■BHD JAPAN TOUR 2014(2014年12月13日)@新宿Antiknock
・SeeK
昨年の孔鴉以来実に一年振りのSeeK。ギターの方が脱退されて、ギターレスツインベースというもう色々おかしい4忍編成で活動をしているけど、はっきり言うと「ギターなんていらんかったんじゃ!!」って思いたくなるライブだったと思う。6弦ベースのNoguさんはベーアンじゃなくてギターアンプにベースを繋いでいたし、出している音は完全にギターリフの音であり、同時にベースならではの重低音も放出。勿論5弦ベースのyama氏のグルーブ溢れる重低音はSeeKのサウンドの基軸になっているし、最早変態編成であるにも関わらず、普遍的なバンドとしてのアンサンブルとフォーマットが完成しているのだ。今回はフロアでのライブだったけど、薄暗い照明の中で放たれるSeeKの音はやっぱり強烈だし、未音源化の新曲群もよりムダが無くなり、重音に次ぐ重音によるリフとグルーブとビートの圧倒的筋力を活かしまくったサウンドスタイルで、より原始的なハードコアバンドとしての強度がなんだか凄い事になってしまっているじゃないか!!何よりもSeeKの凄さってボーカルであるsuguru氏さと僕は思う。あのカリスマ溢れる佇まいもそうだけど、常に全力で雄叫びを上げまくり、爆音すら物ともしない異常な声量で日本語で言葉を紡ぐボーカルはSeeKの激情の核になっているし、その叫びには常に圧倒させられる。この日は4曲のセットだったけど、ラストの「崇高な手」の目まぐるしいビートとリフとグルーブと叫びの四重奏はSeeKというバンドが他にいないヘビィネスと激情を放つ事を証明し、轟音と重音を極限で爆発させまくっていた。SeeKというバンドが本当に大好きだし、大阪でまたライブ観るけど、このバンドはもっと東京の人にも知って欲しい、東京どころか他のどの場所にもSeeKみたいなバンドは本当にいないから。
・BHD
曲をプレイしながらマイペースなセッティングが終わり、そんなリラックスした空気でライブが始まった台湾のポストロックバンドであるBHDであるが。ライブで初めてBHDで触れて、台湾のポストロックはまた独特の発展を遂げている事を感じた。編成自体は普通にオーソドックスだし、ステージの下手に立体型の白いオブジェみたいな物を設置し、そこに映像が映し出されるというVJのスタイルは中々独特であるけど、その音も兎に角独特だ。フォーマットとしては普遍的なバンドスタイルで時にサンプリング音を用いる感じえはあるけど、バンドの音の緊張感がまた独特の物である。少しヘビィでソリッドなギターフレーズの歪みと、もう一本のギターがオリエンタルなメロディを用いながらクリーンな美しさを奏でる。しかし不変的であると思わせて、既存のインスト系ポストロックとは全然違うアプローチをBHDはしている。メロディには確かなエモという概念があるし、その構成もドラマティックでありながら壮大では無く、日常的な普遍的体温をアンサンブルで生み出している。リズム隊の音がどことなく性急でありながら、アンサンブルが生み出すのは緊張感と快楽性の見事なバランスだ。単純に全ての音が気持ち良いし、時に不気味な音色を奏でているし、でも凄く人懐っこいという矛盾も自然と成立してしまっている。それはバンドメンバーがリラックスしたライブをしていたのもあったかもしれないけど、でも音の快楽に静かに身を委ねていたらライブはあっと言う間に終わったし、その天国でも地獄でもない、日常的熱量の世界はBHDだけの物だった。台湾ポストロックは確実に日本とは違う進化を遂げていたし、その音に酔いしれていた。
集客は決して良かったとは言えないけど、BHDに対してアットホームな空気で行われた今回のライブはオールナイトというのもあって、独特の緩さがアンチにあったし、でもSeeKとBHDが見事なライブを繰り広げていたから良かった。日本と近い地でありながら、僕からしたらまだまだ未知な部分が多い台湾の音に触れる事が出来たのも嬉しかったし、何よりも久々に観たSeeKは前以上に凄まじい重音を放っていたのだ。