■Ceremonia de Atadura de Manos/Tarsius Tarsier

3LAのレーベル第6弾リリースはスペインの若手ブラッケンド・ネオクラストであるTarsius Tarsierのデビュー音源。スペインはIctus、Ekkaia、Madame Germen、Okbanといったバンドを過去に輩出しているし、ネオクラストの一つの大きな流れを生み出した国であり、Mario(ex-El Ego)、Ivan(ex-Ictus)によって結成されたKhmerがネオクラストの先の新たな音を生み出している現在、それらの流れを受けて登場した若手であるTarsius Tarsierは2013年結成とキャリア自体は全然短いけど、Ivanの目に止まり、彼の所持するスタジオで本作をレコーディングした。アートワークはMarioの手による物で、こうしたスパニッシュネオクラストの先駆者の熱いサポートもあり、3LAを通じ彼等はこの日本にも上陸した。
その音楽性は正にスパニッシュサウンドとしか言えない物だろう。ブラッケンドハードコアではあるけど、Khmerがそうである様にあくまでもブラックメタル要素はふりかけ程度で大きな比重は占めていない。その根底にあるのはやはりスパニッシュネオクラストであり、楽曲はどれもメロディアスでメロデス×クラストなスパニッシュネオクラストの伝家の宝刀なサウンドを基軸にしている。でもそれらをなぞるのでは無くて、それを消化した上で現代の音として吐き出しているし、それがカオティックやブラッケンドといった要素にも繋がっているのだろう。
しかしながら全曲に渡って繰り広げられる疾走感は最高に気持ちが良い。第1曲「El Desprecio」がそうなんだけど、メロディアスなブラックメタル的叙情的フレーズからクラスティな疾走パートまで不純物ゼロで突っ走る感じ。音に荒々しさこそあるけど、随所随所の細かいフレーズは確かに作り込まれているし、第2曲「Garganta y Bengala」は泣きメロを活かしながらも、疾走する哀愁はグッと来る。一方で激烈なリフを痛烈に叩きつける第3曲「Tara」といった曲もあるけど、どの楽曲にも言えるのは一つの要素に傾倒するのでは無くて、それらを活かすアレンジやアイデアがしっかり存在しているという事だ。彼等自身のルーツが非常にクロスオーバーだと思うし、ネオクラスト自体がクロスオーバーした音楽である事を考えればそれは必然的だとも言えるけど、それを一本の大きな筋を通してアウトプットするセンスが見事に光っていると思う。ネオクラスト感全開な今作でも屈指のキラーチューンである第4曲「Ciénaga」とスパニッシュ印な哀愁のメロを獰猛に放つ第5曲「Espuela」の中盤の二曲は今作でも大きな肝になっていると思う。その勢いは最初から最後まで衰えずに全8曲が一瞬で終わってしまうし、本当に聴いていて痛快だ。最終曲「El Ruido de Morir」では後半から一気にビートを落としてのアトモスフェリックなアプローチはバンドのこれからの進化に期待をしたくなる物だし、若き衝動と才能の新たな息吹だ。
今作は勿論3LAにて購入出来るし、昨年末にリリースしたHexis国内盤に続き、新たなハードコアの才能と可能性を発掘しリリースする3LAらしいリリースとなっただろう。まだまだ音は発展途上ではあるかもしれないけど、荒々しいサウンドの中で輝くメロディセンスとアイデア、若手だからこその新たな可能性をこのバンドから感じるし、スパニッシュネオクラストやブラッケンドハードコア好きには是非チェックして欲しい作品。