■TOMY WEALTH presents 【MASKED MANSION 4】82015年6月13日)@渋谷eggman
・COHOL
先日リリースされた待望の2ndアルバム「裏現」が本当に全世界を塗りつぶすとんでもないアルバムだっただけに本気でライブを観たくて仕方なかったCOHOL。先ずはステージにKYOSUKE氏とITARU氏が立ち「裏現」でも一曲目を飾るインスト「冷たい石」をプレイ。そして全身ボロ布の衣装を身に纏ったHIROMASA氏が登場し「下部構造」からキックオフ!!しかしながらもうとんでもないという言葉以外浮かばないライブだった。先ずKYOSUKE氏のドラムがとんでもない!!正確無比過ぎるドラミングを展開しているにも関わらず、とんでもなく速い!!怒涛のバスドラとシンバルをあり得ないポイントでブチ込んでくるドラミングは前々から凄かったCOHOLのビートを更にエクストリームに仕立て上げている。HIROMASA氏もよくあの速さのフィンガーピッキングを繰り出しながら叫べるなってベースを繰り出し、そこにITARU氏のセンスの塊しか無いギターで世界観をより確固な物にする。何よりも以前よりもブラッケンドな音になっているにも関わらずその音は紛れもなくハードコアのそれでしか無いし。「ハードコア=進化」である事をCOHOLはライブでも証明してくれた。「裏現」の楽曲中心のセットではありながら中盤で「不毛の地」を繰り出しガッツりブルータルなサウンドで殺しに来てくれたのも最高だったし、こんなにメロディアスであり、こんなに暴力的で冷徹でありながらも熱い音楽は他には無いし、それはITARU氏の熱い想いをブチ撒けるMCからも伝わってきたし、何かITARU氏のMCで凄いグッと来てしまった。終盤の「地に堕ちる」からラストまでは本当に怒涛のサウンドを展開。しかしここまで美しく激烈でダークでありながら、同時に人間味溢れて優しさすら溢れるライブをするバンドって他にいないだろ!!どんなにスモークが充満してステージの上の3人の姿が隠れても、どんなにHIROMASA氏が布を被って素顔を隠そうとも、その熱き魂は絶対に隠れやしない。それが伝わって来るから胸が熱くなる瞬間が何度もあった。だからこそ良かった。COHOLはブラッケンドとか激情って言葉じゃ片付けてはいけない。紛れもない熱すぎるハードコアだ!!
・kamomekamome
COHOLの熱すぎるライブからカモメの流れがもう最高だと思う。のっけからいきなり向氏のMCというか小芝居からスタート、もう小芝居の内容で一曲目に何をやるかは分かっていたけど、幼少期に幼馴染と竹林に行ったエピソードを話す小芝居から始まるのはもうこの曲しかない!!のっけから「メデューサ」!!!!!いつもよりは大人しめとは言えいきなりピットが出来上がってモッシャーが登場するし、プログレッシブでありながら獰猛なるハードコアでフロアを完全にカモメの物にしてしまっていた。続く「ナイーブレターズ」から「例え言葉は冷静に」で更にフロアの空気を着火させるし、フロアの熱気がとんでもない事になっていて汗だくに、カモメのライブ自体は観るのは結構久々にはなってしまったけど、この人たちはいつライブを観ても常にフルスロットルで最高の熱量しか放出しないし、細かいミスだったりとかはそりゃあったりはするけどそんなの関係無しにフロアを熱くする熱量のみを常に爆発させまくるのだ。COHOLのITARU氏に負けない熱さでこの日の出演バンドへのリスペクトを語ったMC(COHOLの新作を最早一家に一枚無きゃおかしいって言ってのはちょっと笑ってしまった)から、「頭の中お大事に」、そして「化け直し」、「エクスキューズミー」、「手を振る人」とラストはアンセム三連発で締めくくり!!というかこの日のセットは全曲アンセムで固めて本気中の本気のセットだったと思う。汗だくになりながら叫ぶ向氏の姿は最早神々しさすらあったし、ハードコアのそれでしか無いサウンドを繰り出し、フロアを狂騒の渦にしながらも最後の最後はみんなを笑顔にする。例え時には暗い事を歌っていたりしても、今のカモメには紛れも無く愛が溢れている。シリアスであってもその熱情で魂を焦がすハードコアとしてカモメは最強なんだ。COHOLのライブに続いて本当に魂が熱くなるライブだったし、汗だくになって死にかけたけど、本当に胸を撃つライブだった!!
