■jungle/THE GHAN
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Detrytus、thread yarn、elica、SEGWEIという国内ポストハードコアバンドのメンバーによって結成されたオールスター感すら感じさせるTHE GHAN(読みはザ・ガン)の2014年リリースの1stアルバム。レーベルはDetrytusのkeytone discからとなっている。このバンドに参加しているメンバーのバンドそれぞれ僕自身とても大好きだったりするんだけど、そんな国産ポストハードコアの猛者による新たなる化学反応がここにある。
それぞれのバンドがDISCHORD周辺のポストハードコア等をルーツにしているバンドだから、音楽性も必然的にそんな音になっているのだけど、想像以上に間口の広さや渋さや多様さを感じさせる音に驚いた。ざっくりとした言い方にはなってしまうけど、それぞれが所属するバンドの良さを生かして見事に一つにした音を鳴らしていると思う。第1曲「Time」のズ太いベースラインから不穏にドライブするギターリフとビートの躍動と絶妙な緩急を生かしたアンサンブルと吐き捨てる様な日本語ボーカルが凄く格好良いし、ディスコードメインで突き進むリフなのに、この手の音が好きな人間にはドンピシャな突き刺すサウンドとか、良い意味で滅茶苦茶あざといんだけど、それで良い。対する第2曲「Flash Light」はディスコードの中から妙な熱量を放ち、燻っている様でもありながら、確かに燃えている熱さを感じるサウンドが堪らないし、細かい部分のブレイクだったり、キメだったりが見事にツボを突きまくる。第3曲「want」のジャキジャキに刻みまくるギターワークとかモロにサンディエゴなサウンドとかエモさとかずるい!何というか爆裂感があるのに、単なる爆裂ポストハードコアでは無くて、絶妙な渋みを感じるのがTHE GHANの大きな魅力だと思う。
一転して第4曲「Ghosts (In The Machine)」からは一転してバンドの多様性を見事に体現する曲が並ぶ。第4曲の鉄の感触がひんやりと浸透するギターワークからフランジャーのかかったサウンドの生み出す不穏なサウンドと呟く様なボーカルがマッチし、コーラスかかったアルペジオとフランジャーの覆う様なギターの生み出す絶妙な調和だったり、それは凡百のバンドには生み出せない良さがあるし、バンドとしてのタフネスだけじゃなくて、確かな技も見せてくれるのは本当に頼もしい。横ノリのサウンドの反復とラップ調のボーカルからの爆発するポストハードコアという落差が中毒性を生み出し、変則性とジャンクな感触を生かした第5曲「Transmission」、個人的にSlintとエモの独自解釈だと思っている第6曲「Stain」、本当に楽曲の中でも表情を多く持ち、また武器も多く持ち、ポストハードコアだけで無くて、もっとザックリとしたオルタナティブロックとしての強みを感じるし、90年代のポストハードコアの影響を強く受けているのに、それを見事に消化しているのは、それぞれのメンバーが在籍するバンドもそうなんだけど、もっと踏み込んでいるし、もっと自由になっているのだ。完全にエモに振り切ったインストである第9曲「Phalanstery」で見せる貫禄も、最後の最後の最終曲「Whitemanday」の彼等なりのサイケデリックロックもひっくるめて見事にTHE GHANの音にしている。だからこそ独特の感触を感じさせる音になるのだ。
それぞれのメンバーのキャリアを生かしながら、爆裂でもあり、渋くもあり、先人への愛を感じながらも、それを好き勝手に使っている感じが個人的に凄いナイスだし、その自由さこそ正にオルタナティブロックだと言えるだろう。単なるポストハードコアで終わらないで、その先をしっかりと鳴らして形にしている頼もしさがあるし、そして何よりもどんなアプローチをしても常にささくれ立ったサウンドが本当に格好良い。この手の音が好きな人は勿論、オルタナ好きは是非とも聴くべき一枚。