■TRIKORONA presents “様々な困惑”(2015年8月1日)@東高円寺二万電圧

 東京のTRIKORONA、大阪のSTUBBORN FATHERという東西の大妖怪2匹が激音のみをパッケージしたスプリットを昨年末にリリースし、そのスプリットは本当に多くの人々から高い評価を得た。
 そして今年の2月から半年に渡って全国各地をその2バンドで回るスプリットツアーが行われたが今回は半年に渡るツアーを締めくくるファイナルだ。先日正に新感覚の激音を新たに提示した大傑作1stをドロップしたREDSHEER、西東京からハードコアの真髄を鳴らすGOUM、人間の内面を暴く新時代のハードコアweepray、Su19b&FINAl EXITの菊池氏がドラムを叩き、TRIKORONAの是枝氏がボーカルで参加する新バンドunconscious disharmonic malfunctionという濃密6バンド。更には(((AMNESIa-ccHANNEL)))の転換中のノイズ演奏に3LAのディストロ出店と豪華極まりないファイナルとなった。
 二万に到着した時点で(((AMNESIa-ccHANNEL)))がフロアで行われており、フロアに入ったら耳が壊れるだろう超絶音量のハーシュノイズが垂れ流されており、思わずバースペに避難。僕の他にもフロアに入ったけど殺人的ノイズに耐え切れなくてバースペに逃げる人が続出。フロアのドアが開く度にバースペでの会話も困難になるであろうノイズが流れて来て、その異様さには笑うしかなかったけど、今回のファイナルの混沌を良い意味で表す現象でもあった気がする。
 そしてそんなノイズの洪水の中、UxDxMのライブからツアーファイナルは始まった。



・unconscious disharmonic malfunction

 この日が初ライブとなるUxDxM。バンドの編成はノイズが2人、トリプルボーカルにドラムという特殊過ぎる編成のバンド。先ずはノイズ散らかし隊の2人のハーシュノイズ演奏が4分程続くが、その時点で既に鼓膜が悲鳴を上げていたし、暴力的カタルシスのノイズはまるで初めてSTRUGGLE FOR PRIDEのライブを観た時をふと思い出しりもした。
 そして是枝氏含むボーカル3人とドラムの菊池さんも加わってからは本当に早かった!!せわしなく繰り出される3人のボーカルによってノイズ塗れの演奏は即座にヴァイオレンスなハードコアへと様変わりし、暴力的ノイズを快楽へと変貌させていく。
 また注目すべきは菊池氏のドラムだろう。Su19bの緊張感溢れるドラムとも、FINAL EXITのブラストビートを基軸に変幻自在にビートを帰るスタイルとも違い、Dビートを基軸にしながらもっと変則的なスタイルのドラムを叩いており、ビートが分断に分断を繰り返しているけど、でもDビートの一瞬の快楽の一番高まる部分だけを最終的に組み合わせているからファスト&カオティック!!菊池良平というフリーキーで解き放たれたドラマーの真骨頂がUxDxMにはある。
 ライブは僅か10分で終了という短すぎるライブではあったけど、たった10分で台風の様に過ぎ去る音は得体の知れない物を見た時に込み上げる興奮に満ちていたし、初ライブながら異常な盛り上がりで終了。ツアーファイナルの頭からフロアのギアをマックスに切り替えた。



・REDSHEER

 大傑作の1stリリースが絶好調なREDSHEER。その勢いに乗る形でこれからライブラッシュであるけど、その一発目を飾る形になった今回のライブは7月のレコ発ライブで一つの完成形を提示したREDSHEERを余裕で見せつけるライブだったと思う。
 今回は頭の「Silence Will Burn」とラストの「Yoru No Sotogawa」以外はREDSHEERのエピックさを展開する曲を中心としたセットで頭とラストにアルバムの中でも特に破壊力のある曲を持ってきたのもあって、REDSHEERの激音の中に確かに存在するメロディアスな悲哀がより際立ったライブとなったんじゃないかな?
 勿論音の破壊力は相変わらずだし、ギター一本で叙情詩を綴りながらも、鎌鼬を発生させる山口氏のギターも、タメと爆走と感情の暴発をビートに託すrao氏のドラムも、愛と憎悪を叫びとベースに託す小野里氏もメンバーそろぞれのプレイは安定していたし、紛れも無く1stアルバムで提示した音を体現していた。
 だけど個人的に感じたのはREDSHEERの3人は今こそ1stアルバム以降の音というのを模索している段階に入ったのでは無いかという事だ。バンドのテンションこそ相変わらず高いけど、その先へその先へという渇望が何処か音に出ていた気もするし、早くも次のステージへと向かっていくREDSHEERの苦悩みたいな物をライブから感じたり。
 だけどラストの「Yoru No Sotogawa」はどんなライブでも一つの到達点というかクライマックスに相応しい曲だと改めて思ったし、ビートとグルーブとリフが攻めまくるカタルシスの先を毎回見せて貰っている。
 REDSHEERは9月26日の新代田FEVERまで精神と時の部屋かって勢いでライブがあるし、それを通過した先の9/26は間違いなくREDSHEERのネクストステージが見れる日なんじゃないだろうか?そんな期待を抱くライブだった。



