■weeprayロングインタビュー

weeprayというバンドは既存の激情系ハードコアやカオティックハードコアとは明らかに全てが逸脱しているバンドであると言えるだろう。
MIND TOUCH、PROUD OF GRACE、ENGREMXX、WOUNDEEP、DIVISION、、GEVOTAIS BORKEN、At One Stroke、Disconformity、メンバーそれぞれのキャリアを上げたら色々と凄いし、キリが無いけど、もうそんなのは最早関係無い。weeprayというバンドは必然として生まれた突然変異でしか無いのだから。09年に結成され、2011年と2012年にそれぞれシングルをリリースしているけど、そのシングルに収録されている曲を初めて聴いた時、僕は完全にweeprayというバンドに殺されてしまった。
ギターの音はブルータルでありながらドゥーミーでもあり、独特の和音の音階を活かし、ヒリヒリとした美しさと激しさを生み出し、音階が不明確でありながら、独特の重力を感じさせるベース、ミドルテンポのビートでベースと調和しながら独自のタイム感を生み出し時間軸を歪ませるドラム、そしてヒステリックな叫びとポエトリーを駆使し、全編日本語で異質なる世界を描き歌い叫ぶボーカル、その全てが既存のハードコアとは全然違った。凄く陳腐な言い方になってしまうけど、weeprayというバンドに対しては「○○っぽい。」という言葉は全く通用しない。勿論、メンバーそれぞれのルーツやキャリアが下地にあるのは当然だけど、それでもどうしてこんな音になってしまったのかという部分は考えても考えても余計に分からなくなる。しかしこれだけは確かに言えるのは、weeprayというバンドは人間の最も純粋で最も残酷な感情を表現しているバンドだって事だ。
そして2013年のwombscape企画である「瞼の裏」で初めてweeprayのライブを目の当たりにして、完全にトラウマになってしまった。足元に置かれた二個の白熱電球のみが照らすステージ上で繰り広げられていたのは、紛れも無くweeprayによる惨劇のノンフィクションであり、そして何かおぞましい物に取り憑かれているとしか思えないライブをメンバーの五人は繰り広げていたのだ。儀式の様でもあり、生々しいドキュメントでもあり、ズタズタに全てを切り刻む惨劇でもあり、ステージ上から降りかかる得体の知れない感情の渦と音に完全に飲み込まれていたし、気付いたら完全に取り憑かれてしまった。そしてその感覚はその後もライブを観る度により強くなり、weeprayのライブを体感するという事に依存し始めている自分自身すらいたのだ。あの現実と非現実の狭間に立ち尽くしている感覚を味わいたい。そんな感情をweeprayのライブで感じた人はきっと僕だけでは無いと思う。
来年にはOxGxDやThe DonorのリリースでノリにノリまくっているTill Your Deathから満を持しての1stフルアルバムのリリースがアナウンスされ、そして今年の10月と11月に、ギターの赤塚氏が在住する新潟、そして東京での初の自主企画である「死覚」を敢行する事がアナウンスされた。今回はそんなタイミングで当ブログでweepray結成時からのメンバーである笠原氏、赤塚氏、阿武氏、大野氏の四人にロングインタビューをさせて頂く事になった。僕自身がweeprayというバンドの生み出す『「愛」と「狂気」の世界』に少しでも近づきたい想いで色々と聞かせて頂いたけど、何から何まで既存の音やバンドと違う場所にいるweeprayの生み出す世界を、この記事を読んで下さっている皆さんに一日でも早く体感して欲しいという思いで一杯だ。
■先ずバンド結成の経緯を簡単にお願いします。
赤塚:2008年冬あたりから自分、笠原、大野でスタジオに入り始めました。
2009年に阿武くんが入って2010年から本格的にライブ活動を開始し、2013年に小室さんが加入して今の体制となりました。
それぞれ活動していたバンドで知り合って、友人として10年近い付き合いになりますね。「この人と一緒にやりたい」って思いで集まった感じです。
■weeprayというバンド名の由来や意味を教えて下さい。
赤塚:weeprayは造語ですが、「weep」「pray」、「wee」「pray」、「weep」「ray」って意味を持っています。
これらの言葉で連想するようなものを音楽にしていけたらと思いバンド名にしました。
■結成当時から現在の音楽性に至るまでを教えて下さい。また結成当時はどんな音を鳴らしてましたか?
笠原:結成当時から、楽曲制作の際にメンバー間にて共通意識としてあったのが、曲ごとにストーリー性を有する「壮絶な音楽」を生むことであり、それは今でも変わりません。
■メンバーそれぞれが元々別のバンドで活動していた人たちで結成されたweeprayですけど、それぞれのこれまでのキャリアやバックボーンはどのようにweeprayでは生かされていますか?
