■Realising Media presents 変の極み 壱(2015年4月19日)@渋谷CYCLONE
・Arise in Stability
ライブは一年振り位に観る事になったアライズだけど、いやいや本当に凄まじく進化を遂げていたと思う。セットは全4曲中3曲が新曲という強気で攻めのセットだけど、それも納得のライブだったと思う。相変わらずタッピングの嵐に、複雑怪奇な楽曲構成に、変拍子の嵐に、詰め込みに詰め込みまくった圧倒的情報量の音が否応なしに入り込んでくるんだけど、新曲はどれも凄くてバンドが完全にネクストレベルに突入していたと確信した。長尺でプログレッシブで超絶技巧の連続という点はこれまで通りだけど、よりストイックでタイトなサウンド、激情要素に更に踏み込んでいたりもしたけど、完全に聴き手を突き放しに来ていた。いや音やフレーズのパーツパーツはキャッチーであったりとか暴れられる要素があったりもするんだけど、それらの組み合わせ方がよりおかしくなっているし、違和感が仕事しまくる音なのに、そこに必然性が存在している。ラストこそアルバムの楽曲をプレイしたけど、それでも完全に突き放しつつ、完全に異形さを魅せるモードだったし、今回プレイした新曲達の音源化が非常に楽しみである。
・Vision of Fatima
今回全く予備知識無しで観るVision of Fatimaだけど、プログレッシブさだけが変態じゃないって改めて実感させてくれたバンドだった。今回の面子の中では一番カオティックハードコア成分が強いバンドであり、そりゃ変拍子も多数だけど、それ以前に不協和音だらけのカオティックサウンド、耳がおかしくなりそうな不条理さを音にしたみたいなフレーズ、演奏こそタイトではあるけど、それ以上にダークな狂気がバンドから伝わってきたし、カオティックというよりも寧ろサイケのバンドでギタボやってそうな黒髪ロン毛前髪パッツンなボーカルの人の完全にいかれているとしか言えないパフォーマンスも含めて正にダークサイドカオティックハードコア!その手の音が好きな人にはガッツり刺さりまくるバンドだったけど、それ以上にダークさと狂気によるある意味ではアート的でもあるライブは息を呑む物があった。
・bilo'u
最早唯一無二の領域に到達した音楽から狂気の追求を重ね、もしくは中国雑技団かよってレベルで超絶技巧のびっくり人間ショーを繰り出す彼等。2ndリリースからはモッシュも許さない完全に人を突き放しまくった狂気がメルトダウンしたライブを繰り出し、完全に観る人を突き放すライブしかしていなかったけど、今回はまさかまさかの1stの楽曲中心のセット。しかしそれでもbilo'uだ。テクデスとかプロぐれメタル云々じゃ全く片付けられないサウンド。今回はみんなが楽しみにしていたであろう1stの楽曲をプレイという事もあってピットが出来ていたし、クラウドサーフする人までいたりもしたけど、それでも変拍子に変拍子を重ね、和音階を駆使しまくったbilo'uサウンドはやっぱり健在。実際に方法論こそ1stも2ndも一貫しているし、2ndはそれが極端な程に極めまくっていたから異形だったけど、元から彼等はリスナーに寄り添うバンドじゃない。そりゃビートダウンパートではモッシャー大量発生ではあったけど、それでも地獄のプログレサウンドに悶絶するばかりだったし、相変わらず演奏上手すぎて気持ちが悪い。彼等はハナっから形骸化する事に全力でノーを叩きつけている。だからこそ異物感すら快楽に変える狂気の研究者達でしかない。
・Hone Your Sense
今回のイベントの中では最もストレートなサウンドだった彼等。しかしストレートなメタルコアサウンドの馬力が単純に強い!!極悪な刻みとビートダウンを駆使しまくったサウンドは王道であり、この手のサウンドが好きなキッズからしたら大歓喜だろう。でも今回のこのイベントに参戦しているって事はやっぱり一筋縄じゃいかないバンドだ。ストレートなメタルコアサウンドの中にはやはりカオティック変態リードギターのフレーズが見事に咲き乱れているし、それがバッキングの刻みのギターと見事な化学反応を起こしている。でも変態方面に振り切るのではなく、そんな楽曲の中でシンガロングもあざといビートダウンも盛り込み、でもそこだけじゃない変態さもあり、要は正統派であり続けるバンドだと思ったし、何よりも堂々としまくったライブは純粋に格好良かった!!
・Cyclamen
トリは主催のCyclamen。ここまで変態バンドばかりであったけどCyclamenも勿論変態バンドだ。しかし彼等はそれを最高のエンターテイメントにしているから本当に凄いと思う。いつも通り「破邪顕正」からライブはスタートし、最早ライブでは御馴染となった曲達の連続であったが、バンドとしての新たな成熟を今のCyclamenからは感じる。勿論個々の演奏技術が更に高くなったのも大きいと思うけど、Cyclamenが以前から持っていたタイトなだけじゃなく、ハードコアな荒々しさライブで表現するという事、誰よりもライブを楽しむという事、それらが本当にブレ無く固まったのを観ていて思った。相変わらずみんなドヤ顔アヘ顔で超絶技巧で魅せまくり、今西さんは相変わらず汗だくになって叫ぶ。しかしそこにあるのは狂気でもサッドネスでも無くて、やっている音楽こそはシリアスではあるけど、それを楽しさというフィルターを通す事によって最高にブチ上がる音にしているって事。ヒロシさんがモッシュを煽ればサークルモッシュが発生していたし、一曲終わる毎にフロアからは歓声とも奇声とも言える声が滅茶苦茶上がっていたし、本編ラストとアンコールは「Never Ending Dream」と久々にライブでプレイした「With Our Hands」という彼等のアンセムで締めてくれたのも最早頼もしい。今回の主催という事もあって気合十分でありながらも、バンドとして更なる成長を感じたライブだったし、もっともっと大きなバンドになるだろう。それはフロアの突き上げられた無数の拳を受け入れ、引っ張っていくだけのバンドになったって事なんだと思う。
今回のイベントは正に国産変態バンド大集合で、言ってしまうと超絶技巧をアヘ顔・ドヤ顔でキメまくるびっくり人間ショーをアヘ顔晒して奇声上げながら観るという正に変態しかいないイベントではあったが、そんなイベントにも関わらず最後はみんな笑顔だったし、特に外タレの出演があった訳じゃないのに、サイクロンというハコでかなりの集客を出来ていたのも凄いと思う。djent・プログレメタルというサブジャンルのイベントではあるけど、明確過ぎる程に明確なイベントのコンセプトもあるし、そのコンセプトから全くブレて無いイベントだったと思う。今回だけでは無く是非とも第二回第三回と続いていって欲しいし、更にジャンルやカテゴライズを超えた変態バンドの参戦にもこれから期待したい。しかしこんな変拍子と超絶技巧の宴でみんながピースフルで笑顔に溢れていたのだから、変態はもしかしたら世界を平和にするのかもしれない。