■Q/theSun
![]() | Q (2007/07/11) the sun 商品詳細を見る |
北海道のカオティックハードコアバンドtheSunの07年に発表されたEPである今作は、ハードコアのカラーよりもポストロック色の強い作品に仕上がっている。クリーントーンと歪みの絶妙なバランスだったり、カオティックなキメと転調の嵐だったりのtheSun特有のサウンドは存在しているが、より歌の部分に重点を置き、スロウテンポの楽曲が大半を占めている。theSunの変態性や特異な要素を大きくフーチャーした作品だ。
第1曲「SAGI」から浮遊感のあるギターの音で始まり、じっくりと聴かせる構成になっている。ヒグチ氏はハイトーンで絶唱しているが、それでも叫びというよりは歌の部分に重きを置いているし、theSunの持つハードコアの要素を敢えて抑える事によって、その異形さをアプローチした形になっているのだ。更に第2曲「エラーman」に至っては殆どポストロックといっても過言では無い楽曲に仕上がっている。不穏の揺らぎを持つギターの音色とベースが空間の軸を揺らしながら転調を繰り返し、聴き手に言い知れない恐怖感を与えてくる。そこから終盤で歪みまくったギターがバーストして破綻していく様はある種の美しさを見せてくれる。カオティックハードコアとしての軸はしっかり持ちながらも、そこに知的な狂気をブチ込んだ事によって異様さと異形さを持った蛇の様なズルズルと這い蹲る不気味さが聴き手を犯していくのだ
だが第4曲であり今作のラストを飾る「Kill Your Godiva」では一気にハードコアの瞬発力と強さを開放し、変拍子と転調とキメによるジェットコースターの様な暴走カオティックサウンドが展開されている。終盤のブレイクからファズギターと歪んだベースのユニゾンなんか鳥肌が立つ爆発力を見せつけている!不穏のトンネルを迷い込んだかの様な楽曲が連なる流れから一気に悪魔が笑う混沌の世界にブチ込まれ昇天する事は必至だ。
安易に爆音ハードコアサウンドに頼らず、変態性としなやかなバンドとしてのフォルムで自分達の音を叩きつけるtheSunであるが、今作でその異質は十分に伝わると思う。分かりやすいハードコアサウンドでは無いけれども、違う次元にある空間的歪みの世界は大きな中毒性と快楽を孕んでいるのだ。