■REDSHEER Presents GRAY WORLD Vol.3(2015年9月26日)@新代田FEVER

 早くも第三回を迎えたREDSHERR企画である「GRAY WORLD」、今回はグラインド・ストーナー・ドゥーム・カオティック・ブラッケンド・激情・ジャンク・サイケデリックとジャンルで言えば本当にバラバラなバンドばかりが集まったと思う。
 しかし唯一無二のオリジナリティを持つ10バンドはそれぞれのやり方で自らの音を常に更新し続ける「本物」のバンドばかりだ。そんな10バンドが織り成す闇の祭典。新代田が漆黒の炎で焼き尽くされた日のドキュメントをここに記す。



・wombscape

 トップバッターからいきなりwombscapeである。初の正式音源「新世界標本」をリリースし、現在ツアー中であるけど、今年の春からの現編成でのライブもいよいよ固まって来たという印象だ。
 音源は非常に作り込まれた印象であったけど、ライブでいざ「新世界標本」の楽曲を聴くと放たれる音の重さが段違いだ。
 特にバンド全体にアンサンブルにグルーブ面での重さがより加わった印象を受けたし、kijo氏のギターの残響音を聴かせるフレーズの数々は不気味極まりない。
 音数多くうねるベースと、タイトで繊細さもありながら非常に力強いドラム、そしてフロントマンのRyo氏の表現力にはより一層の切迫感が加わっている。
 ラストにプレイした「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」は今のwombscapeを象徴する楽曲だろう。ステージを彩るセッティング以上に視覚的な印象を与え、より背徳的で絶望的な陰惨さの中の美しさ。最後の最後の音の輪郭が崩壊するパートでkijo氏のギターにトラブルが起きて音が出なくなってしまってはいたけど、それすらもアーティスティックにしてしまっている。
 ツアーはまだまだ続くが、このリリースツアーが終わった時、wombscapeは新たなる奈落の扉を開くに違いない。



・ZOTHIQUE

 wombscapeに続いてZOTHIQUEとか序盤から完全に殺しに来ているこのイベントだけど、この日のZOTHIQUEの40分は異次元へのトリップだった。
 音源ではGOUMのKumi嬢がゲストボーカルを取る「Hypnotic Kaleidoscope」からライブはスタート、アンビエントなノイズが漂う中でギターの物悲しい旋律が響き、下中氏のクリーントーンの歌もアシッドな空気感を纏う。そしてその美しさが崩壊した瞬間にZOTHIQUEのバッドトリップが始まった。
 「Venus」の美旋律を奏でているにも関わらず、宇宙の様に生きたいと思って青い太陽に想いを馳せてしまう様なあぶらだこの長尺曲の様なプログレッシブかつサイケデリックで濃密な音の洪水は観ていて言葉にならなくなってしまった。特に完全にタガが外れまくったキーボードの濁朗氏は完全に別の世界に旅立ってしまった表情で同様に別の世界に旅立っているキーボードとノイズを放ちまくる。
 でもそんなサイケデリアだけで終わらないのがZOTHIQUEだ。一瞬で現実に引き戻される爆走ハードコア「The Tower Of White Moth」、ZOTHIQUE流ビートダウンハードコア「Hijra」と終盤のこの2曲のヘビィネスの破壊的音像は魔人の様に目の前にそびえ立ち、飛びまくったキーボードを味方にし、断罪のリフによって鉄鎚を下していた。
 40分に渡る異常体験のアンビリーバボーさ、浮世と彼岸を橋渡ししながら、実は全く別の場所を描くZOTHIQUEはやはり選ばれたバンドだ。



