■EXTREME MAD TERROR -year end sp 2014-(2014年12月27日)@新松戸FIREBIRD
・weepray
weeprayというバンドのライブを2014年も何度も拝見させて頂いたけど、weeprayはより分からなさばかりが目に見えてくるし、なのにそのライブは凄く儀式的でもあり、暴力的でもある。言ってしまえば出処と終着地の見えなさがweeprayの持つ不気味さの全てなのかもしれない。ステージングも音も全て完成されているし、演劇性を持ちながらも、同時にライブとしてのヴァイオレンスさも兼ね備えているのが今のweeprayのライブだし、ギターのフレーズとかは一々かなり耳に残るのに、全然キャッチーさを感じさせてくれない。正に5人の奇才が集結しているからこその奇跡的なバランスが生み出す違和感がweeprayに感じる「孤高」の部分なのかもしれない。しかし何度ライブを観てもweeprayの確信に全く迫れた気がしないのだ。ブルータルな音の暴力もあるし、カオティックハードコアの混沌の坩堝もある、練り込みまくったストーリー性溢れる音楽の持つドラマティックさもある、ビートダウンで「ここでモッシュしなきゃいつするの?」なパートもある。でもそれでも分からなくなる。それは白熱電球だけの照明を始めとしたステージセットがあるからでも無いし、儀式的なライブをするからでも無い。膨大な情報量の音と言葉が描くのは間違いなく愛の歌でしか無いのだけど、それはきっと人間のもっともっと深淵にある深い業だからこそなのかもしれないし、きっとweeprayが描くのはそんな世界なんだろう。ポエムみてえな感想になってしまったけど、この日のライブを観て改めてそんな事を思ってしまった。
・Red Ran Amber
激速の轟音とは正にこのバンドの為にあるのだと思う。最早RRAはグランドコアという括りで語るのは不可能なバンドだと思う。いや編成だったり楽曲自体は紛れもなくグラインドコアなんだけど、このバンドは既存のグラインドコアから外れまくっているのだ。新作も勿論素晴らしいの一言であったけど、正に轟音のシャワーが光速で降り注ぐような音は決して既存のグラインドコアには生み出せない音だと思うし、メンバー全員超絶技巧で突っ走りまくっているのに、不思議と一体感しか無いサウンドと共にメロディアスでありながらカオスであり、そしてブラストしまくるグラインドさ。曲間なんてほぼ無しでノンストップで繰り出される暴走特急サウンドでありながら、パワー重視なだけじゃないし、不思議と神々しさすら感じてしまうのだ。そんなグラインドコアなんてRRAの他にいないと思うし、たった20分にも満たないライブで突き抜ける瞬間しかない。RRAのライブはカタルシスにカタルシスを重ねに重ねた末に生み出されるたった3人の激攻の頂上決戦だ。まるでチップアスリートのスーパープレイが連続で流れていく様なライブは本当に妙な気持ち良さがあるし、興奮しかない。だからこそ
RRAは単なるグラインドでは終わらないのだ。
・REDSHEER
もう2014年に初ライブをしたとは思えないバンドだし、かなり精力的にライブを重ねてきて、僕自身もREDSHEERのライブは追えるだけ追って来てはいたけど、本当にこのバンドの進化は止まらない。頭に恐らくライブでは久々にプレイしたであろう「Gloom」のノイジーなアンビエントさと不穏さを皮切りに攻めに攻めまくるライブだったと思う。いやREDSHEERのライブは時に引きの部分もありながらも常に全力で攻めてしかいないし、ダークサイドカオティックハードコアとして持てる武器は全部持っているバンドだと思う。ラストにプレイしたここ最近プレイしている新曲「Yoru No Sotogawa」は山口氏が刻みのギターの伝家の宝刀を炸裂させまくった正に最強の攻めの一曲であるし、でも他の楽曲ではしっかりとメロウに胸を掻き毟るコードで切ない激音という矛盾してなさそうで、他にそんな音を出せるバンドなんてあんまりいないんじゃないかって音を炸裂させている。とにかく爆音で直情的でありながら、侘び寂びに溢れ、腹に来るベースと耳を貫く鋭利なギターフレーズと脳を叩き割るドラムその三つで完全に完成されたカオティックハードコアをREDSHEERは放っているし、この日のライブもそうだった。2014年は本当に何回もREDSHEERのライブを観たけど、こんなバンドは他にいないのだ。恐らく初の新松戸でのライブだったとは思うけど、どんな場所でもREDSHEERはREDSHEERでしかないのだ!!
