■Efter, Utan Under/Via Fondo

Anemone, Medviliaのメンバーによるスウェーデンの激情系ハードコアの2014年リリースの1stフルアルバム。今作はレコーディングから何から何までセルフプロデュースで制作されたらしく、これまでのEPでも見せていた炸裂する青き激情はより高次元のサウンドとなり、より磨きがかかっているし、屈指の完成度になっている。日本盤リリースは日本から世界中の美しき音をお届けするTokyo Jupiter Recordsから。
これまでの作品でもそうだったけど、このバンドは屈指のメロディセンスを持ちながら、それを最もダイレクトで混沌とした形で届けてくる。第1曲「Avstängd」からこれ以上無い位にあちら側へ引っ張り込む美アルペジオから始まりながらも、静謐さでは無く、クリアに歪んだサウンドにて生み出す混沌だ。曲自体の構成も凄く練り込まれているにも関わらず、テクニカルな演奏でありながらも一歩間違えれば崩壊してしまいそうな危うさもある。曲展開も非常に多展開だし、カオティックなフレーズから轟音ギターまで瞬く間に飛び出すし、一曲の中で何度も何度も爆発を繰り返すサウンドスタイル。それは蒼き疾走感であるし、バンドのアンサンブルのバネの伸びの凄さは大きな武器だと思う。変則的な楽曲構成でありながらもカオティックでありつつ、常にフルスロットルに駆け抜けるドラムもそうだけど、それはポエトリー等を盛り込みながら全力で叫び散らすボーカルもそうだし、ただ青い美旋律ってだけじゃ無くて、青く更に駆け巡る様なコード進行を強く押し出したギターのセンスが為せる技だろう。女性ボーカルをゲストに迎えた第3曲「Jag Vill Ändå Vakna」何かは叫びと女性ボーカルの悲痛でどこかヒステリックなボーカルが、瞬発力のギアを最初からマックスで走り抜けるバンドサウンドと見事にシンクロして急降下しているし、かといってその初期衝動はそのままにじっくりと聴かせる第4曲「Januari」の完成度の高さも見逃せない。しかし全8曲を通してここまでスピード違反に爆走するサウンドは他に無いだろう。曲も多展開だし、変則的ではあるけど、一本の大きな筋が通っているし、何よりも持ち前のメロディセンスを初期衝動と共に駆け巡る激情として最大限に表現している。ギターワークの緻密で美しいセンスもあるし、アルペジオを多用しまくっていても衰えない体感速度、全8曲が収録時間よりもずっと短く感じるだろうし、特に第7曲「Mörkert」は今のVia Foundの持ち味が全て詰め込まれている名曲だろう。轟音フレーズやポストロッキンなアプローチも盛り込み、バンドとしての武器も以前に比べて格段に増えたと思うけど、それを全て馬鹿正直なまでにハイボルテージなサウンドに詰め込んでしまっているから最高だ。そして最終曲「Strategi」の2分20秒のカタルシスには圧倒されるし、同時にはやり完成度の高い楽曲のクオリティにも驚かされる。
多展開、爆走感、カオティックさ、美旋律、美轟音、その手のハードコアの持ち味とされているサウンドをこれでもかとばかりに喰らい尽くした末にそれを最もストレートであり、熱き血潮に満ちたハードコアとして完成させてしまっている事に驚きだし、どこまでもエモヴァイオレンスだと思う。しかしながら最終的にはその天才的メロディセンスと初期騒動溢れる音にブチ殺されてしまうだけだし、1stをリリースしたばかりのバンドではあるけど、ここまで混沌としながら美しく作品を生み出した事実に乾杯だ。今作は勿論Tokyo Jupiter Recordsの方で購入出来る。