・CYBERNE

 ギタリストが脱退し、4人編成で再スタートを切った新生CYBERNE。これまでの楽曲を全て封印し全て新曲で挑むという非常に挑戦的なセットで今回のライブに挑んだが、例えギターが一人減ってもCYBERNEの理不尽な音の暴力は揺らがなかった。
 CYBERNEを語る上で絶対に外せないのはツインドラムのビートの凄みだけど、それが益々パワーアップしていたのは印象深い。息が完全に合った演奏ではあるけど、カッチリとした印象は何故か受けない。二人のドラムは底知れない生命力のバーストを迸らせる。
 そんな後ろ二人の音もヤバいけど、田中氏と中村氏の前二人の弦楽器隊も当然凶悪。拡声器から放たれるボーカルと共にジャンクロックを更にジャンクにしたギターとベースの応酬。常にテンションはフルで暴走する衝動。一瞬でも休む隙を与えてくれないし、油断したら即粉砕といった災害みたいなライブ。でもそこには確かな楽しさもある。
 目の前で起こっている異常光景を呆然と笑いながら見つめるか、その狂気に飲み込まれてしまうか。CYBERENEはそれしか選択肢を与えてくれないけど、それすらもエンターテイメントにしてしまう。



・COHOL

 少し長めの転換を終えて2ndアルバム「裏現」が絶好調なCOHOL。先日のLTAB2年連続出場も記憶に新しいし、大きいステージでのライブも増えた彼等だけど、その存在が大きくなればなる程にCOHOLの持つ漆黒の闇の結晶の輝きは増していく。
 スモークが充満し始めるステージで演奏されるインスト「冷たい石」からトレモロとブラストと高速ファンガーピッキングが暴走し爆発する「下部構造」にてCOHOLのブラッケンドな世界は広がる。
 3ピースの限界に挑み、たった3人で織り成す過密しまくった音は隙間なんて全く無い。一音の密度も非常に濃厚。音源同様にライブでのステージングも作り込まれて洗練されているのだけど、同時に冷徹さの奥底の想いも存在する。
 ITARU氏の熱いMCもそうだけど、COHOLはその音楽性の下にあるマグマの様な熱情に溢れた音楽だ。ITARU氏のMCに勇気付けられる人も多いと思うけど、エクストリームミュージックを奏でるからこそ常軌を逸した表現衝動が存在し、同時にそれを洗練させてアウトプットしていく。
 幾重にも積み重ねられた漆黒に次ぐ漆黒。だけどその表層の下にあるのは確かな想いだ。だからCOHOLは単なるエクストリームミュージックで終わらない。無機質で残酷な様でいて、何処までも優しい体温がそこにあった。



・DISGUNDER

 これは速さを極めたロックンロール!!COHOLのダークネスの先の熱情を爆発させる名演から一変して爆走の時間!DISGUNDER!!
 DISGUNDERを語る上でそれぞれのメンバーのキャリアも同時に語られる事も多いけど、それは現在進行形で最強の音を提示するガンダーの前では無意味極まりないし、同時にガンダーをグラインドで一括りししてしまうのは野暮過ぎると思う。
 この日出演していたTHE DONORもそうだけど、ガンダーはステージの上では速さの上の上にあるロックとメタルの衝動とロマンを爆発させているだけなのだから。
 弦楽器隊を始めとするフロントのメンバーは我先にと前に出まくるし目立ちまくり、新ドラマーの若き天才高木氏の正確無比で冷静無比でありながらも情熱的なブラストがテンションをブチ上げに上げまくる!!
 そしてガンダーを語る上で絶対に外せないのはスーパーギタリスト信二氏の存在だろう。誰よりも目立ち、誰よりもギターで速さを表現し、リフもソロも引っ括めて底知れぬエネルギーを感じる。音自体はダーク極まりないのに、それをダークに感じさせないで楽しさに変える信二氏の存在はやはり大きい。
 この日も徹頭徹尾爆走のショウ!!痺れるしか無かった!!やっぱDISGUNDERだなー!



