■伊藤政則のロック TV!プレゼンツ ROCK OF CHAOS Vol.2(2015年9月1日)@恵比寿LIQUIDROOM

 ゴシックメタル御三家として名を馳せ、脱ゴシックメタルしてからはポストロック・モダンプログレ路線へと転換し、ここ最近の3枚のアルバムでは天空に浮かぶラピュタから眩い救済を奏で、メタラー以外からも熱い支持を集めているANATHEMAが待望の初来日!!
 ANATHEMA自身も日本でライブをやりたいと発言していたし、その期待は日々高まっていたとは思うけど、こうしてそれが現実の物になって僕を始めとして多くの人が声を上げて泣いただろう。
 しかも前座としてアイスランドの壮大で広大なるポストメタルSolstrfirも初来日という、引退セレモニーで長渕剛の後ろで男泣きをした清原和博ばりに涙が溢れる贅沢極まりない特別中の特別な一夜だ。
 今回の来日公演は2daysの開催という事で、僕は二日目の方に足を運ばせて頂いた。チケットは立ち見チケットで買ったから、フロアの前は指定席の方で埋まっていたので、必然的に結構後ろの方で今回の来日公演を目撃する事に。
 来ていたお客さんは結構年齢層高めな予感がしたけど、ここ最近の3枚でANATHEMAを知った人も多いのか若い人や女性も多かったと思うし、性別や年齢層を超えてANATHEMAが支持を集めているのを実感。
 そして19時ジャスト、先ずは前座のSolstafirのアクトが始まった。
 


・Solstafir

 今回の来日公演はANATHEMA目当てという事もあってSolstafirに関しては全く予備知識ゼロの状態で観る事にはなってしまったが、ANATHEMAの前にいきなりハイボルテージなライブを目撃する事になってしまった。
 音楽性はポストメタルというよりもポストロック・プログレ・ゴシックの要素も色濃く、近年のUlverにも通じる実にエピックな音楽性だが、大風呂敷広げたなんて物じゃねえぞってばかりに壮大極まりないストーリーを展開していく。
 一番後ろで観ていたのもあってドラムの音が少し軽く聞こえたりはあったけど、演奏の血の通い方が尋常じゃ無く、決して音量的には爆音では無かったけど、美麗のトレモロフレーズに込められる熱量が半端じゃ無い。ストリングスやピアノは恐らく同期ではあったけど、それらの音が曲の世界観を彩り、バンド側の演奏の方で熱量を生み出すといったスタイル。
 演奏面だけでは無くパフォーマンスも激アツで、メンバーは縦横無尽にステージを動き回り、時にはギターボーカルのフロントマンがフロアに降りて指定席のお客さんと絡んだりというなんともディナーショーライクなパフォーマンス。しかもフロントマンの人が滅茶苦茶ボーカル上手いし、歌にやたらとコブシを感じる物だから、何か演歌歌手のコンサート感もあり、それも良かった。
 ライブ自体は45分程で、長尺曲ばかりであるから曲数自体は決して多くは無かったけど、ムンムンのエロス、クリアで透明感溢れる旋律の中でのドロっとした粘度、ヘビィな音圧をヘビィだと感じさせないバランス。パフォーマンスも含めミュージカルの様な目まぐるしい輝きと感動をもたらしてくれた。
 最後はメンバーがフロアでお客さんと握手したり肩を組んでたりなんて光景も立ち見席から見えたりもして、繊細で大胆なSolstafirの音楽性の中に確かな血が通っている事も納得だったし、良いアクトだった。
 個人的には予備知識が全く無いバンドであったが、壮大でありながら人情味溢れ、そしてハイボルテージなライブに心を打たれて、またライブを観たいと思ったし(再来日あるかなあ…)、僕を始めとしたANATHEMA目当てだった人たちの心も彼らはガッツり掴んだ筈!!