・THE CREATOR OF
トリ前はTCO。この日は結構久々のライブとなったのだけどTCOのライブでのアベレージの高さには毎回毎回本当に驚かされる。4人編成になってからの音も早くも板に付いていた様にもなって来たし、音の数が減っているからこその、引き算の美学のアンサンブルがより際立った物に今のTCOはなっている。前半のセットは「You Are」、「Wind Up」と歌物の2曲でいきなり攻める。今のTCOはそれこそ分かりやすい攻めの音を放出している訳じゃ無いのかもしれないけど、リフで攻めなくてもレギュラーチューニングでもヘビィな音を生み出せるという事を分かっているし、熾烈さでは無くて構築する音と世界で説得力十分に聴かせるバンドになっているからこそ強い。後半に新曲もプレイしていた、それは4分半程度のインストの楽曲だったけど、それが「LIGHT」以降のTCOの新機軸を確かに感じさせる楽曲になっていた。よりアンビエントに音数を減らした楽曲は情報量こそ決して多くないのかもしれないけど、揺らぎをより聴かせる音になったのは更に大きな進化だと思うし、爆音でカタルシス溢れる音では無いのかもしれないけど、その酩酊世界は耳から体にスっと入り込んで来て、じわじわと浸透して来た。そしてラストはお馴染みの「Acoustic」で締め。この曲は秩序から混沌という図式の楽曲だし、その両面性が本当にハマるし、TCOのライブのラストはやっぱこれだ。久々のライブにも関わらず御大の貫禄は余裕で健在。新曲も素晴らしかったし、更なる進化が楽しみだ。
・NoLA
そして半年振りにNoLAを観たけど、もう何回も同じことしか言ってない気もするけど、NoLAは本当にライブを観る度に凄くなっているとしか思えない。今回はリリース間近な新作の楽曲中心のセットだったけど、もうこのバンドはメタルだとかハードコアとかそういった枠組みで語らせない真のエクストリームミュージックを放つレベルになっていたと思う。ツインギターがひたすらに重すぎるリフをブチかまし、タイトに爆走するドラムが全てを薙ぎ払い、Takeruのボーカルもキレまくっている。もう何というか交通事故みたいな音しか出していないし、勿論楽曲自体は練り込まれているんだけど、複雑怪奇さをもっとエクストリームな快楽へと発展させたのが今のNoLAなんじゃねえかって思う。特にこれまでの楽曲とかはそうなんだけど、凄い誤解を招きそうな言い方にはなるけど、一つのお祭り感すら今のNoLAにはある。勿論暗黒なカーニバルではあるんだけど、パフォーマンスだったりとかそういったのを含めてもっと分かりやすく盛り上がれるバンドになったとも個人的に思ったりもするのだ。それは鍛え上げられた初期の楽曲を繰り出す終盤の展開を見てより強く思ったし、もっとシンプルにかつ強靭になった今のNoLAは本当に強さと格好良さしか無いのだ。
正にニューマッドシティこと新松戸に相応しい夜になったと思うし、こんなメンツを集めたNoLAのmakino氏は流石だと思う。新松戸という普段は全く行かない街でのライブではあったけど、本当に熱いライブは場所なんて全く関係無いと僕は思うし、この日は本当に新松戸まで足を運んで良かったと心から思う。FIREBIRDも初めて行ったけど本当に雰囲気も音も良いハコだし、また機会があったら是非とも足を運びたい。