■Ⅳ/Angel'in Heavy Syrup





 JOJO広重のアルケミーレコードから音源を発表し、JOJO広重の秘蔵っ子的バンドであったAngel'in Heavy Syrup(以下エンジェリン)。メンバー全員女性のガールズバンドであるが、プログレ・サイケ・70年代フォークを基盤にし、甘くドロドロとした酩酊感に満ちたメロディ、哀愁と陰鬱さに満ちた世界観、独自の体温を持った音、エンジェリンは誰にも真似出来ない完全にオリジナルな音を鳴らしていたバンドである。今作は99年に発表された4thであり、日本のロック史の隠された大傑作である。



 森田童子の様な、陰鬱で物悲しい歌の世界と、フォークを基調にしたコード進行を骨組みに、聴けば聴く程に異様なスケールに基づいたサイケデリックなメロディが体の最深部に流れ込む柔らかい狂気はエンジェリン独自の物だ。バンド全体の音圧はかなり抑えられていて、ギターの音はアタック感の全く無いのだけれど、浮遊する音は柔らかに聴き手を刺し殺していく。第1曲「はつ恋」は透明感溢れぬ曲でありながら、足下からじわじわとコールタールの海に飲み込まれてしまいそうなアシッドさを鳴らしている。第4曲「Adios Those Days」ではバンドのプログレ的ドラマ性も存分に発揮され更なる中毒性を持っている。
 柔らかで美しい歌声もエンジェリンの世界観を確立させるのに一役買っており、天使の歌声とも言わんばかり神秘さを感じる。しかしそこにあるのは祝福の福音ではなく、穢れてしまった世界を嘆き悲しむかの様な、静かな断末魔の叫びなのだ。最終曲である第6曲「君に」にてエンジェリンの寸分の狂いの無い世界は完成されている。ファジーでありながら空間系エフィクターを駆使した悲しみの轟音が鳴り響き、緩やかな破滅をプログレッシブに歌っている。天界が崩れ落ちるかの様な救い無き終末すら僕は感じる。



 エンジェリンは既に解散してしまったが、関西のアンダーグラウンドの空気を何処までも取り込み、それに女性的な純度と、バンドの持つ重い透明感を血肉にした果てにあったのは唯一無二の悲しき福音だった。血まみれの天使が涙を流し謡うこの世界は恐ろしい位に残酷で、彼女達の歌には救いは全く無い、なのにその終末の世界から僕は抜け出せる気が到底しない。これは最果ての音楽の到達点だ、この甘く重い鳥籠に取り込まれたままで良い。



スポンサーサイト

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 

プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

タグ別記事表示

日本 ライブレポ 激情系ハードコア アメリカ スラッジ ポストメタル ポストハードコア ポストロック カオティックハードコア ドゥーム エモ オルタナティブロック イギリス サイケ フランス アンビエント ストーナー ネオクラスト ドローン ドイツ シューゲイザー ハードコア ロック グラインドコア プログレ ギターロック ポストブラックメタル インタビュー マスロック ポストパンク デスメタル スウェーデン カナダ モダンへビィネス スラッシュメタル ブラックメタル ギターポップ エクスペリメンタル エレクトロニカ ジャンクロック イタリア インダストリアル ベルギー フューネラルドゥーム グランジ ノルウェー 年間BEST ジェント オーストラリア スペイン アコースティック ポップス プログレッシブメタル ラーメン ブラッケンドハードコア フォーク ミニマル モダンヘビィネス ニューウェイブ パワーヴァイオレンス ロシア ゴシックメタル ハードロック ファストコア ノイズ ニュースクールハードコア フィンランド メタルコア ゴシックドゥーム トリップホップ ヒップホップ 自殺系ブラックメタル オランダ 駄盤珍盤紹介 アブストラクト ノーウェイブ クラウトロック ダブ ヘビィロック パンク ゴシック ダブステップ ノイズコア シンガポール ラトビア ミクスチャー チェコ インディーロック メロディックパンク テクノ ポーランド ドラムンベース ウィッチハウス オルタナティブ アイルランド デンマーク スイス ヘビィネス メキシコ ポジパン ジャズ ヴィジュアル系 アシッドフォーク メタル ブルデス 声優 ボイスCD ドリームポップ トラッドフォーク クラストコア スクリーモ カントリー プリミティブブラック 韓国 ハンガリー アイスランド イラン シンフォニックブラック ギリシャ スコットランド USハードコア ポルトガル ガレージ ソフトロック フリージャズ モダンクラシカル 台湾 トルコ ファンク 

カテゴリー

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード

カウンター