■NOISE ROOM SESSIONS(2015年8月2日)@西武柳沢NOISE ROOM STUDIO
NOISE ROOM SESSIONSについて簡単に説明するとライブ動画レコーディングの為の企画であり、ライブハウスで関係者のみで撮影が行われる事もあるが、基本的には西東京市西武柳沢にあるNOISE ROOM STUDIOにて一般の人も見学自由で行われている。
撮影された動画はYoutubeにもアップされており、REDSHEER・BOMBORI・Sithter・ele-phant・sekienといった国内の激音の猛者だけでなくHexisやOsmantikosといった海外バンドの撮影もこれまでに行っている。
そしてYoutubeにアップされたこれまでのライブ動画を観ていると、これが本当に生々しい臨場感溢れるライブ動画で、ネットにアップされているライブ動画の中でも本当に郡を抜いて高いクオリティを誇っている。ミックス・マスタリングを務めるGOUMのベーシストであり、NOISE ROOMで数多くの名盤を生み出した小林重典氏の手腕にはライブレコーディングでも激音バンドを魅力を最大限まで引き出すマジックがやはり存在しているのだ。
また不定期ではあるが撮影に参加したバンド等のインタビューやコラムを掲載したZINEも発行しており、そちらも充実の内容になっている。つまりはライブイベントやレコーディングだけじゃない、新しいライブレコーディングの形なのだ。
そんな今回のNOISE ROOM SESSIONSは前日二万電圧で圧巻のハードコアヒーローっぷりを見せ付けまくった大阪のSTUBBORN FATHER、そして新ベーシストにex.屍の達屋氏が加入して最強の4ピースとなったRED RAN AMBERの2バンドの撮影。前日のTRIKORONAとSTUBBORNのツアーファイナルの疲れもあったが、一般客も見学可能って事もあって今回初のNOISE ROOM SESSIONSへ潜入させて頂いた。
普段全く使う事の無い西武新宿線に揺られ西部柳沢に降り立ったのだけど、初めて訪れた西武柳沢は都会の喧騒とはかけ離れまくった良い意味でまったりとした街で住むには最高のロケーションだと思ったり、そんな真夏の暑さの中駅から5分程歩いた場所にNOISE ROOMはあった。
地下へと続く階段を下りるとSTUBBORN FATHERのメンバーが楽器を弾いて演奏する曲のフレーズを確認していて、ソファと椅子が並んだスペースではRED RAN AMBERのメンバーが寛いでいる。何というかスタジオ練習前の空気というかライブ前の出演バンドの楽屋の空気というか、絶妙にリラックスした空気が流れている。
レコーディングスタジオの方では小林重典さんをはじめとするGOUMのメンバーが色々とセッティング中。そちらは少し緊張感の含まれた空気が流れていたり。また撮影クルーの一人としてZOTHIQUEのギターボーカルである下中氏が来ていたり、見学者として服部氏以外のTRIKORONAメンバーやREDSHEERの小野里氏やweeprayの阿武氏も遊びに来ていたりと、完全にライブハウスの楽屋な空気。普段のライブハウスと違う空気に新鮮さを覚えながら挨拶をしたり談笑したり。
そうこうしている内にSTUBBORN FATHERのメンバーがセッティングを開始、和やかだった空気が一変して緊張感が走り始める。撮影クルーも映像撮影の準備に入る。その時に驚いたのがこのNOISE ROOM SESSIONSの映像撮影はなんとスマートフォンとタブレットで行われていたのだ。あれだけのクオリティの映像だからしっかりビデオカメラで撮影していると思ってたからそれには驚いたよ。
STUBBORNメンバーはリハーサルで「裏側」をプレイ。この日は2曲撮影をしたのだけど、実はもう1曲何の曲の撮影をするのか決まってなくて、その時にTRIKORONAの是枝氏が前日のファイナルでプレイしていない「創造の山」をプレイしたら良いんじゃないかとSTUBBORNメンバーに進言しており、STUBBORNは「裏側」と「創造の山」を撮影する事に。
そしていよいよ撮影が始まった。バンドメンバーと撮影クルー以外はスタジオ内には入れないのだけど、スタジオの扉を開きっ放しにする事で隣のコントロールルームから撮影の様子は見学する事が出来るシステム。バンド側や撮影クルーやエンジニアの小林氏だけじゃなく、見学する側にも異常な程の緊張感が走る。
その緊張感の中でプレイされた「裏側」だけど、普段のライブとは全然違うグルーブが生まれていて驚いた。普段のライブでのSTUBBORN FATHERのサウンドは一歩間違えたら崩壊しそうなギリギリのラインを突っ走る正にエモヴァイオレンスなサウンドだけど、この日は全体的に音がドッシリと構えた感じになっており、性急さよりもグルーブの重みと緊張感が前面に出ていたと思う。「裏側」みたいな多展開サウンドの楽曲も、より真髄に迫る気迫と音の厚みが加わっていたとも思うし、これはスタジオでのライブレコーディングならではの空気だったんじゃないかな?