・ANATHEMA

 25分ほどの転換を経ていよいよANATHEMAのライブが始まった。客電が落ちてメンバーが登場するや否や割れんばかりの拍手と歓声が起き、みんなこの日を心から待ち望んでいた事が分かる。「スタンドアップ!!」の煽りと共に指定席のお客さんも席を立ち、これから始まる天上の宴へと備える。
 一曲目は最新作「Distant Satellites」から自らのバンド名を冠した名曲「Anathema」。繰り返されるピアノの神々しい調べから始まり、Vincent Cavanaghが歌い上げた瞬間にこの世界への救済が始まる。力強く歌い上げるVincentの歌声は最早オペラの領域に達し、力強いドラムと泣きのギターが入った瞬間に、心のざわめきが止まらなくなり、まるでX JAPANのEndless Rainを始めて聴いた時の様な衝撃が身を襲う!!
 鳴らされる旋律はどこまでも物悲しくあり、真夜中に一人で孤独感を感じている時間の空気でありながら、そんな時間にVincentが「一人じゃ無いよ。」と言ってくれるみたいな温かさがにじみ出てくる。そんな最高のオープニングトラックで僕の胸は言い表せない感動で一杯に。
 続けて前作「Weather Systems」から「Untouchable, Part 1」と「Untouchable, Part 2」を繰り出し本格的な光の時間が始まる。Lee Douglas姐さんも加わりツインボーカルでライブが始まったけど、Lee姉さんのボーカルも凄い!!ミニマルに繰り返されるギターと、打ち込み的な人力ビートの有機的な絡みもそうだけど、lee姐さんのコーラスに合わせてフロアは早速シンガロングすら巻き起こり、手拍子も起き、ANATHEMAの全身全霊のアクトに対して最大の敬意を表す。
 「Untouchable, Part 2」では静謐さが際立つ曲だからこそのエモーションが加速し、細部まで徹底的に拘り尽くしたサウンドプロダクトだからこそ生み出せる天へと昇天するエクスタシーの世界が広がっていく。

 再び最新作から「The Lost Song」シリーズの組曲3曲が立て続けにプレイされたが、「The Lost Song Part 1」のあの五拍子のドラムがパワフルに叩かれた時に新たな感動が生まれた。ANATHEMAはその歌声とメロディで生み出すエヴァーグリーンな世界観が魅力であるが、そんなバンドサウンドを支えるリズム隊の存在は本当に大きい。
 特に最新作の楽曲はmogwaiみたいなバンドが持つ、最小のビートで最大の高揚を生み出すというミニマルを最大に活かしたビート構築術が光る作品であったし、決して音はうるさく無いけど、でも適正音量でビートの生々しさを最大限に発信するという方法論がライブではより明確になり、そもそも音源以上の完成度をライブで余裕で見せつけてくるのだ。
 まるでMONOばりにドラマティックで映画的な世界を描く「Ariel」のスケールに圧倒され、そこからLee姐さんのボーカルの真骨頂とも言える大名曲「Lightning Song」での激エピックなサウンドは完全にオーディエンスを全員昇天させに来ていたし、ディストーションギターですらリキッドルームから全世界へと響き渡るであろう高らかさへと昇華され、無数の花が咲き乱れる桃源郷へと変えてしまう。
 そして止めの「The Storm Before the Calm」でリキッドルームは救済された世界で踊るディスコへと変貌。そんな曲ですら最後の最後は号泣必至の大団円だし、もうライブで観るANATHEMAは全世界のアンセムと言えるバラッドを惜しみなくプレイしているんじゃないかって状態だ。

 終盤は「昔からのファンの為にやるよ!」って旨のMCから中期の名曲「Deep」へ。ここら辺はまだゴシックメタル要素が残った楽曲ではあるけど、こうして最近の3枚以前の楽曲をプレイしても、セットリストにブレを全く感じさせないし、ANATHEMAは初期から考えたら音楽性は大きく変わった様にも思えるけど、でもそれは一筋の光がしっかりと歴史を繋いでいるからこそ根本の世界観は変わっていない様にも思えるし、そこから「まだまだオーディエンスを泣かせ足りないのか!?」って勢いで「The Beginning and the End」を繰り出してしまえるのがANATHEMAの歴史の重みを否応なしに感じる。
 「Universal」でこの日一番の感情の爆発をドキュメントとして体現し、ANATHEMAは光をただ描くんじゃなくて、その背後にある闇の存在を理解しているからこそのサウンドだって事を改めて理解させられて、本編ラストはボーコーダーボーカルとタイトでダンサブルなビートで夜のディスコティックからの嵐のゴシックサウンドで締めくくる「Closer」で締め。ここまでの13曲で既に人生で感じるだけの感嘆を全部してしまった気持ちである。