笠原:前身バンド活動時期と現在では、同類音楽でも細分化等が進んでいたりとシーンの状況が全く違うけど、各メンバー色んな音楽が好きだったり、また精通していたりするので、その分自然と多種にわたる格好良いバンド・アーティストと知り合えたり、共演できてとても刺激になっています。
大野:赤塚とは前進バンドから10年近く一緒に活動しているのでこのギターリフにはこのドラムパターンかなっていうのが自然と出てくるかなと思います。
他のメンバーもずっと面識があったのでやりやすいですね。
赤塚:昔から見ていてカッコいいバンド、メンバーと一緒にweeprayをやれているのが一番かなと思います。
阿武:今までの活動を踏まえてweeprayにおけるトータル的な楽曲の世界観を推し進めて表現できるようになったと思います。
■メンバーさんはそれぞれどの様な音楽に影響を受けていたりしますか?
笠原:特に影響を受けたのは1980年代~2000年代前半におけるジャパニーズハードコア・パンクシーンです。
バンド名をあげてルーツとして欠かせないのは「ANODE」であり、自分の中でいまだに”孤高の存在”です。
阿武:ハマって聴いてきた物全てからなんかしら影響は受けてますが特に90年代のV系から始まってdeath metal,hardcore,new school hardcoreが核になっています。
赤塚:今はハードコアを中心にデスメタル、ブラックメタル、ポストロックなどから影響を受けています。
音楽にハマるきっかけになったLUNA SEAなんかは今でも大好きですね。
大野:2000年前後のハードコアバンド、王道メタルバンド、王道エモ、ポストロック、インストなどに影響を受けています。
■楽曲はどなたが中心になって作られていますか?またどの様にして作られているでしょうか?
赤塚:楽曲はほぼ全てを僕が作っています。
基本的には曲をスタジオで合わせて、練り直しての繰り返しです。
■これまで発表した楽曲でも「彼岸花」、「滅びの碧 終末の詞」は長尺で複雑な楽曲構成の物になっていますけど、weeprayの楽曲がこうした大作になっている物が多いのはどうしてでしょうか?
赤塚:特に意識はしていません。
曲としての物語を考えていく上で「たまたま」長くなったというだけですね。
■2011年と2012年にシングルをリリースしましたけど、これらの曲はどの様にして作られましたか?
赤塚:曲については特にシングルに入れるために作ったわけではなく、納得いくような曲ができたのでリリースしました。
ただ、ジャケットや歌詞カードも工夫したくて封筒とポストカードというパッケージで作りたいと思い、Y/N Productionsの大和氏にデザインしてもらい、良い作品として具現化できたと思います。
■2013年から小室氏が新たに加入して5人編成になりましたけど、4人だった頃と比べるとバンドにどの様な変化が起きたと思いますか?
赤塚:楽曲的な部分で言えば、作曲にしてもアレンジにしてもバリエーションが凄く増えたと思います。やれることが増えましたね。
笠原:楽曲的な部分は勿論ですが、やはり最もキャリアを持つ小室さんが加入したことにより、メンバー間のパワーバランスが以前より整ったような気がします。
■weeprayは笠原氏のポエトリーとシャウトを織り交ぜた独特のボーカルスタイルが非常に特徴的ですけど、どうしてこの様なスタイルのボーカルになりましたか?
笠原:weepray活動開始当時は、前身バンドの活動時期に、興味があったが実現出来なかった音楽的表現方法であったり、作詞をしてみたいと思い取り組んでいました。
今はweeprayとしてやりたいスタイルはある程度は形になってきたかなとは感じていますが、やはり表現方法としての幅は可能な限り拡げていきたいとは常に思っています。
日本語詞に関しては、自分が堪能ではない外国語のフィルターをわざわざ通す事のむず痒さというか無意味さを避ける為と、メッセージのニュアンスを変える事なく歌えるようにと選択しました。
その際に、言葉をじっくり突き刺すようなイメージで届けやすいという意味でも、自分にとって都合のいい手段が今のスタイルではと感じます。あくまで、自分個人の感じ方ではありますが。
あと作詞に関しては、語感や言葉選びは大事にしています。
■weeprayはこれまでにリリースした楽曲の歌詞は非常にストーリー性があり、退廃的で耽美な空気を感じさせる物ばかりですけど、歌詞はどの様な事を意識して書かれていますか?また歌詞の世界に影響を与えている物とかはありますか?
