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■Hurt/Syrup16g


HurtHurt
(2014/08/27)
syrup16g

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 2013年の五月に五十嵐隆生還ライブと言う名の実質Syrup16gの再結成ライブ。そしてその一年後の2014年の6月にに正式に再結成がアナウンスされ、そして突如としてアナウンスされた再結成後の完全なる最新作。この作品をどれだけの人が心待ちにしていて、どれだけの人が本当にリリースされるかビクビクしていただろうか。今作は2014年リリースの実に6年半振りのシロップの最新作であり、シロップが一度解散してからポストシロップなんて売り文句で色々なバンドが登場したりしたけど、その穴は誰も埋められなくて、日々の絶望や怠惰や諦めや嘆きや、それでも希望とか少しばかりの意地や愛とか、どこまでも人間臭い事を歌い続け、それは鬱ロックなんてゴミみてえな括りに括られたりもしたけど、五十嵐隆という天才であり、ゴミクズなギターロック界の冨樫みてえな立ち位置にいた天才メロディメイカーの最新作だ。先ずはこのアルバムがリリースされただけで、中学生の頃からずっとこのバンドを追いかけ続けた僕としては本当に心から嬉しい。



 ここからは本当に個人的感情ばかり入り混じってまともな紹介にはならないんだろうけど、今作で感じた事は本当に沢山ある。五十嵐隆という男は本当に素晴らしいソングライターである事、同時に五十嵐・中畑・北田の鉄壁の三人によるシロップというバンドはまだまだ未完成であるという事。これまで数多くリリースされたシロップの作品はどれも余計な装飾の無い、剥き出しの作品ばかりであったけど、どれもがとんでもない完成度の作品ばかりであった。解散前にリリースされた「Syrup16g」という作品の延長線上にある作品であるけど、今作を何度も聴いて感じたのは、シロップというバンドはまだ未完成であるし、何も完全じゃ無かったという事だ。正直に言ってしまうと今作はシロップのリリースしたこれまでの作品の中でそれぞれの楽曲の完成度のバラつきが出ている作品でもあるし、それはシロップと言うバンドが劣化したと感じる人も多いのかもしれない。でも僕個人としては、完成度自体はやっぱりどの曲も高いし、ただ新たに再結成してバンドを新たな地平に持っていくまでの試行錯誤と探り探りな感じがどうしても出ている。これは再結成後の完全で完璧な作品では無くて、
再結成から新たな一歩を踏み出す為の「経過」としての作品なのだろう。今作は解散前の延長にありながら、同時に五十嵐が再び原点に戻った作品でもある。そりゃ洗練なんて全く無い。
 ソリッドなギターリフとやたらとオリエンタルなギターフレーズの反復と、ニューウェイブ的なビートの構築理論、これまで以上に目立ち、テクニカルさを発揮し、よりメロディを司るベース、これまでのシロップらしさがありながらも、これまでにないシロップを感じさせる第1曲「Share the light」はよりダイナミックになった音の連続に驚くし、五十嵐が何も日和って難解ねえ事を証明する見事なまでにシロップらしい復帰宣言の一曲だろう。ギターロックの甘さとソリッドさを音と言葉に詰めて、相変わらずなどうしようもねえ感じも健在。第2曲「イカれた HOLIDAYS」はこれ以上に無い位にメロディメイカー五十嵐の才能が発揮された名曲で、諦めややるせなさを相変わらず歌っているどうしようもなさ、シンプルな構成と音、そして余計な装飾の無さ。ああ、これこそがシロップであるし、こんなシンプルなのに誰も真似出来ない事をこのバンドはやっていたんだなって改めて実感させられた。メロディアスでありながら動きまくるベースワークと、コーラス基調のギターワークでありながら、よりバンドとしての生々しさを手にし、同時にThe Cureモロな音がまたどうしようもなく愛おしくなる第3曲「Stop brain」、メロディアスな疾走感とソリッドな音とシンプルなコード進行による第4曲「ゆびきりをしたのは」。ここまでどの曲も良いけど、どの曲も解散前のシロップを越えたかと言われるとそれはNOだし、言うならば良くも悪くも解散前と変わっていない。よりプリミティブなバンドサウンドとしての生々しさを手にしているという点や、これまでに無かったアプローチも若干あったりもするけど、どうしようもなく危ういまんまだ。
