■Informed Consent/Panicsmile
![]() | INFORMED CONSENT (2014/07/01) PANICSMILE 商品詳細を見る |
実に20年以上に渡って活動し、オルタナティブである事を追及し提示し続けたパニスマの実に5年振りとなる2014年リリースの8th。2010年に一度活動を休止したが、ベースだった保田氏がギターに転向し、新メンバーにDJミステイクと松石ゲルを迎えて2011年に新編成で再始動したが、今作は新編成による初の音源であり、プロデュースはもう御馴染みのAxSxE氏の手による物。そして5年の歳月を経て生み出された新作は、これ以上無い位にパニスマらしく、パニスマにしか生み出せないオルタナティブロックだった。
吉田・ジェイソン・保田・石橋時代のラストアルバムである「A Girl Supernova」ではアバンギャルドなままに歌物に接近した意欲作だったけど、今作はもっとざっくりとしたロック的な部分に回帰していると言える。パンク・オルタナティブロックの影響を独自に捻じ曲げて消化したサウンドはもう相変わらずなんだけど、前作の歌物方面へのアプローチとまた違って、もっとグルーブ感覚を強化し、もっとポップになり、もっとシンプルになった印象を受ける。でもそれぞれのフレーズは非常にキャッチーなのに相変わらずの変拍子だらけで、転調だらけの楽曲達は最早安心感すら覚えるレベルだし、本当にパニスマらしい作品なのだ。第1曲「Western Development2」では2本のギターが非常にキャッチーで更に絶妙なファンキーさも手に入れ、パーカッシブな松石氏のドラムと、DJミステイクの絶妙にゴリゴリのベースラインは新生パニスマがもっとプリミティブなロックバンドになった事の証明だし、転調により曲変化のキメの美味しさ、ファジーなギターソロの格好良さと、凄くひねくれまくっているのに、これは何処を切ってもロックバンドの音としか言えないサウンドだし、反復フレーズによる快楽、ダイナミックに進化したアンサンブル、踊れなさそうなのに、最高に踊れる。パニスマ印の痙攣サウンドは健在どころか、それを更に分かりやすく突き詰めた進化は今作の大きな肝だと言えるだろう。第2曲「Out Of Focus,Everybody Else」なんて各楽器の音がズレまくっているのに、そのズレが無きゃいかんでしょ?と言わんばかりの説得力や必然性は流石だ。
タイトルトラックである第3曲「Informed Consent」は転調だらけなのに、それぞれのフレーズのポップさとファンキーさが難解さを調和しているし、でも中盤では不穏に歪みまくったサウンドに変貌して、おぞましさに背筋が凍るのに、最終的にまたポップになったりする掴み所の無さがまた堪らない。吐き捨て捲くし立てる吉田氏のボーカルとはまた違う、歌心とさりげないサイケデリック成分がパニスマ流の歌物ロックとなっている第4曲「Antenna Team」は前作の流れも確かに感じさせてくれるし、第5曲「The Song About Black Towers」は2分未満の楽曲なのに、変態性しかないアンサンブルと痙攣サウンドを前面に出していて、やっぱり一筋縄ではいかないし、第6曲「Double Future」は個人的にファンキーになった新生パニスマの真骨頂せあり、終盤のファズギターの洪水は震えすら感じる。そしてキャッチーさからドープさへと変貌する終盤の楽曲から、最終曲「Cider Girl」のズタズタのオルタナティブサウンドから一つの開放へと向かうエンディング。やっぱり何もかもが一筋縄ではいかない。
新編成になってもパニスマは相変わらずパニスマだし、よりポップかつファンキーになっても、捻じ曲がりまくった音しかないし、ポップさと不穏さの同居によって、聴き手の心をざわつかせるオルタナティブロック。パニスマはパニスマでしかないし、進化を続けながらも不変のサウンドはやはり凄く信頼出来る。5年の歳月を経て生み出された見事過ぎる改心の一撃那一枚だ。