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■Kranke/Syrup16g

Kranke



 奇跡の生還ライブから再結成、そして昨年のアルバムリリースとシロップは完全に表舞台に帰ってきたけど、意外と間を空けないであっさりとリリースされた5曲入EPである今作。昨年リリースされた「Hurt」では荒さが結構出ていたし、一先ずはシロップ復活記念作品でありながらも、新たなシロップの始まりを告げる作品となったが、今作は非常に優しい歌物の楽曲が並び、五十嵐がソングライターとしてまだまだ枯れてなんかいないって強く確信させてくれる傑作になっている。



 と書いてはみたけど、今作を先ず一周聴いてみて抱いた感想は言い方が悪いけど「地味」の一言だった。いやシロップ自体が元々優れたメロディセンスを持つバンドでありながら、アレンジ等が非常に地味だったりするバンドだし、それは今作もそうなんだけど、一言で言えば解散前の作品達にあった毒素だったり切迫感だったり絶望感がほぼ無くなっている。今作で歌われている事は言ってしまえば諦めの悪さと、思春期的な拗らせた感情とこれ以上に無い位にシロップではあるけど、本当に優しいのだ。シロップはその完膚無きまでの虚無感と絶望感を甘いコードに乗せて突き刺すバンドではあったけど、今作は言ってしまえば救いの作品であり、シロップの奥底にあった諦めの悪さという感情を曲にした物ばかり。そして個人的な空想の域を脱してはいないけど、今作を聴いて思ったのは五十嵐はバンド名の意味の一つであった「ぬるいままで好きな音楽を好きなだけやろう」というスタンスになっているんだと思う。楽曲はここ最近の流行りの音の要素なんて勿論無いし、五十嵐のルーツである80年代UKロックだったりとかの影響がやっぱり強い。でもそれで良いんだと思う。今のシロップのモードは完全に気ままに好きな音だけ奏でたいってモードであるがこそ、今作は純粋な作品であり、そして聴き込む程にゆるやかに浸透していく。結局は根底としては何も変わっていないって安心感があるし、「Hurt」と違って肩の力が抜けているからこそ五十嵐の伝家の宝刀である甘く美しいメロディセンスが見事に光っている。
 今作のリードトラックである第1曲「冷たい掌」も転調こそあったりはするけど、コードワークはシンプル極まりないし、切なさ溢れるラブソングになっている。北田氏のベースラインのセンスはやっぱり天才的であったり、大樹ちゃんのドラムは荒々しく猛る訳では無いにしても、シンプルであるからこそ強くもある。何よりも五十嵐の歌が本当に優しい。今作の中では異質でロック的で刺々しいギターワークが光る第2曲「vampire's store」もそんな優しさがあるし、攻撃的なサウンドではあるけど、禍々しくは無いし、自然体のシロップのロックだ。
 「オーオーアアエー」なんてボーカルで思わず笑みが溢れてしまったインタールードである第3曲「songline」を挟んでの後半の2曲は特に素晴らしい。第4曲「Thank you」なんてタイトルがもうらしく無いんだけど、歌詞も曲も完全にシロップ。やっぱり地味だなーって思いつつも、風通しの良い疾走感だったりは再結成後のシロップの中で大きなファクターなんじゃないかなって思ったりもする。爽やかではあるけど、でもちょっとだけドロっとしていたりって言うのが、シロップの諦めの悪さそのままなんだ。そして第5曲「To be honor」はシロップの解散前と再結成後という区切りを作った上で、完全に再結成後を象徴する屈指の名曲になっているだろう。諦めを言葉で羅列していると思わせといて、でも先にゆっくりと歩いていくという意思を歌っている様にも思えたし、解散前の楽曲で言えば「イマジン」とかに近いサウンドでありながらも、ドロドロはしていないし、五十嵐の歌はやっぱ不安定でもありつつ、でも話しかけるようでもある。気が付けばこの曲が頭の中でずっとリフレインしているし、壮大でも無いしダークでも無いけど、これが再結成後のシロップの新たなるスタンダードなんだと思う。



 何となくだけど、今作は五十嵐が再結成以降のシロップを新たに作っている段階の作品であると感じたし、解散前とは色々と状況も違うからこそ、現在進行形でのシロップを新たに構築している最中だと思うのだ。だからこそその再構築が完了した時にシロップはまた凄まじい作品を生み出すと思うし、どうしても解散前のシロップが神格化されてしまっているからこそ、色々と思うことがある人は多いのかもしれないけど、でも今作の楽曲たちは間違いなくシロップ以外には作れない曲ばかりだし、静かにゆるやかに、でも確実にシロップは歩み続けている。だからこそ地味ではあるが、不変的な名曲ばかりの作品だ。



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