そして「裏側」の撮影が終了。小林氏からは一発オッケーが出て、続く「創造の山」の撮影もまた普段のライブと全然違う空気だったし、Shige氏のボーカルだけじゃなくて楽器隊のコーラスなんかもライブよりもずっと聞き取り易いなあなんて単純な事を思ったり、フロアを一気に狂騒へと導くアンセムをこうしたスタジオで聴けるのって凄い贅沢だなって思った。
こちらも小林氏から一発オッケーが出て、拍手が巻き起こる。撮影中は見学しているだけなにに異常な緊張感に押し潰されそうになってたけど、撮影が終わって一気に解放された気分になったよ。
実際に撮影後にメンバー全員口を揃えて「滅茶苦茶緊張したわ!!」と話していたのも印象深かったし、ライブと違って別テイクを撮影する事も可能なのだろうけど、音源のレコーディングともライブとも違う空気というのは15年以上活動を続けるバンドですらある種のプレッシャーを感じさせる物なのかもしれない。だから普段と全然違うマジックが生まれたんじゃないかなと思う。
STUBBORNメンバーへのZINEに掲載するインタビュー終了後はRED RAN AMBERの撮影へ。サウンドチェックの時点で天野氏のドラムの音が爆発音過ぎてびっくりしたし、このバンドもサウンドチェックの出音の時点で凶悪な音しか出していない。
STUBBORNの時点ではスタジオも緊張感に溢れていたけど、RRAの時は不思議とそんな空気はあまり感じたりしなかったし、見学者の方々も椅子やソファで寛ぎながら買ってきたお酒を飲んでたりって完全にチルな空気。でもスタジオを覗いてみるとやはり小林氏や撮影クルーの皆さんからは緊張感が伝わってくるし、終始リラックスしていたRRAメンバーも次第に気迫が滲み出てくる。
そして撮影がスタート。1曲目はライブでいつもオープニングを飾る代表曲「硝子のシャワー」からスタート。ライブではいつも先ずは楽器隊がステージで演奏し、途中からボーカルの木村氏がステージに登場するという演出が行われているけど、この日も木村氏はコントロールルームで待機して、ライブと同じ演出でプレイ。それもあったのかSTUBBORNの時と違ってライブと何ら遜色の無いグルーブが生み出されていたと思う。
だけど直に浴びるRRAの音はより生々しい血の匂いを感じさせる物だったし、例えバンド側が普段のライブと変わらないコンディションやメンタルでプレイしていても、見学する側にアウトプットされる空気は全然違った。そしていつものライブ通り圧巻のカオティックグラインドを炸裂させて一発オッケー。2曲目の方もあっさり一発オッケーとRRAの撮影はあっという間に終了。メンバーもまたリラックスしたモードに。
しかしながら改めて達屋氏加入後のRRAは全てが完璧になったと言えるだろう。高域も低域も後ろも前も激音のレベルが完全に振り切れていたし、このクオリティを毎回ブレずに維持しているのは本当に凄い。このバンドはグラインドコアの先を鳴らしているし、本当に素晴らしいバンドだと再認識させられた。
STUBBORN同様にRRAのZINE掲載のインタビューを行いこの日の予定は全て終了。最後はGOUMメンバーの締めで和やかに終了した。最後は大阪に帰るSTUBBORNメンバーをみんなで見送り、それぞれが再会を約束し、西武柳沢の激音地下集会は幕を閉じた。
今回NOISE ROOM SESSIONSに潜入して感じたのは本当に贅沢な時間を過ごさせて貰ったって事だ。普段のライブハウスでのライブとは全然違う演奏を観る事が出来る事も、激音を間近に浴びる事が出来る事もそうだけど、こうしたレコーディングの現場に立ち会うのは何だか工場見学というか社会科見学みたいなワクワク感もあって個人的には凄く楽しめた。
関係者のみの時もあるけど、大体バンドとかやっていなくても見学自由だし、西武柳沢も新宿から決して遠い訳じゃないから、このNOISE ROOM SESSIONSは機会があれば是非一度見学に訪れて欲しい。NOISE ROOMやGOUMの皆さんが温かく迎えてくださるし、ライブハウスとはまた違うレコーディングスタジオという「現場」の空気はまた格別な物があるから。
そして今回素晴らしいスタジオライブを見せて下さったSTUBBORN FATHERとRED RAN AMBERの両者に改めて大きな感謝と敬意をここに記します。
NOISE ROOM STUDIO:http://www10.plala.or.jp/noiseroom303/
NOISE ROOM SESSIONS:http://jbdpq981.wix.com/noiseroomsessions