・GUEVNNA

 今回の企画の中で自らをパーティ枠と言っていたGUEVNNAはこの暗黒の祭典でも堂々とロックンロールしていた。
 ドゥーム・スラッジというカテゴライズを置き去りにし、キャッチーさを突き詰めるGUEVNNAのロックンロールだけど、やはりライブで体感するその音はヘビィだ。ツインギターの放つリフの残響音は歪みに歪んでいるけど、Temi氏のパンキッシュで華のあるドラムがそこにロックを与える。
 Ryo氏はサングラスに骸骨マイクといつも通りキメキメだったけど、MCでは「誰もお前の事なんて見てないから踊れば良いんだよ。」なんて頼もしい煽りも繰り出したり。
 驚くべきは新曲だ。元々要素としてはディスコサウンドも取り入れていたりもしたけど、ガッツり四つ打ちのビートを導入し、音はヘビィなのにキラキラしまくっているという矛盾すらダンスの種にしてしまう会心の一曲!フロアも一気にヒートアップだ。
 ラストは「Deathbed」のムーディでブルージーな哀愁で40分のライブを締めくくったが。益々エクストリームミュージックを捨て去り、、人々のベッドルームミュージックへと接近するGUEVNNAは堂々とスタンダードであり、頼もしいロックバンドだ。



・REDSHEER

 主催なのに何故かトリじゃ無く7バンド目なREDSHEER。先月の精力的なライブから一転して今月はこの一本のみであったけど、それだけに今回の企画にかける想いは尋常じゃ無かったと思う。
 1曲目は意表を突きまくって「In A Coma」からスタート。印象的なメロディアスでポストロッキンな感触でありながらも心を不安にさせまくるアルペジオが印象的だけど、同時に無機質さを使いつつもドラマティックに爆発させる激情が際立ち、ソリッドさを全開にして攻める。
 続く「Silence Will Burn」では一転して激を中心に攻めながらも、その激に内包された美を際立たせる。このバンドの武器は本当に多い。
 今回のライブで特に印象的だったのは山口氏のギターのディストーションのノリが本当に良くなっていた事だ。元々独特の歪みを奏でていたけど、より背後から忍び寄る妖しさであったりとか、残響音の残酷音が際立った音作りになっており、REDSHEERの今後の更なるパワーアップに期待するしか無くなる。
 終盤は「Curse from Sad Spirit」の複雑極まりない展開に次ぐ展開からドン底へと叩き落とした末の「Gloom」のワンリフスラッジ地獄で締め。単なる激情の爆発では無く、その激情の爆発を多彩な音で表現し、でもライブでは圧倒的なテンションを提示する事によって、トラウマと難聴を続出させる。
 観る者に安易な共感を許さずに、徹底的に突き放しながらも、同時にそのメロディアスさで観る者それぞれの精神的な暗部に忍び込む、そんな相反する物が共存する真っ赤であり、灰色の世界。REDSHEERが生み出す世界とはそういう事だ。



・THE DONOR

 クロスオーバーの究極系であり、新しくも王道をヘビィロックを突き進むレペゼン石川県金沢市THE DONOR!!
 THE DONORはどんな場所でライブをしても安心と信頼の爆音でロックしまくるけど、FEVERの大きいステージだと3人の姿はより頼もしく見える。
 それにしてもこの日のTHE DONORの気迫は尋常じゃ無かった。やっている事自体は決して小難しくは無い。いつも通りに強靭なビートとリフによるヘビィロックを休む間も与えずに繰り出しまくっていただけなんだけど、THE DONORの持つ「うるさい・ヘビィ・格好良い・泣ける」という純粋なピュアネスが滾りまくっていた。
 序盤から早々にプレイしていた激泣きアンセム「Shine」もそうだし、昨年リリースされた1stアルバム「Agony」の楽曲はどれもキラーチューンばかりで、拳を何度も何度も突き上げてしまう暑苦しい物。
 そして爆音のステージのラストはドゥーム・スラッジと悲哀の衝突地点「Keshite」による神々しくも残酷なロマン。THE DONORはこのラスボスだらけの今回のイベントの中でも真のラスボスとして君臨していた!!