笠原:一曲を一つのストーリーとして完結させている…というのは、確かにあるかもしれません。
それだけweeprayの楽曲は、一曲の中に多様な表情や景色を覗かせ、結果的に長編作なものが多いからです。
歌詞の世界に影響を与えている物は、日々日常において感じた物事を始め、生きていく中で出会す出来事や、世界規模・個人規模の大小問わず自分をとりまく環境の変化等を通して思う事などであり、それらを自分なりの解釈を通し、各曲で形は違えど「愛の歌」としてアウトプットする事を意識して書いています。
■また楽器隊の音も独特で、阿武氏の独特のベースの音やグルーブ、赤塚氏のギターの音と、かなり独自の拘りを感じる音になっていますけど、バンドの音自体に対する拘りがありましたら教えて下さい。
赤塚:個人的には機材が好きなので色々試していく中で今のような音作りになっていきました。
グルーヴってところで言うと、大野とは前身バンドも含めずっと一緒にやってきているので「それそれ」みたいな感覚が自然と出てきますね。
阿武:これからまた変化はしていきますが、低音という名の豚カツをさっぱりと醤油かけて食べるみたいな感じでいければいいなと思います。
■weeprayの音楽性は激情系ハードコアやカオティックハードコアと呼ばれる物ですけど、個人的にはそれらの音とはまた違う何かを感じたりします。weepray自身は自らの音をどの様に捉え、またどのような音にしたいとかはありますか?
笠原:自分が好む音楽やバンドがそうなように、とにかく強烈であり印象と記憶に強く残るような音が理想です。
バンド名はあげませんが、ライブを観たりしていて機材云々・聴覚的音のみではなく、とにかく「重い」音を鳴らすバンドっているじゃないですか?
自分達もその「重い」音を鳴らせるバンドになりたいですね。
赤塚:激情ハードコアもカオティックハードコアもルーツにはありますが、より重く、暗い独自の音楽を作っていきたいと思っています。
死ぬとか生きるとかを題材にしても恥ずかしくないような音を出していきたいです。
■weeprayはライブも非常に良いバンドだと思いますし、ライブで独自の世界を描いていると思います、ずばりweeprayがライブで表現したい物とは何でしょうか?
笠原:ライブでしか伝わらない空気感であったり、毎回違う「その場」感を特に大切にしているので、とても嬉しいです。
個人的には、世間で認知される全ての物事には、必ず着いて離れないものと常に感じている「愛」と「狂気」を最も表現したいと思っています。
阿武:weeprayというフィクションですかね。
■ベースの阿武さんのロングスカートとターバンの衣装だったり、白熱電球のみで照らすステージだったり、最近ではステージのバックにフラッグを使用していたりしていますけど、こうしたビジュアル的な部分のライブでのステージングに対する拘りを教えて下さい。
阿武:ステージに余計な色を置きたくないし、影がいつまでも付きまとっている感覚がいいですね。
赤塚:危機感や殺伐感といった日常ではあまり得られない感覚を感じてもらえたらうれしいです。
■今年に入ってからライブで新たな新曲を披露していますけど、その新曲も含め、これからの楽曲はこれまでとはまた違う物になっていくと思います。具体的にはどの様な変化や進化を遂げていくと思いますか?
赤塚:今までの曲よりもいろんな意味で攻撃的な楽曲になっていくと思います。
阿武:極端になるということだけを考えてます自分は。
■今後生まれる新曲はどの様な物になると思いますか?
赤塚:演奏していて自分たちが高揚することが勿論ですが、観ている方たちを退屈にさせないようなバリエーション豊かな楽曲を発表していきたいと考えています。
阿武:さらにメンバー個々のルーツを出していきたいのでより不可解なものになるかと思います。
■来年にTill Your Deathからいよいよフルアルバムがリリースされる事がアナウンスされましたが、それはどんな作品になると思いますか?
阿武:前述の不可解さが伝わるはずです。
赤塚:アートワークなども含めて特別な作品になると思っています。
■来年のアルバムリリースでweeprayを取り巻く状況はどの様に変化していくと思いますか?また来年以降のweeprayはどんな活動をし、どんなアクションを起こしていくのかも教えて下さい。
赤塚:まずはアルバムリリースに向けて尽力していきたいと思います。
発売以降は今まで世話になったみんなに恩返しと言うか「いいアルバムができた」って言いに行きたいですね。
阿武:とにかく聴いてもらいたいので、色んな人達を巻き込んでライブなりなんなりアウトプットしていきます。
■10月の新潟での自主企画と、11月のHexisを迎えての東京での自主企画を控えていますけど、自主企画に向けての意気込みを教えて下さい。また今回の企画の出演バンドはどの様な事を意図して出演を決めましたか?
