■アドベンチャーZ(2014年6月22日)@西荻窪FLAT
・barican
一発目は今回出演するバンドで唯一全く予備知識無しで観る事になったbarican。先ず第一印象は非常に爆音だって事なんだけど、てっきりディスコダントなポストハードコアなサウンドを鳴らすバンドだと思ったけど、それは半分正解で半分間違いだった。確かにサウンドはかなりポストハードコア然しているし、そのギターワークのセンスもそうだけど、もっとエモーショナルであって、もっと歌心溢れるバンドだった、日本語詞になってからのCOWPERSもそうだけど、ガツンと来るサウンドをかましながら、不協和音の中で生み出すメロディアスさがとても印象的だったし、こんなの好きにならない訳が無いじゃん!!グッドメロディと爆音で迸るサウンド、なんというか凄く胸を締め付けられたよ。

・Horse&Deer
楽しさもハードコアに魅力だ!!Horse&Deerはそんなバンドだと思う。突っ走りまくるくらいに突っ走るライブを展開し、とにかくショートでキャッチーな曲を連発し、持ち前のフックを生かし、スピード感しかないサウンドはハードコアのキャッチーさを突き詰めているからこそ生まれるんだと思う。ボーカルの人がMCで滅茶苦茶喋ったり、ライブじゃ滅茶苦茶躍動感しか無いアクションでパフォーマンスするけど、前にNoLA企画で観た時も思ったけど、本当にやっている本人達が最高に楽しんでライブをやっているのがこのバンドの良さでもあると思うし、短くて五月蝿くて楽しいって、これハードコアにとって凄く大事な要素だし、そこをピュアに放つからこのバンドは良いんだと思う。10曲近くを瞬く間に駆け巡り、その瞬間瞬間に確かな楽しさ溢れる彼らのライブ、やっぱり好きです。

・sekien
今回本当に観るのを楽しみにしていた超姫路クラストであるsekien。先日リリースされたEPを聴いて本当にド肝を抜かれてしまったバンドだったんだけど。はっきり言うとこのバンドのライブは本当に音源を軽々しく超えて、壮絶なる怒りに身を任せた化け物としてのライブだったと思う。メンバーは見るからにパンクスで全員刺青でベースボーカルのジョージさんは見るからにクラストなルックス。ギターの人は鼻ピアスにアロハシャツとかなり厳ついし、弦楽器隊のストラップは鎖ってもう何か凄いけど、そんなルックスを全く裏切らない厳つい音。爆音で鳴らされ疾走する怒りと悲しみ、完全にダークサイドなハードコアでありながら、とにかく泣きに泣きまくっているメロディも凄く印象的で、同じ神戸のバンドであり、激情グラインドの伝説であるSWARRRMや大阪のSeeKが持つダークさを徹底的に追求して生れるとんでもないレイジングなエネルギーが間違いなくsekienのライブにもあったし、EPの一曲目を飾る「踉蹌」からライブはスタートしたけど、本当に飲み込まれる。叩き潰されるといった感覚が音に溢れ、ジョージさんのボーカルはどこまでもクラストのそれで、ボーカルスタイルだとか声質だとかじゃなくて、怒りをそのままに歌い叫ぶそれは胸を打つ。ギターワークもクラストの流れに完全にあるのに、本来のクラストとは全然違う。そうだ、sekienこそが日本が生み出した本当に「ネオ」なクラストだし、「夜明け」の「糞ったれ!!」って叫びだけで、泣きそうになったし、「六六六」のラストの「ラーライライライライ!!」のシンガロングパートは勿論僕はシンガロング、音源に収録されていない曲もプレイしていたけど、そちらも言うまでも無く最高だったし、最後にジョージさんが床に倒れながらベースを弾き倒す姿は本当に痺れた。ライブ終わった後は「ヤベェ!!」しか言葉が出なかったし、今回やっとsekienのライブを観れて本当に良かった。このバンド、これからもっと凄くなる!!