・GOUM

 レペゼン西東京女性ボーカルハードコアGOUM。これまで音源は聴いていたし、その素晴らしさは知ってはいたけど念願叶ってやっとライブを観る事が出来たのが先ず嬉しい。
 だけど今回ライブを観て音源だけじゃ掴みきれなかったGOUMの全貌にやっと近づけた気がする。サウンドスタイルも非常に独特だし、ネオクラストだとかヘビィなオルタナティブとかざっくりとした言い方は出来るし、His Hero Is Goneからグランジからモダンヘビィネスまで縦断する音はアバンギャルドでは無いけど、他に例えようの無いカオス感に溢れている。
 そんな音源でのサウンドはライブでよりシンプルでギミックを排除したサウンドになるとより生々しさが伝わってくる。何故か歪んだシンバルを使っているドラムのビートはハードコアらしい疾走感を出しつつ、タイトな余韻を感じるし、ベースやギターの音作りやフレーズもシンプルなのにそれらが爆音で解け合った場所に生まれるのは混沌だ。
 何よりもGOUMは女性ボーカリストKumi嬢の存在感が凄まじい。女性とは思えないボーカルとかって言い方をしてしまうと簡単なのかもしれないけどそれは大間違いだ。女性だからこそ生み出せる情念や問題意識やドロドロとした粘度をボーカルから感じるし、こんな強烈なボーカルを魅せる事が出来る女性ボーカルは個人的にベルギーのOathbreakerのボーカル位じゃないかと思ったりもした。
 30分近くに渡って繰り広げられたライブは最早神々しさすら感じたし、西東京から世界へと羽ばたくハードコアディーバの本領を観た!!ダークハードコアの新機軸をGOUMは間違いなく鳴らしている!!



・weepray

 今年はアルバム制作期間に入っているためライブ活動はほぼ行っていないweeprayであるが、5月のKEE AND WALK以来のライブというブランクがあったにも関わらず、それを全く感じさせないライブだった。
 序盤はじわじわと熱を生み出してそれを終盤で爆発させるというのが個人的にこれまでweeprayのライブを観て感じたweeprayのスタイルだと思っていたけど、この日はそれを完全に覆す形になっていたと思うし、それこそ一曲目にプレイした「滅びの碧 終末の詞」は二万電圧にweeprayの世界観を構築する準備運動な段階ではあったけど、それ以降の3曲でこれまでのweeprayのライブでのスタイルを破壊する流れが存在していたのだ。
 ライブでは後半にプレイして着火役となっていた「この手とその手」を2曲目にプレイしていたのが本当に大きかっただろう。笠原氏のボーカルスタイルもパフォーマンスも一気にギアが入っていたし、ここ最近は完全に魔道士と化した衣装に身を包んでいた阿武氏のパフォーマンスも冴え渡る。個人的に前以上に阿武氏のベースラインが明確にライブで見える様になったのも大きいとも思うし、不穏などよめきだけじゃ無く、もっと肉体に訴える音になっているのだ。赤塚氏のギタープレイもより切れ味が増し、ただでさえ他に誰も思いつかないし、比較不可能なギターフレーズしか弾かない赤塚氏の異常な天才具合がやっと明確になったと言える。
 驚くべきは今回初披露された新曲「カルマ」だ。これまでのweeprayを完全に裏切る新曲は構成もこれまでで一番複雑だし、更に精神にも肉体にもトラウマを植え付ける音に変貌し、それこそベタな例えにはなってしまうけど、世界の終わりを眺めている気持ちになる曲だし、ラストの不気味すぎる音階を反復させまくるキメの連続は本気で鳥肌が立った。
 最後の最後にプレイした「彼岸花」も凄まじくメンバーそれぞれのルーツであるニュースクールハードコアを完全に独自の方向性へと逸脱させたサウンドになっていたし、フロアに一気に火が付いてモッシュが起きまくる暴動状態!!これまでその異常な世界観と気持ち悪さでライブを観ていても立ち尽くすだけだったweeprayというバンドが、その世界観に肉体が追いつき、もっとダイレクトで明確な表現をライブで生み出すまでになったのだ。
 その愛と混沌を歌うweeprayのハードコアは完全に世界と闘う段階にまで来ていたのを僕は確信したし、その純粋過ぎる黒の決勝はまるで業と欲望が過密状態で膨張したこの東京という街を包む薄気味悪い安い正義感の膜を破裂させ、その破裂した膜から滲む泥水を飲まされている気分だ。本当に吐き気を覚えるまで気持ち悪いのに、その汚物すら美しく感じてしまうじゃないか!!



