■IN RESERVOIR/THE CREATOR OF
![]() | IN RESERVOIR (2002/10/23) THE CREATOR OF 商品詳細を見る |
日本人離れした肉体的強度にヘビィロック・ハードコア・パンクの粗暴さを持ちながらも、深淵からドロドロとしたダークネスを放出するバンド、それがTHE CREATOR OF(以下TCO)である。そして02年に発表された2ndアルバムである今作は、安易にカテゴライズされない複雑かつ練り込まれた様々な要素がどこまでもボーダーレスに鳴っている。ヘビィロック・ハードコアの強さ、人間なら誰しもが抱える闇の部分を揺さぶる漆黒の精神世界、そしてプログレッシブでありかつ複雑でありながらも、それを何処までもストレートに鳴らしているバンドだ。今作には似た様な曲は全く無い。全12曲が全く違う顔を見せており、当時の日本のヘビィロックのシーンの中でも屈指の音楽性の豊かさを今作で展開している。
第2曲「Reset」では変拍子を多用しながらもパワーコードのリフの力強さでヘビィロックの強さを叩き付け、第4曲「Accidie」はドープでありながらもプログレッシブに音は咲き乱れている。第5曲「2」は聴き手に絡みつくベースラインとヘビィでありながらメロディアスなギターフレーズが聴き手の耳にまとわりつきながらも、日本人らしい感情豊かな歌をしっかりと聴かせる。この時点でそこらのヘビィロックバンドの先を行き、孤高の音を鳴らしている事が明らかだ。だが今作ではヘビィロックでありながらも、ポストロック・サイケ・アンビエントと多方面の要素を飲み込んだ後半の楽曲が本当に素晴らしい。今となってはISISだったりJESUだったりAlcestだったりと、ヘビィロック・ハードコア側から音響系・シューゲイザー・ポストロック等の音を飲み込み、それを何処までもオリジナルな形で鳴らすバンドが登場してるが。TCOはまだポストロックといった言葉が定着してなかった2002年にそれらの音を喰らい、それを孤高のハードコアサウンドとして鳴らしたのだ。ギターの音色はヘビィではあるが空間的なメロウさを放っているし、リズムがプログレッシブに絡み合うのはTCOならではのアプローチと言えるだろう。特に第8曲「Nothing Ahead」から第11曲「AGAIN」までの流れは圧倒的な情報量と、精神的ヘビィさをメロディアスに鳴らしている。分かりやすい展開など全く無く、絶望的感情を壮大に鳴らす第8曲「Nothing Ahead」、立体的かつ複雑に展開される美しきインストナンバーである第9曲「Acoustic」のプログレッシブさは特筆すべき点だと言える。第10曲「ACID?」の深遠で美しいメロディと、断片的な日本語詞の陰鬱な世界観は、何処までも優しく響く。そしてヘビィさもメロウさも深遠さも全てひっくるめた第11曲「AGAIN」と、本当に素晴らしい流れを作っている。そして最終曲「Narcolepsy」の優しいアンビエントなノイズで今作は幕を閉じる。
今作でTCOはヘビィロック・ハードコアとしてのボーダーを完全に破壊した。当時の日本でこの様なアプローチをしたバンドは全くいないだろうし、今作はあまりにも早かったアルバムになってしまった。しかし様々なジャンルの音楽が多様化した今だからこそ今作で鳴っている音は確かな説得力と孤高さを持っていると僕は感じる。そしてTCOはマニアックかつヘビィなアプローチをしながらも、最終的にはシンプルなリフの格好良さ、歌心、美しいメロディによる深遠な精神世界を鳴らしている。2010年に活動を再開したTCOだが、今こそより多くの人々にこの音は響き渡るだろう。そしていずれ発表されるであろう新譜では今作以上のアプローチを見せ付けてくれるに違い無い。あまりにも早過ぎた名盤に、時代がやっと追いついたのだ。THE CREATOR OFは何処までも孤高であり続けている、TCOの音は確かな強さを持って響いているのだ。だからこそより多くの人々にTCOの音が届いて欲しいと僕は願う。