■Multicolored Libricide/Yvonxhe

東京の国産プリブラであるYvonxheの2014年リリースのEP。リリースは1stアルバム同様に国内ブラックメタルシーンに大きく貢献するレーベルであるZero Dimentional Recordから。全5曲で8分という非常にシュートカットな内容の作品だ。また今作からドラマーがメンバーとして正式に加入している。
1stアルバムも聴かせて頂いているけど、このユニットの特徴である曲の短さと言う点は今作でも大きく健在だけど、音質面ではかなりブラックメタルから遠ざかっている。1stアルバムでは作品全体にリヴァーブの加工が施されていたけど、今作ではそれが無い。そして1stはこれ以上無い位に正統派ブラックメタルだったけど、今作ではもっと根本的な部分での正統派ヘビィメタルのカラーが強くなっているのも大きな特徴だ。
方法論自体は王道のブラックメタルだし、トレモロリフや寒々しいメロディやブラストビートもある。しかし極端に曲を短くする事によって冗長さを完全に切り離している。しかしフレーズ一発勝負かと言えばそれは違うし、ショートカットな楽曲の尺の中で曲の起承転結が非常に明確になっている。トレモロのソロが飛び出したかと思えば、もっとメタルらしいフレーズもあったり、基本的に全体を通してフレーズはメロディ主体で、そのメロディは哀愁の泣きと寒々しさと、それとアクセントとして激情系ハードコアなエッセンスもあると思う。音質のブラックメタルらしい感触を残しながらも、極端に劣悪にはしてないし、良い塩梅でのローファイさだから凄く聴きやすい。
第1曲「S21」は冒頭からスラッシュメタルな成分を感じるギターリフが耳に入り込むし、そこにブラックメタルのメロディをブチ込む事で、攻撃性を持ちながら、暴走するサウンドの奥に妙な美しさを感じさせてくれるだろう。第2曲「Late Radiation Injury」はもっとおどろおどろしいブラックメタルの感触があって、その空気感も良いけど、随所随所のブレイクの入れ方とかはハードコア的でもあるし、トレモロ基調で進行しながら、こういった随所に散りばめたエッセンスが単なるブラックメタルでは終わらせない。第3曲「Judgescab」はメランコリックなギターフレーズとトレモロリフの応酬からやたらドラマティックなギターフレーズに変わり、個人的には激情系ハードコア・ポストブラック感もあってかなり好み。第4曲「Necrotomy」はデスメタルの影響も感じる地獄のリフの応酬からメロディアスなパートに入り、地獄感を味わせてくる癖に、やたらキャッチー。最終曲「Multicolored Libricide」は今作で一番ブラックメタル色が濃厚だけど、最初から最後までクライマックス感全開で突っ走っていく。
本格的なブラックメタルではありながら、随所随所の細かい作りこみや、ブラックメタルだけじゃなく、全体的にメタラー魂的な要素もあるから、ブラックメタルが苦手な人でもかかってこいな内容になっているし、8分と言う非常に短い作品でありながら、濃密に駆け巡る音は単純に格好良い。ブラックメタルとしては一風変わった作風だけど、非常に間口の広い作品だと言える。寧ろこれは非ブラックメタラーの方が好きかもしれないと思うよ!!