■Salad Days vol.302(2014年9月27日)@小岩bushbash
しかしこの企画がアナウンスされて暫くして屍サイドからこの日のライブを最後に屍が解散する事がアナウンスされた。本当に突然のアナウンスにどうして良いか分からなかったし、半ば信じられない気持ちだった。本来はSalad Daysというイベントであり、豪華過ぎる4マンだったこのイベントは屍のラストライブと言う特別な意味を持つイベントとなった、勿論ソールドアウトだったし、これまで足を運んだブッシュバッシュのソールドしたどのライブよりも圧倒的に人が多かった。2014年の9月27日という日はきっとこの日足を運んだ人、出演したバンドや関係者、そして僕自身にとっても本当に忘れられる事なんて絶対に出来ない日だった。
・Cohol
トップバッターはより漆黒の闇を描くバンドとして唯一無二の存在になろうとしているCohol。いよいよ新作のリリースも迫っているし、よりとんでもないバンドになるのは明確なんだけど、現時点で既にブラックメタルと激情系ハードコアの衝突地点から、更なる世界を描くバンドになっているし、10分程押してCoholのライブが始まった瞬間にステージを覆うスモークがどこか神秘的な空気を生み出す。セット自体は全部で5曲程と曲数こそは決して多くなかったし、ライブ時間も長くは無かった。でも「底知れず吠える軟弱」からいきなり成す術すら無くなる音を放出。Itaru氏のギターは相変わらずキレにキレまくっているし、ブラストビートとトレモロリフと高速ピッキングが織り成す音は完全に闇の音でしか無いし、それでいてライブ全体で世界観を体現出来るバンドだっていうのはCoholの一番の武器かもしれない。この日もItaru氏はその音楽性とは裏腹に熱いMCをしていたけど、Coholって荒涼とした絶対零度な音を放っていると思ったら、それは半分正解で半分間違いだと思うし、闇の方面に振り切った音のみを高濃度で生み出しながらも、そのパフォーマンスには確かな熱さもあって、単なるブラックでは無く、ブラックの中に熱をブチ込んでいるからこその激情であり、その音は単純に観る物のボルテージを一気に上げるだけの力がある。世界観と熱量と言う二つの最強の武器を持つからこそ、Coholのライブは本当に良いし、だからこそ唯一無二の存在になったのだ。
・kamomekamome
この日のカモメは全てが特別だったと思う。ただでさえ必殺のアンセムばかりのカモメだけど、この日のカモメは全てが桁違いだった。ここ最近のライブでは絶対にラストにやっている「手を振る人」でいきなりスタートだった時点で、もう今日のカモメが全てが特別なライブになるのは分かっていたし、ただでさえ人口密度がおかしい事になっていて地獄と化したフロアをもっと熱くしてやるぞと言わんばかりの最初から激シンガロング&激クライマックスな激アンセムを持ってきた事は屍の最後のライブを前にしたからこそなのかどうかは分からないけど、最初から向は汗だくになっていたし、僕を含めたフロア前方にいた人々も汗がおかしい事になっていた。そこから更にフルスロットルとなり、「ナイーブレターズ」、「例え言葉は冷静に」をお見舞い、よりダイナミックに伝わるサウンドと、ツインボーカルの絶唱が生み出すエモーションはブッシュバッシュの様な小さいハコでは更に凄い事になるし、カモメはもう場所すら関係なく、どんな場所でも最強のライブをするバンドに今のカモメは間違いなくなっているし、その後の「メデューサ」、「この時期のヴァンパイア」、「エクスキューズミー」という過去曲もよりとんでもない事になっている。荒々しくありながらも、ハイブリットで無敵のテンションと音が常に充満し、その音と言葉だけで全てを捻じ伏せる!!そして恒例の化け直しでも、ギチギチの危険地帯になっているフロアになっているにも関わらず恒例の「土足で構わない、どんどん上がって来てくれ!」というMCからの「化け直し」、そしてラストは全てを祝祭するアンセムである「Happy Rebirthday To You」!!この日プレイした全8曲の全てがカモメの中でも最強の曲達だったし、汗まみれになりながら、シリアスでありながらも、ハードコアの祝祭を放つカモメはやっぱり最強のバンドの一つなんだ!!
