■Atheist's Cornea/Envy
やはりEnvyというバンドは凄い!!前作から5年の歳月を経て届けられた今作だけど、これまでのEnvyの集大成とも言える作品を遂にドロップしてくれた。前作「Recitation」はハードコア要素こそあったけど、それはもっとキャッチーだったりポップであったりポストメタル的であったりもしたけど、今作はここ最近のEnvyの音も存在しているけど、それこそ名盤「君の靴と未来」の頃の痛々しい熾烈な音も存在しているし、長いキャリアの中で自らの核を貫きながらも変化を続けてきたEnvyの歴史の集大成がここに存在している。
今作は「君靴は大好きだけど、ここ最近のポストロック化したEnvyはちょっと…」って人にこそ是非とも聴いて欲しい作品であるし、同時にここ最近のEnvyの音が好きな人にも聴いて欲しい作品だ。確かにここ最近の数枚のアルバムはポストロック・ポストメタル化したサウンドだったし、激烈な音よりも美旋律を壮大に奏でていたとも思うし、そこを絶賛する人もいれば、そこに物足りなさを感じた人も多かっただろう。僕自身はそんなEnvyも凄く大好きなんだけど、でもやっぱりこれぞ激情系ハードコア!!なEnvyの音もやっぱり欲しくなったりもしていた。国内激情系ハードコアでは不動の帝王であり、海外でも絶大なる支持を集めている事は周知ではあるとは思うけど、でもそんなキャリア20年を迎えたEnvyは何もブレていないし、何も揺らいではいない。第1曲「Blue Moonlight」はイントロこそここ最近のEnvyらしいクリーンのギターで始まるけど、瞬く間にこれぞEnvyという激烈すぎるサウンドが炸裂!初期のEnvyの名曲群と並ぶだけの痛みを吐き散らすサウンドと言葉、会心の一撃をいきなり食らわして来るこの一曲だけで目から涙が出そうになる位に嬉しくなったのは僕だけじゃないだろう。第2曲「Ignorant Rain and the End of the World」もそんなEnvy節全開なハードコアが炸裂!フックが効いたソリッドなツインギターのフレーズの攻撃的でありながらも感情を貫く音はキャリアを積み上げて再び原点を見つめ直したからこその貫禄に溢れているし、世界で戦い続けているからこその圧倒的貫禄は流石だ。
かといって単純にハードコアに回帰するだけじゃないのはやっぱりEnvyらしくもある。第3曲「Shining Finger」はその曲名に「シャイニングガンダムかよ!!」って突っ込みそうになったのは僕だけじゃ無いけど、「Seane」を彷彿とさせるポストロックなEnvyの名曲となっており、美旋律とポエトリーによって進行し、キーボードの音色の暖かさと轟音によって至福の瞬間を生み出し、希望の煌きが広がる神々しさ、ここ最近の路線の楽曲も以前以上に説得力が増しているのもやはり進化だ。第4曲「Ticking Time and String」はsgt.成井嬢がヴァイオリンで参加し、ポストメタルな激烈なサウンドを繰り出しながらも、その壮絶なる激音激情から最後はヴァイオリンの音色に酔う至福に包まれる。第5曲「Footsteps in the Distance」ではキャッチーさとスケール感溢れる叙情的メロディとポジティブなエネルギー溢れるサウンドとtetsu氏のポエトリーは否応無しに「今日を精一杯駆け抜ける君に、鼓動を刻む明日は来る!!」って感じだし、そこから光り溢れるハードコアである第6曲「An Insignificant Poem」へ続くのは何かもうズルいなあってなる。
そして決定打でありハイライトはライブでもいち早くプレイされていたし「NERO 光」とのタイアップでいち早く公開されていた第7曲「Two Isolated Souls」だろう。一転して再び歪みまくったギターが鳴り響き、すり減らすリフから今作一番の爆発を魅せるカタルシス!!この曲は正にEnvyのハードコアが究極の理想形として完成された証明であり、ポストロック化していないサウンドでありながら、スケールが凄いし、ソリッドでストレートな激情サウンドにメロディセンスとスケール感をぶち込み、Envyにしか生み出せなかった音を繰り出し、中盤でポストロックな静謐なパートを挟みながらも終盤ではその流れを受け継ぎクライマックスへと爆走していく正に「Envyスタイル」としか形容出来ない音に完全にノックアウトされた。そしてエピローグとなる最終曲「Your Heart and My Hand」の陽性のメロディが炸裂し、眩いばかりの光を激しくも優しく描くラストで感動的に締めくくられる。
全8曲とコンパクトな作品ではあるが、20年に及ぶEnvyのキャリアで培った全てを惜しみなく出し切っている作品だと思うし、どこを切ってもEnvyな作品だと思う。痛烈なハードコアもあれば柔らかな光差し込む楽曲もあり、光と闇と激情から世界を描くEnvyの総決算とも言える逸品だろう。昔のハードコアなEnvyが好きな人も今のポストロックなEnvyが好きな人も納得の完成度だし、大ベテランであるからこそそんな作品を生み出せたのだろう。日本が世界に誇る激情の生きる伝説は現在進行形であるし、今作もそんなEnvyの新たな1ページとして狂い記されていく。
■コメント
■Re:Atheist's Cornea/Envy []
往年の激しさもありつつ円熟のエロスもあって、これからも長く聴いていけるアルバムになりそうです。
ところでレコメンドコーナーみたいなものはやる予定ないですか?
ゆりあき君の2015年オススメ盤!みたいな……
過去のレビューを全て追っていくのも大変なので、そういう、ランキングってわけじゃないですけども、何かまとめ的な記事もあると有難いです。
■Re: Re:Atheist's Cornea/Envy [AKSK]
今年も年間ベストの記事の方はやらせて頂きます。一応順位は付けますが、僕としてもこうしたまとめ的記事は作りたいので。
年明けにでも公開できたらと思います。楽しみにして頂けましたら幸いです。