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■MAMA/ENDON


MAMA (ママ)MAMA (ママ)
(2014/09/24)
ENDON (エンドン)

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 これはノイズミュージックの新たなる革命だと言えるだろう。ある時期を境にENDONはとんでもない存在感を放つバンドとして一気に名を広めてきた。海外でのライブや海外バンドの日本公演のサポート、当初はヴァイオレンス極まりないパフォーマンスで話題を呼んでいたけど、去年からそんなパフォーマンスをしなくなり、代わりにより危険なノイズ煉獄を生み出して来た。そんなENDONの満を持しての2014年リリースの最新作はプロデューサーにAtsuo(Boris)、エンジニアに中村宗一郎を迎え、完全なる体制で制作された。リリースも最近は国内のバンドのリリースにも力を入れているDaymareからってのも大きな驚きとリアクションがあったのも記憶に新しい。



 さて今作でのENDONは見事なまでに洗練を遂げていた。ライブではギターと2人のノイズが繰り出す超絶音量の地獄のイズが凄まじかったけど、先ず驚くのは今作では音の輪郭が全てクリアになっており、音としては熾烈なるノイズ地獄ではあるけど、ライブと違ってそれぞれの音の輪郭を掴み易くなった事によって、ENDONといバンドの核に迫り易くなったと言えるだろう。第1曲「Etude For Lynching By Family」を聴けば明確だけど、ENDONというバンドは戦略的ノイズを展開してきたバンドであるし、ただ殺人的ノイズを鳴らしているだけのバンドでは無い。それぞれの音が細部まで本当に作り込まれて練り込まれているし、実に構成も複雑であったりする、でも単なる難解ノイズに走らないのがENDONである。ソリッドにとんでもない情報量のドラムが暴走し、よりリフが分かりやすくなったギターは2つのノイズと共鳴を起こし、破壊力だけで無く、熾烈さの中での構築美も見せる。ノイズコアとしての側面があるからこそ、それぞれの音が確かな役割を持ち、ハードコア的な肉体を解放し破壊するカタルシス、それにポストブラックのバンドにも通じる芸術性も手にしたのだ。第2曲「Parricide Agent Service」なんてENDONというバンドの間口の広さが見事に現れているし、洪水の様なノイズの波からギターリフのブラックメタル音階のメロディ、那倉太一氏のわめく様な叫び、4分にも満たない楽曲ではあるけど、一転突破のノイズコアサウンドは最高に気持ちが良いし、ノイズ云々じゃなくて、ハードコア的な側面から見て凄く格好良い!!
 第3曲「Acme Apathy Amok」は15分にも及ぶ今作でも一番の問題作であるが、しょっぱなはハードコアライクなノイズ煉獄の応酬で始まり、先ずは肉体を破壊。しかしこの曲はアンビエント的なアプローチも見せ、破壊的音量のノイズだけでは無くて、不穏に蠢くノイズという面でのENDONも見せる。ドローンな要素を持ちながらも、断片的に変化していくノイズの不気味さ。展開こそ大きく変化する訳じゃないけど、少しずつ形を変えながら膨張し始めていく音に恐怖を覚えるし、そんなノイズの奈落巡りの果てに最後は膨張した音が美しいビッグバンを発生させるといった内容。これはライブでは決して観れなかった一面であると思うし、音源だからこそ見せる事が出来た側面だろう。こうした美意識もENDONにはあったし、こうして明確に音源になって聴くとENDONの底の深さがより明確だ。第4曲「Pray For Me」は一転して今作でも一番の暴力性をノイズで放ち、もはや規則性も放棄し、崩壊寸前のスリリングな緊張感と共に、聴き手は奈落に飲み込まれてしまうだろう。そして個人的に一番気に入っているのは最終曲「Just Like Everybody」であり、この曲はノイズ・ブラックメタル・激情といった要素の全てを持つENDONでも最もドラマティックでメロディアスな名曲になっている。寒々しく吹き荒れるギターとノイズ、那倉氏の痛々しい叫び、着地点すらもう分からないけど、美しいインフェルノが目の前で発生していて、しかし聴き手には感傷を抱く余地なんて全く与えてくれないし、音の地獄巡りにただブチ殺され、最後には死しか残らない。



 変な言い方にはなってしまうかもしれないけど、ここまで間口の広く、ある意味でキャッチーな作品に仕上がるとは思っていなかったし、単なる熾烈なるノイズ煉獄では無く、練り込まれた音を展開する事によって、バンドとしての奥行きや深みも見事に体現した作品だろう。クリアに突き抜けるノイズの音は、まるでStruggle For Prideの「YOU BARK WE BITE」の様でもあるし、ノイズコアから多方面へカウンターを叩き付けるという意味に於いては、今作も同じである。ノイズの可能性と危険性を全面的に信頼しながら、それをガンガン使い、あらゆるエクストリームミュージックへと接近した今作の異様さは、本当に音の得体の知れない凶暴さと、ハードコアやブラックメタルともクロスオーバーする間口の広さ、その二つがアンビバレンスに共存している。だからこそ今作はどこまでも正しく異常だ。



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