのは、美しい物が犯される絶望であり、自分自身が人間であるという事に関する嫌悪だ。レイプだとかディストピアといったテーマはノベンバの中ではかなり前から一貫して歌っていた事だし、そういった映画に影響を受けた小林氏の世界観がこれまでのノベンバのどの楽曲よりも色濃く出ている。しかし
「今日も生きたね」と「ブルックリン最終出口」は間違いなく繋がっている双子の様な曲であると僕は思うし、この2曲は他の楽曲と共に音源に収録される事を拒んだからこそ今回のシングルリリースになったと僕は勝手に思っている。



 「zeitgeist」リリース後に、この2曲をシングルとしてリリースしたという事実は間違いなくノベンバにとって一つの節目であると思うし、「zeitgeist」とは一転して、完全にシンプルな歌物のバラッド2曲をここで発表したのは覚悟の証だ。初期ノベンバは特にメロディアスな普遍性を持つバンドだったけど、今のノベンバがそういった普遍性を持つ楽曲をリリースした事によって、改めて進化を感じたし、バンドのこれまでとこれからが一つの線で確かに繋がったと思う。派手さが全く無い2曲ではあるが、この2曲は間違いなくノベンバにとって屈指の名曲だ。そしてこの先のノベンバがどうなっていくのかを僕は見たいと心から思うのである。



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