・Maggie
このバンド「さよなら東京」以来に観る事になったけど、前に観た時と本当に違うバンドになっていた。前に観た時は90年代カオティックの影響を正しく受け継いだバンドって印象が大きかったけど、そんな物は軽々しく超えていた。まるでジャーマン激情のZANNに比肩するレベルの超絶激重サウンド、個々の演奏力は高いバンドなのは知っていたけど、キャビ二段積みのアンプから放つスラッジに迫るリフの重みとエグさは段違いの進化を遂げていたし、バンドとしての重みとダークさに特化したグルーブの進化は本当に大きかったし、新たなる地獄を生み出せるバンドになっていたと思う。途中にギターの弦が切れるトラブルがあって、それの復旧が思いのほか時間がかかってセットを削ってしまっていたのだけはちょっと残念だったけど、それでもミドルテンポで攻める音は圧倒的だったし、本当に良いバンドになった。ドス黒い音のうねりをこれでもかと味わった。

・おまわりさん
3月のBOMBORIとの地獄の2マン以来にライブを観るおまわりだけど、このバンドは本当に殺意と狂気はそのままに進化を続けていると感じた。今回のライブこそセットは少し短めだったけど、それでも相変わらず事故みたいなライブだったと思う。でもこれまでと違って、今年入ってから観たおまわりってゆっきーさんの出すノイズや松田さんのギターの音とかがそうなんだけど、熾烈さは今まで以上になっているけど、もっとこうクリアに観る人を突き刺す音になったというのは本当に大きき手、でも全然日和ってはいねえし、ただバンドとしての殺してやるって感情と死んでやるって感情はそのままに進化をしているという印象。アンビエント寄りのアプローチもより固まっているし、洗練されているけど、だからこそおまわりが前から持っていたジャンクさも際立つし、ハードコアとしての猛威は更に加速している。でもバンドとしての洗練こそあっても、やっぱりおまわりはおまわりで、案の定ボーカルの風人さんは即効でフロア飛び込んで暴れるわだし、その破滅的ノーフューチャー感覚は絶対にブレないから、おまわりは本当に信頼出来る。バンドとしての安定感や貫禄を手にしながらも、そこには決して留まらずに邪炎を放つから、やっぱ格好良いんだとも思う。本当に一瞬で駆け抜ける音の事故現場はまだまだ行けるぞ!!

・lang
そして本日の主役のlangだけど、今回のライブはnonremのギターボーカルである佑磨さんを加えた5人編成でのライブだったけど、それが本当に良かった!!「さよなら東京」で初めてlangを観た時にlangの虜になった僕だけど、その時にこれをツインギターでやったらもっと最高になると思ったりもしたけど、本当にそうだった。アグレッシブさを強く持ちながらも、フレンチ激情に通じる美意識をlamgには感じていたし、ギターが2本になった事によって音の広がりは本当に大きくなったし、langというバンドの世界観がより明確かつ鮮明になっていた、でもそんなスケール感だけには決して頼らないのもやっぱりlangの良さで、単純にギターが一本増えたからこそ音圧が更にビルドアップしたし、2本のギターが轟音を撒き散らしながらアグレッシブに暴れ回る音は本当にガツンを来た。特に「柄」をプレイした時なんて、その爆発力がとんでもない事になっていたし、持ち前のグッドメロディを生かし、時にはクリーンな音を奏でながらも、ポストロック方向には行かずに、あくまでも暴れ回る音で攻めるからlangは格好良い。そんな音をダイレクトに食らったら、そりゃフロアはモッシュ起きるし、本当にとんでもない盛り上がりだった。特にグッと来たのはアンコールでプレイした「常夜灯」で、2本のギターがアグレッシブに絡みながら疾走する音のクリアでありながら、確かに感じる歪み、ポエトリーのパートを挟んでからのクライマックスへの疾走。もうlangは紛れも無く最高に正しく激情であり、だからこそ本当に感動的なライブを出来たんだと思う。

こんなに心暖まるレコ発なんてそうそう無いし、この日は出演していたバンドだけじゃなくて、来ていた人も含めて本当にみんなで「作り上げた」イベントだったと思う。langのライブの時に本当に多くの人が楽しそうな笑顔を浮かべていたのは印象に残っているし、何よりもlangというバンドが本当に素敵なバンドだからこそこの日の夜が生れたんだと思う。こんな夜があるからこそ、きっと僕も貴方もライブハウスに足を運び続けているんだろうなって帰りの電車で何となく思ったりもした。