■発声・源/カイモクジショウ


発声・源発声・源
(2012/09/12)
カイモクジショウ

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 女性ボーカル、ギター、ドラムによるベースレス3ピースヘビィロックバンドであるカイモクジショウの2012年リリースのミニアルバム。90年代からずっと連なり続けるヘビィロックの系譜の中にあるサウンドでありながら、狂気と獰猛さと美しさと退廃的空気を持ち、多くの素晴らしき先人達が持っていた武器を全て持つヘビィロックの最新の進化系だ。きっと誰もがこんな音を求めていたんだと思う。



 ベースレスであり、ボーカルとギターとドラムのみという最小限極まりない編成のバンドだけど、それだからこそ彼等のサウンドは光る。先ず楽器隊の二人の演奏技術は郡を抜いている。どちらも徹底的に低域の音を追求し、ギターはヘビィネス全開のリフで刺しに行くだけじゃなく、そこに混沌の成分を取り入れ、変幻自在に変化し、チューニングの重さだけじゃ無く、要塞化した膨大なエフェクターを操り、音を豊かに変化させていく。ドラムも繊細で複雑であり、それだけでビートとグルーブを司る。しかし共通して言えるのはどちらも修行僧の如くストイックだと言う事だ。リフを磨きに磨いたギターと、重みと強さを追求したドラム、それだけで強い。そんなサウンドに女性ボーカル西田夏海の表現力豊かな素晴らしいボーカルが乗るのだ。クリーントーンの美しい歌声から、理性を放棄したダミ声のシャウトまで使いこなす。彼等は多くのヘビィロックバンドが嫉妬する才能と武器を持っていた。ヘビィロックとしての強さ、スケール、複雑さと緻密さの融和、耽美で退廃的な美しさ。それが全てある。DeftonesやTOOLといったバンドの系譜を継承しながら、それを更に研ぎ澄まし混沌に落とし、HEAD PHONES PRESIDENTやotepといったバンドにも連なる女性ボーカルならではの空気、それをストイックに突き詰めたバンドがカイモクジショウである。
 いきなりカオティックなタッピングから始まり、後乗りのギターリフとドラムのグルーブが最高に心地良く、しかしクリーンなパートになるとメロディアスに流暢な旋律が美しく、リフの強靭さとカオティック成分が正面衝突し、混沌の中の美しさを描き出す。彼等の持ち味である統率された混沌と鍛え上げたヘビィネスによるグルーブに裏打ちされた、強靭さの中から感じるコードの美しさやドロドロした感覚、西田夏海による捲くし立てるボーカルからダミ声シャウトから、国内の情念系女性シンガーにも通じるクリーントーンボーカルという表現力をフルに使った変幻自在のボーカルという、このバンドの音を最
大限に伝える第1曲「ECDYSIS」の完成度の高さには驚くしかない。一方でDeftonesを彷彿とさせる耽美でゴスで退廃的なメロディを前面に押し出し、スケールを増幅させたサウンドとクリーントーンで歌い上げるボーカルによる美しきヘビィロック抒情詩である第2曲「13TH,AUGUST」。恐怖と美しさという二律背反する二つの楽曲が自然と同じ線で結ばれてしまうのもこのバンドの魅力だし、それはストイックさだけじゃなく、ある種のヘビィロックバンド側のキャッチーなアプローチも彼等が忘れていない事の証明だし、凄く濃厚なのに、スッと飲み干せるし、しかしその味は舌に染み付いたら離れない。
 クリーンでアンビエンスなギターのみの小品である第3曲や打ち込みのアンビエントである第6曲といったインストの小品も作品の随所随所を締めているけど、特筆すべきは第4曲「発声・源」だろう。ソリッドなギターとタイトなドラムが交錯しながら、渦を巻き調和を生み出しているけど、激と美、暴と静、それらが確かに統率されながら次々と繰り出されて行く中で調和は徐々に崩壊し、TOOLばりにダークに沈む結末を迎え、混沌は収束しないでフェードアウトしていく。この曲は先日初めてライブで観た時に本当にびっくりする位のインパクトがあったし、カイモクジショウの凄みを一番感じる名曲だろう。最終曲第7曲「リプレイ」はもうCocco辺りが歌ってもおかしくないメロディアスで退廃的なヘビィロックバラードだし、ストイックなラウドさだけじゃなくて、メジャーフィールドでも十分通用する大衆性を持っているのもカイモクの良さだと思ったりもする。



 最小限の編成で最大の効果を生み出すヘビィロックであり、90年代に登場した多くの素晴らしいニューメタルバンドが持つ良さを卑怯過ぎる位に継承し、それをよりストイックに鍛え、同時によりキャッチーな形でカイモクはヘビィロックを更新した。確かにあの時代のニューメタルの空気や音でもあるんだけど、これは間違いなく最新のヘビィロックの進化系だし、何よりも妥協無しに鍛えたアンサンブルと唯一無二なボーカル西田夏海という最強の武器をカイモクは持っている。先日初めて観たライブでは、音源とは更に桁違いの音を展開していたし、ライブバンドとしての実力もとんでもない。いずれリリースされるであろうフルアルバムでは更に進化した音を聴かせてくれるに違いないだろうし、これからの飛躍が本当に楽しみで仕方ない。



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