 メンバーが一旦ステージから去り、SEの「Firelight」が流れる中で勿論アンコールの手拍子は巻き起こり、再びメンバーが戻ってきたらまた割れんばかりの拍手。そしてアンコール一発目は最新作屈指のダンスナンバー「Distant Satellites」。今回のライブは2012年から加入したキーボードのDaniel Cardosoがドラムを叩き、本来のドラムであるJohn Douglasはパーカッションを務めるツインドラムな編成でもあったけど、この曲でANATHEMAの二人のビートの魔術師の力量の異様さを実感。
 こうしたミニマリズムなビートの楽曲でANATHEMAのビートに対する拘りと繊細さと大胆不敵さは本領発揮だし、技術も表現力も世界トップレベルなんじゃないかと本気で思う。そんな凄い物を見せられたらオーディエンスも再びシンガロングするよ。
 この日一番のアンプラグドな名曲「A Natural Disaster」ではステージの照明をほぼ落として、オーディエンスに携帯のライトでステージを照らす様に指示してのライブ。これがまたニクい演出だったし、そんなロケーションでLee姐さんの美声を堪能するのは桃源郷でしか無いって話である。
 今回のライブは最新作のジャケトに合わせて基本は赤をメインにした照明だったけど、こうして携帯ライトで照らされるステージも良かったし、ANATHEMAの天の上の存在だと思わせておきながら、でもやっぱりどこか人間臭さが滲み出てしまう楽曲やパフォーマンスにはドンピシャでハマっていた。
 アンコールラストは「もう涙も枯れ果てた?でもまだ泣けるでしょ?」とばかりにこの日のセットの中では一番ゴシックメタルしていた「Fragile Dreams」。コーラスのかかったギターのアルペジオで一気に現実に引き戻し、僕たちは桃源郷から浮世へと戻って来たけど、でも力強いVincentのボーカルと楽器隊の演奏が生む迸る血潮は僕たちにこれからも力強く生きていけよっていうANATHEMAからのエールだったと思う。
 こうして1時間50分に渡る熱演は終了。最後の最後はメンバーそれぞれがセットリストを前にいるファンに手渡したり握手したりし、オーディエンスからはANATHEMAの最高のライブに対するリスペクトとしてまた大きな拍手と歓声が巻き起こっていた。



セットリスト

1. Anathema
2. Untouchable, Part 1
3. Untouchable, Part 2
4. The Lost Song Part 1
5. The Lost Song Part 2
6. The Lost Song Part 3
7. Ariel
8. Lightning Song
9. The Storm Before the Calm
10. Deep
11. The Beginning and the End
12. Universal
13. Closer

SE.Firelight

en1. Distant Satellites
en2. A Natural Disaster
en3. Fragile Dreams



 前座のSolstafirのアクトも想像以上に素晴らしかったし、主役のANATHEMAはもう言うことなんて何も無いってレベルの完璧すぎるライブだった。MCでまた日本でライブをしたいって旨の事も言っていたし、この日リキッドにいた人全員がまたこの2バンドに会える日を待ち望んでいると思う。
 こうして来日公演を観るまでANATHEMAは僕の中でずっと違う世界の住人たちって印象が本当に強かったけど、彼等の異次元でありながらも、その中に温かさが溢れていたこの日のライブを観てそのイメージはガラッと変わった。メンバーはみんな手拍子だったりを煽るパフォーマンスをしていたし、MCは英語だったから部分部分しか聞き取れなかったけど、日本のANATHEMAファンに対する感謝の言葉を何度も言っていたし、僕たちと同じ目線を持つ人間であるからこそANATHEMAはこんなにも素晴らしいライブが出来るんだと思った。
 ANATHEMAは光だけじゃなくて確かな闇も描けるバンドであるけど、それ以上に人間のもっと根本的な意味での愛を彼等のライブから感じたし、今回のANATHEMAのライブは「結局最後は愛なんやで。」っていう日本の僕たちに向けたメッセージだったのかもしれない。



 ANATHEMA、日本にやって来てくれて本当にありがとう。同時に今回の来日公演に関わった様々な方々と、来日公演に足を運んだANATHEMAファンの皆さんへ大きな感謝と敬意を。
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