・降神
この人たちは最早ヒップホップじゃ無いのかもしれない。ライブ自体は実に7年振りとかに観た降神であるが、最早トラックすらいらないってレベルだった。先ずは志人が登場し志人のフリースタイルから始まったけど、先ずはここまで声だけで引き込む表現者が他にどれだけいるのだろう。ラッパーだとか詩人だとかいう括りじゃ括れない、本当の意味で選ばれた表現者なんだと改めて思った。なのるなもないも登場し2MCで本編スタート。この日は昔の降神の曲も結構やってくれたしサービス溢れるセットだったけど、トラックのドープさもさながら本当にこの二人の表現者が生み出す世界はとんでもない。ラップ自体もこの二人にしか出せないフロウがあるけど、声と言葉で最大限の表現をこの人たちは生み出しているし、アカペラで歌うだけでここまで心を震わせるだけの表現は一体何と言えば良いのだろうか?カテゴライズこそヒップホップなのかもしれないけど、フリースタイルもラップも歌も引っ括めて降神が放つ声と言葉は唯一無二の感動しかない。ラストはアンセム「帰り道」で締めくくったけど、最後の「また会いましょう」のリリックでやっぱり涙腺が緩くなってしまったし、時には鋭い言葉を放ちながらも、また出会いを約束する優しきアンセムにフロアの心は間違いなく一つになったと思う。本当に降神は唯一無二の素晴らしいアーティストだ。
・Tomy Wealth
トリは主催のTomyだったけど、この人のライブも本当に感動的だった。トラックメイカー・ベース・ドラムだけでここまで豊かな情景を生み出し描くアーティストはやっぱり他にはいない。先ず緊張感溢れながらも完全に息が合ったアンサンブルに震えるしかないし、何よりもTomy Wealthは素晴らしいトラックメイカーである以前に素晴らしいドラマーなのだ。ここまでダンサブルでありながらパンキッシュでハードコアな躍動感に溢れて踊れるのに感動的なドラムを叩く人はいないし、最早ドラムだけで一つのアートの領域に到達してしまっている。ヒップホップだけじゃなく、もっと映画的世界を描くトラック、3人の音だけで言葉を借りずとも美しい流線型を描くアンサンブル、一つ一つの音が繊細極まりないのに、同時に大胆でもあり、音の呼吸すら聞こえてきそうになってしまう。MCを全く挟まずほぼノンストップで繰り出される名曲達はピアノのサンプリング、グルーブに満ちたベース、そしてTomyのドラム、一々音に説得力があるし、それがどれも感動的な美しさに溢れていた。そしてアンコールでまた一曲プレイしたが、お気づきだろうけどこの日のイベントはkamomekamomeと対バンだ。フロアがアレやらねえのかよ!!って空気になったところでTomyの思わせぶりなドラムソロが始まり、そしてドラムロールが始まった瞬間にカモメの向氏が登場!!そして向氏とのコラボ曲「Automatism」と焦らしに焦らしてみんなが待ち望んでいた名曲を最後の最後にプレイ。ただでさえ他に入る余地が無い3人の音に見事すぎる言葉とボーカルとラップを入れる向氏の天才っぷりも凄いけど、インストってだけで既に完成されてしまっている3人の音に更に素晴らしいボーカリストが加わるだけで素晴らしい熱量が。美しいピアノの音色とベースとドラムのグルーブに向氏のボーカルと完全すぎる形で表現された「Automatism」はこの日のハイライトであったし、このイベントで集結したアーティストとお客さんのかけがえのない惹かれ合いを象徴している様でもあった。
アンコールが終わって最後は出演者みんながステージに集合して集合写真を撮り今回のイベントは締めくくられたが、ふと見渡せば出演者は勿論、ギチギチに埋まったエッグマンにいた人々がみんな笑顔だったのだ。出演したアーティスト達の音楽性は言ってしまえば決してメジャーな物じゃないのかもしれないし、極端な音楽性ではあるのかもしれない。でも本当に素晴らしいアーティストはどんな音楽性だろうと関係無く、そのライブで人々を笑顔にする事が出来るのだ。そんな4つの素晴らしいアーティストは勿論、転換中に素晴らしいパフォーマンスを展開していたDJ A-$UKEとFL CHE PACHINO、そしてこのイベントに関わった全ての方々に改めて大きな感謝とリスペクトを。