 中盤のダウナーさとメロディアスさの融和した「(You will) never dance tonight」、こちらも80年代のニューウェイブ感を出している「哀しき Shoegaze」、ダンサブルなビートをとギターワークを機軸にしたダンサブルな「メビウスゲート」。ここらへんの曲は五十嵐のルーツにかなり接近した楽曲ばかりだけど、これまでのシロップの楽曲たちに迫る完成度があるかというと、それはNOだし、五十嵐自身が自らのルーツを再認識してまたシロップに昇華する為の楽曲なのかもしれない。だけど今作のリードトラックになっている第8曲「生きているよりマシさ」はこれ以上に無いシロップらしいネガティブさで突き落としながら、同時に無垢な愛を歌っていたりするし、余計なアプローチが無いからこそ、この曲のシンプルな輝きと、五十嵐の言葉の数々はどうしようもなく嵌るし、「死んでる方がマシさ」なんて一見諦めで全てを突き落としている様にも思える言葉だけど、でも結局は諦める事なんて出来ないちっぽけな意地やプライド、このもどかしくてクズな感じ、ネガティブな癖に、でもまだ希望捨てられねえ感じ、この感覚をシロップの他に表現できたバンドはいないし、「君といれたのが嬉しい」なんて言葉が素直に出てきてしまうのがもうずるい。そして驚くべきは終盤の2曲だ。「宇宙遊泳」なんて甘いメロディが疾走感と共に、彼方へと連れ去るロマンティックな曲だし、シロップのドロドロしたあの音では無くて、まるでSportsの様な浮遊感と疾走感と甘さと躍動感が未知へと導く名曲で、見事にシロップらしくないのに、なんでシロップにしか出せない音なんだろうか。そして最終曲「旅立ちの歌」なんて本当にらしくない。こんなやけぱっちだけど結局前向きな事を歌っちゃう五十嵐はらしくない!!なのに、本当にらしいからムカつく。五十嵐なんてウダウダしててバンド解散させて、新しくバンド組んだけど直ぐに解散して、結局中畑と北田いないと何も出来ないクズ野郎の癖にって思ったし、でもそんなゴミクズ野郎だからこの曲歌えるんだし、開き直りじゃなくて、やっと決めた覚悟を歌っているし、だからこそこの曲を聴いて俺はシロップは本当に戻って来たと確信した。



 このアルバムはこれまでシロップを聴いていた人からしたら、それぞれの想いがあるし、絶賛する人もいればdisる人もいるだろうし、僕を含めた元々シロップ好きだった人間の今作に対する感想なんて、シロップ知らない人からしたら本当にアテになんてならないから耳を貸す必要なんて無いけど、でもなんで五十嵐隆とかいうゴミクズニートの癖にメンヘラのカリスマになっちまって、武道館ライブまでやってしまったんだっていう男が率いるSyrup16gというバンドが、他に代えのいないバンドなのかは、今作を聴けば分かるだろう。結局絶望にも希望にも振り切れないゴミクズっぷり、その癖シンプルなアプローチをすればする程に際立つ天才的メロディーセンス、聴き手を突き放しもしないし、抱きしめもしない所。ああ、これこそがシロップなんだって思う。今作は始まりの作品だ。だからこそ歪だし、全曲名曲とは言えないけど、でも最高にシロップらしいシロップにしか生み出せなかった作品だ。結局僕にとってシロップは一生好きなバンドなんだと思う。



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