■Conspiracies/GUEVNNA

ex.CoffinsのRyo氏率いるストーナーロックバンドGUEVNNA。今年に入ってex.屍・VektorのTemi氏も加入したが、そんな彼等の初の単独音源である1stEPが今作だ。歌詞カードこそ無いけど、アートワークが凝っていて収録されている4曲それぞれをテーマにしたアートワークも注目だけど、これがこれ以上にない位にロックな作品になっている。既存のストーナー・ドゥームとはまた違ったアプローチを展開しながらも、それでも言うまでもなく煙たい音ばかりが充満している。
BongzillaやIron Monkeyといったバンドの影響を受け、それらのバンドへの愛を感じさせるサウンドでありながら、今作は所謂ストーナー・ドゥームとは全然違う作品である。ストーナーとして見ると爆走ブギーサウンドじゃないし、ドゥームとして見ると極端にヘビィに振り切っている訳じゃない。基本的にミドルテンポで曲は進行しているし、リフやグルーブはどこまでもヘビィだ。しかし同時に純粋なロックバンドな間口の広さがあって、極端にヘビィさやドラっギーさやダークさに振り切るんじゃなくて、どっしり構えた骨太のミドルテンポサウンドを活かし、良い塩梅の重さのリフだったり曲の完成度の高さで勝負しているといった所だろう。特にバンドのグルーブはかなり気持ちよくて、引きずった音でありながら解放された音は純粋に気持ち良い。個人的にはストーナーやドゥームだけじゃなくて、古き良きグランジサウンドにも通じる物を感じるし、バンドがそこら辺を意識しているかどうかは分からないけど、この煙たく重く、でもカラッとしていて純粋にロックなサウンドはグランジ的だと思うのだ。
第1曲「Conspiracy」の冒頭から煙たく思いギターリフとリズム隊のグルーブでグイグイ引き込んでいくサウンドが展開されるも、そこから躍動感溢れるストーナーサウンドが展開される。それも爆走ロックサウンドとは違って、あくまでミドルテンポなビートでのっそりと疾走する矛盾したサウンドを成立させてしまっている。それはどこかダンスミュージック的グルーブでもあり、極端に速くも無いし、遅くもない。音もあくまでもロックサウンドの中でのヘビィさで、チューニングの重さじゃなくて一番重く聞こえる音階を使ったリフを使っているからだろう。本質としての「ヘビィ」さを熟知しているからこそ生み出せるサウンドだと思うし、Ryo氏のボーカルもCoffinsとは全然違ったストーナーロック愛に溢れたボーカルを聴かせ、それが滅茶苦茶格好良い!!何よりも曲そのもののキャッチーさが素晴らしいし、確かにヘビィではあるけど、そういった音楽を全然聴かない人でも、もしかしたら音楽を全然聴かない人ですら拒絶反応起こさずに受け入れられるであろう普遍性があるし、でもやっぱりストーナー・ドゥーム好きのフリークスからは「これでしょ!!」って絶賛されるサウンドだ。
第2曲「Confession」は正にキラーチューンであり、2本のギターが充満し走りまくる気持ちよさと、リズム隊の少し粘っこくてコシの強いビートが炸裂。中盤のBPMを落としたパートではより重くなっているのに、でもあくまでもロックなサウンドであり続けている。音こそドゥーム・ストーナー好きに受け入れられる音なんだけど、個人的に実はドゥーム・スラッジ感はふりかけ程度のエッセンスなんじゃないかなって思ったりもする。所謂ドゥーム・スラッジの密教性が今作には全く無いし、今作で提示しているのは自然体なロックサウンドの中での開放だと思うし、それこそアートワークも含めたらある種の全ては明らかにはしないけど、その世界観を分かりやすく提示しているのかもしれない。その捉え方も人それぞれであるし、「病み」だとか「暗黒」といった部分がテーマじゃなくて、もっと普遍的な「何か」をこのバンドはテーマにしているのかもしれない。第3曲「This Mortal Grace」なんて映画のBGMにも全然使えてしまうんじゃ無いかっていう気持ちの良いロックサウンドだし、Old School Discoにもバンドは影響を受けているらしいが、極端に速くない自然体な速さでのグルーブはそこから来ていると考えたら納得だ。第4曲「Deathbed」は今作でも特に濃密なグルーブに溢れていて、リフの反復といった要素もありつつ、でも終盤のギターソロは激渋であり、最早渋い男達のロックとして全然成立すらしていると思う。でもグランジ的グルーブもあり、それでいてディスコサウンドやストーナーといったグルーブもあり、それを最も普遍的な形でロックに落とし込んでいるのだ。流石である。
既存のストーナーでは無く、またドゥーム・スラッジ方面に振り切るのでは無く、開放的でキャッチーでノレるサウンドを提示したGUEVNNAはストーナーからロックの新たな可能性を今作で提示したと思うし、ヘビィさに頼らず、でもやっぱりヘビィなグルーブで、もっと間口が広く普遍的でありながらより濃厚な全4曲はバンドのオリジナリティと熟練の渋みが光りまくっている。来年には1stフルアルバムもリリース予定らしいし、そのフルアルバムでは今作で提示したサウンドが更に進化していると思うし、より普遍的で独創的なGUEVNNAのストーナーサウンドがどうなっていくか本当に楽しみである。