阿武:「死」を「覚悟する」という意味で「死覚」なんですが、まさにそんな感じです。
あと、見えてないところでやべーこと起きてるんだぜ!みたいな「死角」って意味合いも込めてます。
大野:出演バンドに関しては、自分たちが好きなバンドとか、見ないと損するようなちょっと「死角」にいるバンドに出てもらってます。
みんなに知ってもらう機会になればうれしいなと思います。
赤塚:地方で行う企画にしても、地方の人たちには東京でバリバリやってるバンドを体験してもらいたいし、東京から来るバンドにも地方のアツさみたいなものを感じてもらえたら最高ですね。
■weeprayはwombscapeやisolateといったカオティック・激情の新たなる流れを正に生み出そうとしているバンドとの共演が多いですけど、この様なバンドとどの様なアクションをweeprayで起こしていきたいと思いますか?
阿武:纏まって活動しなくてもお互い自然と集まってくるって感じになってますが、予定調和なことは面白くないですし、「え!?」ってなるような事をしたいです。
赤塚:wombscapeとは共同企画として「心象共鳴」を開催しているので、また積極的に開催できればと思います。
■他にも共演しているバンドや交流のあるバンド、またweepray自身がこれから共演したいと思うバンドはありますか?
笠原:金沢のThe Donorはいつも刺激を与えてくれるし、京都のBLOODBALLやW.D.L.Kは共演時にヤラれました。群馬のricoltなんかもいつ観ても格好いいですし、来年レーベルメイトになるREDSHEERも早く共演したいです。
ここ最近の共演では、ENDONとTRIKORONAが危険過ぎて最高だったので、是非また共演したいです。
今後の初共演で、特に楽しみなのは自主企画「死覚」を10月に新潟で開催しますが、そこに出演していただくANCHORですね。
翌月11月にも東京・国分寺でHEXIS Japan Tour Finalを「死覚」で企画するのですが、そこに出演してもらう大阪のSTUBBORN FATHER、また地元大阪で共同企画「孔鴉」をオーガナイズしているSeeKもど真ん中に好きなバンドです。
あと個人的にハードコアバンド・リスナーに特に触れて欲しいのが東京Pressence of Soulです。こちらも11月の東京・国分寺で開催する「死覚」に出演していただきますのでこの機会に是非観て欲しいです。
阿武:立川のmilitarysniperpinfallも数年前に一緒にライブして以来、新潟でも東京でも一緒の機会が多いですね。
あとは、別のジャンルと言うか「地下」という共通点でノイズやテクノの方達とも一緒にやれたらいいなと思います。
■weeprayが描こうとしている世界とはずばり何でしょうか?
笠原:『「愛」と「狂気」の世界=現実』です。
■最後に自主企画や新作リリースも含めて、他の今後の展望や、weeprayがどんな活動をして、どんなバンドになっていくかなど、何かありましたらお願いします。
赤塚:まずは2015年のアルバムがいろんな人に渡って、気に入ってもらえればと思います。
良い作品が出来れば自然と色々な所で演奏する機会も増えると思いますし、色々な場所で、色々な人にweeprayを「体験」してもらいたいです。
今でも沢山のサポートをしてもらってますが、共感してくれる方々ともっと大きな『「愛」と「狂気」の世界』を作っていけたらいいですね。



10月に新潟での自主企画、そして11月の東京での自主企画はデンマークの暗黒ブラッケンドハードコアであるHEXISを迎えてのライブとなる。今ノリにノリまくっているisolateも出演し、先ほどのインタビューでも名前が出ていた大阪のSTUBBORN FATHERと、Pressence of Soulという面子で国分寺を闇に沈める。この自主企画を機に、まだweeprayに触れた事が無い人は是非ともweeprayの世界に飲み込まれて欲しい。

2014/10/12 at 新潟WOODY
weepray presents "死覚"
~isolate 1st Full Album ヒビノコト Release Tour 新潟篇~
isolate
ANCHOR
GOOD FELLOWZ
さよなら暴君
weepray
Adv 1,500 / Door 1,800(+1D)
Open 18:00 / Start 18:30

2014/11/22 at 国分寺Morgana
weepray presents "死覚
HEXIS Japan Tour Final
HEXIS
isolate
Stubborn Father
Presence of Soul
weepray
Adv 2,000 / Door 2,500(+1D)
Open 17:30 / Start 18:00
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photographer : ミツハシカツキ
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