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■ZOTHIQUE/ZOTHIQUE

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 今年はDRAGGED INTO SUNLIGHTの来日ツアーのサポートも努めたZOTHIQUEであるが、前作からたった一年という、この手のバンドじゃ随分と短いスパンで新作をリリース。今作は2014年リリースの2ndアルバムであり、今作は現在の新編成でレコーディングされているけど、前作よりも更にサイケデリックな成分が増幅し、更には音の破壊力も強化され、更にはZOTHIQUEが単なるドゥーム・スラッジを超えて自らにしか鳴らせない音を手に入れた傑作だ。



 今作は3曲30分というより大作志向の作品に仕上がっており、JAH EXCRETIONをベーシスト兼ノイズ担当としてメンバーに迎えて製作されたらしいけど、前作ではサイケデリック成分を持ちながらも、あくまでもハードコア経過型のドゥームとしての破壊力を尊重し、サイケデリックなシンセの音をあくまでもアクセントに使い、ヘビィなグルーブとリフの破壊力を前面に押し出していたけど、今作では完全にサイケデリックな成分をここぞとばかりに出しまくっている。大作志向になった事によって、バンド名からも分かる通りクトュルフ神話の世界観に影響を受けているだろう禍々しいサウンドもより際立ち、電子音と爆音のバンドサウンドが織り成す異次元サウンドはとてつもない進化を遂げた。
 いきなり這い寄る混沌なベースとシンセの電子音が異様な空気を生み出し、錯綜しまくるサイケデリックなシンセの音と、引き摺りまくったビートとリフによるグルーブに悶絶必至の第1曲「The Shadow Of Linxia」から今作の異様さが伺える。殆ど推進力を無くし、ドロドロと脳髄を掻き回す重低音と電子音の異常過ぎるセックス。簡単には絶頂させずに、訳の分からない焦らし方を聴き手にしかけまくり、でもギターリフとボーカルは見事に巨根絶倫だし、それでねっとりと攻めていく。前作でもそうだったけど、ZOTHIQUEというバンドはバンド自体の音の破壊力がそもそも凄いし、今作でのより混沌を極めるノイズと電子音の数々は、低域を攻めまくるバンドサウンド、高域を犯し尽くすシンセという二つの方面からの蹂躙っぷり、しかし終盤になると一気にBPMを速くして、前作でも見せていた激ヘビィなハードコアサウンドで高速抜き差し、でもよりノイズが混沌を極めているし、とてつもなく強いリフとビートが暴走しまくり、所構わずに犯しまくる。こうしたハードコアな格好良さこそZOTHIQUEの魅力だとは思うけど、それがより禍々しさを手に入れているし、本当に全部の音が精液を撒き散らしまくりながら全てをグチャグチャに壊していく。
 個人的に驚いたのは第2曲「Hypnotic Kaleidoscope」だ。まるでCorruptedの「月光の大地」を思わせるアコギの荒涼とした物悲しい旋律と、裏で揺らめくノイズ。ディストーションギターに頼らなくても今のZOTHIQUEは根本として重い音を鳴らせるバンドになっているし、そして女性ボーカルの謎の歌が聞こえてくる。ギターの音色が歌に合わせて牧歌的になっているし、恐らく元々あった楽曲を歌っているのか、それとも普通にオリジナルの曲なのか、そもそもサンプリングしているのか、それは分からないけど(そもそも今作には何のクレジットも無い)、アコギの調べが終わり、静かに余韻が続いていたと思ったら、全てを切り裂くヒステリックな叫びが幾重にも響き渡り、そして非常階段かよってレベルのノイズと終わり無く叩きつけられるドゥーミーなリフの応酬。まるで、ほんの微かな救いすら絶望で犯してしまう様な、そんな凄さを個人的に感じた。そして最終曲「Amoy」は正に現在のZOTHIQUEの真骨頂。全盛期Electric Wizardに匹敵するうんじゃねえかってレベルの漆黒で、凄まじく重くて、酩酊しまくっている音しか無いし、バンドの音自体は非常にシンプルだったりするにも関わらず、狂騒の電子音が、そんな漆黒の音を更に精液で塗りたくる。終盤のシンセソロ(?)は今作を象徴する圧巻の物であり、終わり無くシンセがぶっ壊れた音を放出しまくり、最後の最後は全てが形を失い、単なるノイズの塊となってしまっている。



 バンドの方向性をより明確にし大胆に変化させた今作だが、その決断は大正解だったと言えるだろう。前作も凄まじい作品ではあったけど、よりドロドロと蠢く音は唯一無二の領域に達しているし、サイケデリックドゥームとしか言えない混沌を生み出している。何よりも今作の音は不協和音ばかりなのに、凄まじくトリップ出来るのだ。その酩酊の果ての果てにある絶頂感覚は素晴らしいし、ドゥームとかハードコアとかノイズって枠組みに収まらない得体の知れなさをZOTHIQUEはこれからも生み出していくのだろう。今作も見事な傑作。



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