■Faith, Hope And Charity/ZOTHIQUE

先日、GUEVNNAとフランスのAguirreと共に10日間にも渡るツアーを繰り広げたサイケデリックドゥームバンドZOTHIQUEから早くも3rdアルバムが届いた!
前作から僅か一年での新作リリースとこのバンドの創作意欲は止まる事を知らないし、2013年から毎年必ずアルバムをリリースし続けるのは並大抵の事じゃ無いだろう。
そして肝心の内容は、息が詰まりそうな窒息的ドゥームを展開していた2ndと打って変わって、ZOTHIQUEが持つ音楽性の多様さと可能性が全面に出た作品となっている。
今作ではフロントマンの下中氏がメインコンポーザーを務めていたこれまでの作品と違い、各メンバーがそれぞれ楽曲を制作するというスタイルで作られており、それがバンドの音楽性の多様化に大きく繋がっている。
先ず驚いたのはソロ活動もしているベースのJah Excretion氏作曲の第1曲「Venus I」である。これまでのZOTHIQUEに無かったアンビエント・アトモスフェリックな空気感の音像が響き、中盤からはまさかの美轟音サウンドだ。
サイケデリックな空気感も存在するが、これまでのZOTHIQUEのヘビィさとノイズによるグチャグチャなサイケデリックでは無く、美しい調和が徐々に歪む酩酊世界。まさかの一手だ。
だが下中氏作曲の第2曲「The Tower Of White Moth」では見事なまでにZOTHIQUE節炸裂なスラッジハードコア!!ノイズとキーボードの歪みまくった味付けこそあるけど、クラスティなビートとヘビィなリフで爆走する、スラッジ・ドゥームだけじゃなくハードコアな魅力を全面に押し出して攻める。
DARKLAW氏作曲の第3曲「Hijra」でまた一転してダウンテンポの極悪な一曲。こちらは重さだけじゃ無く締めつけも加わり、反復リフ圧殺曲だが、リフ以上に爆音のノイズがその輪郭をドロドロに溶かす。
2ndからのノイジシャンが2名も在籍する編成のZOTHIQUEになってからカオス感が余計にタチが悪くなったと思うし、1stの頃のサイケデリック要素は味付けであくまでヘビィでストレートなハードコアだったZOTHIQUEはもういない。
かと思えばドラムのKoji氏作曲の第4曲「Faith, Hope And Charity」はZOTHIQUE流サバス系統ドゥームというノイズが暴れながらも正統派を突き進んでいるし前半4曲でもう実態は解明不可能だ。
第6曲「Amyotrophy」はZOTHIQUE史上最もストレートなハードコアパンクがぶっ飛んでくるし、JAH氏作曲のアンビエントな第7曲「Nomadic」を挟んでの第8曲「Valley Of Tears」で今作でのZOTHIQUEの到達点がやっと見えてくる。
ストレートなハードコアも治安が悪いスラッジもアンビエントもサイケデリックなノイズも今作には存在しているが、クライマックスは物悲しさ溢れる歌物が来てしまった。
日本語詞でセンチメンタルな喪失感を歌い上げ、ギターは勿論、ノイズキーボードも声を上げて泣き叫ぶ様なピュアネス。地獄巡りかと思わせて、人間臭さしか無い爆音のバラードだ。
そして最終曲「Venus II」で全ての音が暴れ狂う涅槃へと堕ちていく…。
それぞれの楽曲だけをピックアップすると作風も音も混沌を極めている様に見えるけど、アルバムを通して聴くと前作以上にストーリー性や世界観を感じる事が出来るし、ヘビィさや既存のサイケデリックでは無く、ヘビィさを自由に使いこなし、ノイズすら自在に操るドロドロの音。
1stがハードコア色が強く、2ndはドゥーム色が色濃かったが、その二枚の流れを汲んだこの3rdは純粋なサイケデリックを追求しているのかもしれない。
どっちにしろZOTHIQUEはまたしても別次元の作品を作り上げてしまったのだ。