・Red Ran Amber

 ex.屍の達屋氏が加入し、いよいよ最強のグラインドコアバンドとなってしまったRRAだけど、今回のライブを観てRRAにはグラインドというカテゴライズがいかに無意味であるかを自分の中で改めて考えてしまった。
 必殺の1曲目「硝子のシャワー」のイントロが始まった瞬間にフロアの空気を一変させる。素晴らしいバンドはそんなイベントやハコでもその一音目で空気を自分たちの色に変えてしまうけど、今のRRAは正にそんなバンドだ。
 天野氏の破裂音を容赦無く叩き出すドラム、三科氏の鎌鼬の様に聴き手の血管を全て切り刻むギター、達屋氏の高速フィンガーピッキングから繰り出される蠢くベース、三者の超絶技巧とプライドが丸裸でぶつかり合う緊張感と爆発力、そしてボーカルの木村氏のその場で灰になってしまっても構わないという気迫のボーカル。そんな4人の姿に胸を焦がされる。
 特に木村氏の姿は神々しくもあり、荒ぶる野獣の様でもあった。早々にマイクスタンドを投げ捨てたかと思えば、常にステージの最前線で魂の咆哮を繰り出す。その姿は本物のカリスマだった。
 トリじゃ無いのにアンコールまで飛び出し、それに応えてアンコールとRRAもフロアも完全燃焼の闘いの様なライブであったし、全身全霊の表現と熱情をグラインドの一言で片付ける事なんて不可能なのだ。



・isolate

 トリはダークハードコアの極北ことisolate!!SEで「閉ざされた中で」のリミックス音源(リリースはあるのか!?)が流れ、いつもと違う緊張感の中でライブが始まったけど、この日のisolateは伝説的ライブであった。
 「ヒビノコト」の楽曲はより「オーディエンスを狂わせる為の起爆剤としての効力を発揮し、ツインギターの轟音と鉛の様なドラムとAndo氏の血管ブチ切れそうな咆哮が生み出す地軸すら狂わせる勢いの強靭なサウンド。今年に入ってからのisolateの脂の乗った安定感溢れる威風堂々としたライブになると思ってた。
 しかし終盤からいつも通り狂ったテンションでベースを弾き倒すKokeguchi氏のテンションがいつも以上におかしい事になっていた。シールドが引っこ抜けてもお構いなしでベースを片手に暴れ狂い、異様さに不安すら覚えてしまったが、最後の最後でやらかしやがった!!
 Kokeguchi氏はそのテンションのままステージの天上のバーにぶら下がり、そしてどこかを打ったのか切ったのか頭部から流血をしたままフロアに飛び降り、そして気がついた時にはベースの弦は全部切れていた。
 ここまで地獄のライブの連続であった「GRAY WORLD」だが、最後の最後に全部isolateというかKokeguchi氏が全部持って行ってしまった!!最後はフロアで弦の切れたベースを片手に座り込んで呆然とするKokeguchi氏の姿がこの日の一番のハイライトだっただろう。



 昼間から新代田が漆黒に飲み込まれた全10バンドにより暗黒祭典は大盛況のまま無事に終了。REDSHEERのライブの時に小野里氏がMCで「楽しい事は多い方が良いに決まってる!!」と言っていたけど、傍からみたら決してポップじゃないのかもしれないし、極端な音楽性のバンドばかり集まったイベントではあるけど、その集結したバンドはどれも「本物」の表現者であり、今回も最後の最後はみんな笑顔であった。
 小野里氏はこれからも年に一度はこうした大きなイベントをやりたいと語っていたし、GRAY WORLDは早くも来年の2月のCoffinsとSTUBBORN FATHERを迎えたガチンコ頂上決戦3マンが二万電圧で開催される事がアナウンスされている。
 灰色の世界の行き着く先は何処なのか?それは「現場」に足を運んだ人々だけが分かる事であるし、ネットで溢れている情報だけじゃ見えない世界なのだ。少しでも未知の世界を知りたい人は今後も精力的に開催されるだろう「GRAY WORLD」に一度足を運んでみると良い。
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Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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