・屍
そしていよいよ屍のラストライブが始まる。フロアは今までブッシュバッシュに足を運んだ中でも間違いなく一番の人口密度になっており、何もしなくても人を殺せるんじゃねえかってレベルの暑さと熱気に包まれていたし、そんな地獄みたいな状況の中で屍の最後を看取ることが出来るのはある意味では凄く幸せなのかもしれない。そして屍の最後のステージが始まった。完全に赤のみの照明の中でハットを被っている板倉氏、何だか異様な空気が既に充満しているけど、そもそも屍のライブって異様じゃ無かった試しが無いし、屍ってバンド自体がとんでもなく異様なバンドなんだった。そして最初は未音源化の新曲である「mortal music」からスタートという意外すぎるキックオフ。ディストーションの音や叫びは控えめに、コーラスの強いギターの音色と板倉氏の歌と言う、非常にポジパン色の強い楽曲であり、屍の今後の展開が最高に楽しみになる曲でもあったけど、そんな曲の空気はやたらと感傷的だったし、空間を支配する退廃的美しさに、既に溺れそうになっていた。続く「五月ノ花」は僕が個人的に屍の中でも特に好きな一曲だけど、美しい余韻を引き継ぎながら、今度はディストーションが炸裂しまくった音になり、本当に重い。屍の重さはチューニング云々の重さじゃないのは分かってはいるけど、この日の「五月ノ花」はとにかくおかしかった、全身が砕け散りそうな圧迫感があったし、「メッセージ」の不穏さと憎悪の激情の連続にも飲み込まれそうにもなっていた。
序盤から中盤にかけては代表曲も意外な曲もやりながらもセットであったし、正直に言うと空間自体の酸素が既に足らない状況になっていたし、完全に臨死体験的ライブではあったけど、それぞれの曲が最後の出番を終えていくのを見守りながら、板倉氏が何度も地獄の叫びを上げ、塗り替えられる絶望絵巻を呆然と立ち尽くして眺めていた。しかし、そんな空気から最初期ファストコア時代の曲に切り替わった時は本当にハイライトと言える瞬間だったし、「人間に生まるること難し・・」から「死ね!」の流れは最高過ぎたし、一気にモッシュする人も増えたし、「死ね!」での「死ね!死ね!!死ね!!!」のシンガロングは最高に楽しかった。屍は本当に異様なバンドではあるけど、同時にハードコアバンドとして素晴らしいバンドでもあるし、負のハードコアの極北に辿りついたバンドだからこそ、屍は代えのいないバンドであったし、最高の激情を鳴らしていた。ラストは「EXHAUST OF SILENCE」という未音源化の新曲。これが本当に素晴らしい曲であったし、屍のこれからの進化を間違いなく体現した大曲であった、この曲を聴いて、屍というバンドが終わってしまう悲しみを改めて実感するしかなかったし、まだまだバンドが終わるには早いとも思ったし、屍というバンドの先を見たかったと心から思った。最後は板倉氏がステージから身を乗り出して前にいたお客さんと何度も拳をぶつけているのが印象的だったし、山口氏がステージバックのフラッグを剥ぎ取り、フロアに投げた瞬間に屍と言うバンドは終わりを迎えたのだ。その後にアンコールもあったけど、僕は屍の残骸だと感じてしまって、「EXHAUST OF SILENCE」が終わった瞬間に、間違いなく屍は死んでしまった。最後の最後まで本当に凄いバンドだったよ。
・EDGE OF SPIRIT
屍が最後のライブを終えて、その直後にライブとか自分だったら絶対にライブなんてしたくなる状況だけど、でもEDGEはやっぱり違った。EDGEがトリを務めてくれて本当に良かったと思う。EDGE自体は観るのは大分久々になってしまったのだけど、頭に繰り出したキラーチューンである「Brotherrsss」だけで、EDGEはいつも通りの最強のライブをするだけだと分かった。このバンドのタフネスと強度は本当に凄くて、時にビートダウンもあり、とにかく極悪なツインギターの刻みで攻めまくり、あざとい位にシンバルを叩き付けるパワフルで情報量の多いドラムありと、メタルコアらしいメタルコアでもあるんだけど、EDGEが唯一無二なのって、本当に一貫したスタイルを守り続けながら、バンド自身はとんでもなく強くなっていくだけって所だと思う。shoさんはこの日もとんでもない声量の叫びをこれでもかと繰り出し、貫禄を撒き散らしながら、ステージに佇んだり、MCでは「ほんまここ酸素やばいね。死んだら労災下りるん?」なんて言って笑いを誘っていたけど、shoさん自身は屍に対するリスペクトをMCでは述べていたが、ライブでは感傷を全く感じさせなかった、いつもみたいに化け物みてえなライブをして、鬼気迫る表情でありながら、常に笑顔を浮かべていたりして、フロアも含めて今この瞬間のEDGEのライブを楽しもうと言う気持ちを感じたし、僕自身もそうだった。ラストに繰り出したアンセム「Glear」で完全燃焼のライブとなったし、EDGEがこのイベントのトリを務めてくれたお陰で、屍の解散を辛気臭く見送るラストでは無く、屍に対して晴れ晴れとした気持ちで「お疲れ様」って気持ちを抱き、そしてこれからも続いていくバンド達のこれからを追いかけたいというポジティブな気持ちが芽生えるアクトだったと思う。
こうして2014年9月27日の事を思い返しながらこのレポを書いたけど、実際にはまだ屍というバンドの解散に関しては実感も無いし、納得もいっていない部分がある。他にもやって欲しかった曲だって沢山あるし、新曲で始まり新曲で終わったセットだったからこそ、本当にまだまだ活動を追いかけたくもあった。勿論、屍も含めて出演した4バンドのどれもが素晴らしいライブをしていたし、最高に格好良いライブをしていた。それでも屍の終わりという意味で、この日は特別な日であったし、誰もが死ぬまで忘れない日になるんだと思う。屍には心からお疲れ様の想いとリスペクトを、そしてまだまだ活動を続けるCohol、kamomekamome、EDGE OF SPIRITにも大きなリスペクトを。