■Could You Be Loved/HIMO

北新宿ハードコアを名乗る超強面ハードコアバンドであるHIMOの2014年リリースの3rdアルバム。リリースは自らのレーベルであるKITASHINJUKU RECORDSから。今作は全25曲で17分という相変わらずの超ショートカットチューンのみの内容であり、HIMO独自の超ショートなサウンドスタイルは相変わらず健在。しかしよりダークかつドープに研ぎ澄まされた音は更にとんでもない事になっている。
そもそもHIMOは既存のハードコアから完全に逸脱しているバンドである、超ショートな楽曲しかないにも関わらずファストさは全く無し、変則的なキメを多様しまくり、ドープなテンポで繰り出される音の暴力。ルーツとなる音が本当に解読不可能。ポストハードコアやアンビエントや果てはヒップホップの流れもあるとは思ったりもするけど、その消化された音は最早HIMOでしか無い音。世界中で他にHIMOみたいなバンドがいるかと問われたら僕は即刻「そんなんいねえ!!」と答えるだろう。しかも徹底したHIMOスタイルを貫きながらも、サウンドの要素は実に多彩であり続けるし、雑多過ぎる音の要素を持ちながらも、それをHIMOスタイルとして統率し、作品全体でカビと精液と泥臭い生々しさを持っているし、それは人間の精神を抉る音であり言葉だ。捲し立てるボーカルとポエトリーによるボーカルスタイル。殴る様なドラムとベースのビートの連続、アンビエントもカオティックも使いこなす空間的ギター。HIMOを構成する全ての要素がそもそもとしておかしいのだ。隙間だらけの音なのに、一発一発の音が暴力でしか無いし、強烈な密度と粘度と濃度を持つ。今作ではこれまでの作品以上に音が鋭利に鋭く録音されているのも大きいし、合間合間のインタールード的な楽曲も作品の中で大きな効果を持つ。より音楽性を膨張させ、アンビエントなギターの音が増えたりもしているし、よりサウンドに無駄な音が無くなっている。よりジャジーな旋律を楽曲に取り入れているし、時にはポストロック的なアプローチもあったりする。でも基軸はジャンクな顔ティックハードコアである事は変わらないし、より多くの要素をこれまで通りのショートな楽曲に詰め込む事によって、情報量が更に凄い事になっている。その音と言葉の情報量は1枚80分近くの大作志向の作品に並ぶだけの物であるけど、HIMOには余計な冗長さを必要としない。この圧倒的かつ膨大な音をHIMOなら17分で放出してしまう。
一曲一曲を細かく紹介するなんて最早野暮だとすら思う。今作は全25発のHIMOという暴力であり、ラブソングであるし、たった17分間の濃密過ぎるセックスでしかない。でもHIMOは決してリスナーを乱暴に犯したりはしない。異形過ぎる音でリスナーを完全に虜にして愛するのだ。地下室の匂いを充満させた音の連続の中で、際限無く繰り返される絶頂。無尽蔵に精神と肉体を今作の音は解き放ってくれる。それをどう受け止めるかは人ぞれぞれであるが、HIMOは誰しも平等にHIMoサウンドをぶっかけるだけだ。だから最高にドープでイルで格好良いし、これこそが北新宿ハードコアだ。