・STUBBORN FATHER

 本日の主役の一つである大阪が生み出したハードコアヒーローSTUBBORN FATHER!!このバンドは東京に住んでいると中々ライブが観れないんだけど、毎回毎回ライブを観る度に感動を覚えるのだ。
 今回はスプリットに収録されている3曲と「イデア」とANODEカバー「隠された太陽」というSTUBBORNを象徴するアンセム「創造の山」は省かれたセットではあったけど、徹頭徹尾ハードコアヒーローの熱き思いが炸裂するライブだっただろう。
 頭の「裏側」で人間の心の奥底を暴き「お前は裏側」と宣告するけど、多展開に多展開を重ねていくビートとギターは興奮だけを生み出し、蛍光灯だけの照明が照らすShige氏の姿は顔こそ最前で観ていても全然見えないけど、でもその顔の無い妖怪はまるで自分自身の様な気もするし、この現代社会の中で顔の無い魑魅魍魎になってしまっている自分自身を鏡で見ている様な気持ちにさせられる。だからこそ「お前は裏側」って宣告はどうしても残酷に聞こえてしまう。
 一転してストレートな「イデア」によるThe エモヴァイオレンスなフックの効きまくったサウンドはライブで音が崩壊しても構わないって勢いで突っ走る音とシンクロするし、暴力的に刻まれるリフはメタリックさもありながらもやっぱりハードコアだ。それはカオティックハードコアだとかエモヴァイオレンスだって話じゃ無くて、Convergeの聴いててその強さと奥底にある脆さに勇気を貰えるのと同じ気がする。
 だからこそ本人たちが「鬼に金棒」と称しているANODEの「隠された太陽」のカバーも毎回力を貰えるし、ANODEが墜落してしまった今ではあるけど、その魂を受け継ぐSTUBBORN FATHERがいるって事実は日本のハードコアが好きな人にとって本当に希望だと思うのだ。
 最後の最後はスプリットからバンド史上最もドラマティックでドメスティックな「痣」で締めくくられたけど、この曲はSTUBBORN FATHERのアンセムとして完全に定着させてしまって良いと思うし、「廃人の隣人に贈る」という最後のフレーズに僕は確かに救われた気持ちにもなる。
 歌っている事自体は本当にシリアス極まりないし、決してポップな音楽では無いと思う。だけどSTUBBORNはハードコアから一筋の光を生み出し、屈折し絶望した人々のケツを叩いてくれる希望の音楽だ。
 東京だとか大阪だとか関係無い。STUBBORN FATHERのブレずに突き進む精神はハードコアの絶対的な核だ。



・TRIKORONA

 最後の最後は東の大妖怪TRIKORONA!!STUBBORN同様にスプリットでネクストへと飛び立ったけど、TRIKORONAはパワーヴァイオレンスって括りすらもういらないのかもしれない。
 スプリットに収録されている曲も過去の曲も含めてほぼノンストップで繰り出される音は理不尽さしか無い。是枝氏のファズギターは爆音の歪みだけを生み出し、小山氏の散文詩的なボーカルは言語感覚を崩壊させ、門馬氏のベースの超絶テクの情報量の多さと服部氏の爆走ドラムによる粉みじんに解体されたビート。不条理に不条理を掛け算してそれこそ「様々な困惑」を音にしているのだ。
 その殆どが爆走パートとファズで埋め尽くされ、スプラッタ映画の様な血と狂気を生み出し、だけどそれを観て手を叩いてポップコーン食いながらゲラゲラ笑っている様な感覚をTRIKORONAのライブを観ていて感じるし、彼らは人間が本来持っていて、だけど必死で見ない事にしようとしていたり隠したくて仕方無いサイコパスな感情を容赦無く暴いていく。それこそ「お前も同じ穴の狢なんだよ。」って絶望と安心を突きつける。
 ケミカル極まりないファズによって観る物の脳みそは完全にスポンジと化し、その暴力性を前に暴れることしか出来なくなっていた人たちがフロアに大勢いたし、人間の深層にある厳重に鍵の掛かった「本能」をピッキングした上で捏ねくりまわし、そして思考回路を破壊する。それがTRIKORONAの恐ろしさだ。
 今回のツアーファイナルをSTUBBORNの希望に満ちたライブとは完全に真逆の、破壊衝動を植え付けて狂人を生み出す困惑と絶望で締めくくった。観ていて途中から恐怖感すら覚えたし、この破壊音の行き着く果ては本当に何処なんだろうか…



 今年2月のツアー一発目だったモルガーナから半年に渡って今回のツアーは行われたけど、東西の化物二匹は各地で猛者と殺し合いを重ねた末にこのツアーファイナルで新たな進化を見せつけてくれた。
 勿論アルバムをリリースしたREDSHEERとアルバムリリースを控えているweeprayのライブはハードコアの新たなる歴史の始まりを感じたし、UxDxMという新たなる困惑、そしてGOUMの神がかったライブとどこを切っても最高の夜でしか無かった。
 楽しいだけじゃ無く、みんなで円になって踊るでも無く、それこそ「様々な困惑」の中で迷いながら何かを探し続ける事を今回出演したバンド達には突きつけられた気もするし、楽しさの中でこうした困惑を残してくれるからこそそれは確かな記憶として残り続けていくとも思う。
 TRIKORONAとSTUBBORN FATHERの皆さん、長いツアー本当にお疲れ様でした!!両者と今回出演したバンドの方々には改めて大きな敬意を。
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